「1位は中国ではなかった」東京の新築マンション、国外購入者の6割超を占めた“意外な地域”

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東京23区で新築マンションを取得した国外住所者を国土交通省が調べた結果によると、2025年上期はアジアの“ある地域”が約62%を占め、中国を大きく上回った。なぜそこからの取得が突出するのか。国交省の最新データと登記制度の限界から読み解く。

【画像】中国を大幅に上回る! 東京23区の新築マンション取得者の国・地域の割合

『マンション高騰の真実-都市部の「非居住化」が街を壊す』より一部抜粋・再構成してお届けする。

外国人は新築マンションを買い占めているのか

国土交通省による国外に住所がある者による新築マンションの取得状況の調査結果を見ると、都心部ほど取得割合が高い傾向が確認されています。ただし、このデータについては、国土交通省の調査でも注意書きがなされていますが、各年の供給物件の特性によって年ごとの変動が大きい点には注意が必要です。

2025年1~6月のデータでは、東京都全体で3.0%、東京23区で3.5%、都心6区で7.5%と、都心に向かうほど割合が高くなっています。都心6区で最も高いのは新宿区(14.6%)で、渋谷区(8.1%)、千代田区(7.7%)が続きます。都心6区以外では、北区(8.1%)、荒川区(7.7%)、台東区(5.4%)が比較的高い数値を示しています。

23区全体でみると、2018年以降、常に5%以上を維持しているのは千代田区と渋谷区のみで、この2区では外国居住者による購入が継続的に一定割合を占めています。

東京以外では、2025年1~6月のデータで大阪市4.3%、京都市2.5%と都心6区より低い水準ですが、札幌市や福岡市でも2%前後で推移しつつ増加傾向がみられ、この現象は東京、大阪だけの問題ではなくなりつつあります。

とはいえ、「円安もあり、外国人富裕層が日本のタワマンを買っている」などと巷で噂されているほどには外国人の購入率は高くない印象です。

ただし、このデータを読み解く場合には注意が必要です。この調査結果には、新築時には国内の「法人」や「非居住の個人」が購入した住戸が、短期転売により外国に住所のある人の所有に変わった住戸は含まれていません。また、日本に居住する外国人による購入や、国内に所在する外資系法人による購入も含まれていません。

ですので、自著『マンション高騰の真実』でも述べた千代田区Aマンションや大阪市西区Cマンションの登記簿調査で見られたように、国内の法人や非居住の個人が新築時に取得し、それを外国居住者へ短期で転売するケースまで含めれば、国外居住者が実質的に取得している割合は、国土交通省の調査結果よりさらに高くなる可能性があります。

そう考えると、国外居住者の取得割合が14.6%に達した新宿区では、新築販売の段階だけでも外国居住の買い手に相当数の住戸が供給されたと言えます。

では、なぜ国土交通省は日本国内の在住外国人や外国資本の法人による取得状況も調査しないのか? という疑問もわくと思います。それは、登記簿には所有者名と住所しか記載されていないからです。法人名や個人名から外資系・外国籍かどうかを推測することはできても、名前だけで正確に判定することは困難なのです。この点は、登記簿調査の限界と言えます。

このように現状では不動産登記制度で外国人の不動産所有の実態を把握することができません。このため、政府の方針として今後、不動産登記規則を改正し、所有権の移転登記等の際の申請情報に、新たに所有者となる者の国籍を追加し、内部情報として保有することが示されています。

なぜ台湾からの取得が突出しているのか

では、どの国・地域からの購入が多いのでしょうか。国土交通省の調査によると、2025年1~6月に東京23区で新築マンションを取得した国外住所の購入者(海外在住の外国人)のうち62%を台湾が占めています。次いで中国(10%)、英国・米国(9%)と続きます。2019年頃は中国からの購入も台湾と同程度でしたが、近年では台湾が大幅に上回っています。

インターネット上では「中国人が日本の不動産を大量に買っているのではないか」という言説も目立ちますが、少なくともこの統計で見る限り、近年の国外住所者による新築取得は台湾が突出しています。

背景として指摘されているのが、台湾有事への懸念です。万一の事態に備え、資産を国外に退避させたいという需要が、台湾の富裕層を中心に高まっているとされています。日本の都心部のマンションは、将来の値上がり期待、滞在時の利便性、分散投資先としての安全性を兼ね備えており、「資産の避難先」として選ばれている可能性があります。

もしかしたら、こうした外国居住者への転売を見越して、国内の法人や個人投資家等が新築マンションを購入するケースも増えているのかもしれません。国内の投資主体が新築を買い、それを外国居住者へ転売することで価格が押し上げられていく―そうした構造が、価格上昇圧力の一つになっている可能性もあります。

ただし、日本では売買履歴や購入者属性のデータが十分に整備されておらず、全容解明には国や自治体によるさらなる調査が必要です。

法改正で義務化された国内連絡先登記の抜け穴

2024年4月の不動産登記法改正により、海外在住者が日本の不動産を購入する際には、国内の連絡先(連絡可能な人物または法人の名称・住所)の提出が必須となりました。これは、所有者不明問題への対応として導入されたルールです。

にもかかわらず、今回の自著での登記簿調査では、改正法が施行された後の2024年4月以降に外国住所の者が取得した東京千代田区と大阪市西区のA~Dのマンションにおいて、3戸に1戸で「国内連絡先:なし」と登記されていることが確認されました。

なぜこうしたことが起きるのでしょうか。それは国内に連絡先がない場合、「国内における連絡先がない」という上申書を提出すれば登記できることとなっているからです。もともと売買による所有権移転の登記自体が「義務ではない」という制度的な制約があり、強制力を持たせることには法的な難しさがあるのです。

もし国内連絡先がない場合は登記を認めないとすると、登記そのものがなされず、かえって所有者不明化を招くといった事態も想定されるため、このような運用となっているのです。そのため、法改正後もなお、将来的には外国在住者が所有する不動産の増加に伴って、連絡先不明となりうる所有者が一定数生まれ続けてしまうことが懸念されます。

不動産登記法の改正は、「所有者の所在が分からない問題」への対応を目的としていましたが、国内連絡先の提供が義務化されたとはいえ、現状では十分に機能しているとは言いがたい面があります。

とはいえ、外国居住の購入者が増え続けている現状を踏まえると、例えば、国内連絡先の登記がない場合には、不動産の登録免許税の負担を重くするなど、税制との連携を通じて、より実効性のある形に制度を見直していくことも考えられます。

外国人の不動産取得をめぐる議論が社会的な関心を集めていますが、その内訳をみてみると、外国に住む個人・法人、日本居住の外国人、国内に所在する外資系法人など、「外国人」として一括りにできない多様な形態があります。感情的・政治的な議論ではなく、客観的なデータに基づく冷静な実態把握が急務となっています。

マンション管理への影響とその対応策

国外に住所がある者や外国人居住者の割合が同じマンションで増えていくと、これまでと同じようなマンション管理の進め方では様々な支障がでてくる可能性があります。

実際、マンション管理業者からは、「外国人の方々が多くおられるマンションの場合、規約上は拘束力がない中で、連絡が取れない、何か郵送するときに誰が負担するのかという話になる。」「居住されている外国人で日本語が堪能でない場合に、役員になってもらえず、新築で管理組合を立ち上げる時に、1期目の役員の選任に苦労することがある。」といった声も聞かれます(※1)。

ただし、日本は世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」のもとで、不動産取得に関して内外無差別の原則を採用しています。そのため、安全保障のための例外(GATS14条の2)を除き、外国人であることを理由に不動産取得を法的に禁止することは、国際的義務との整合性から極めて難しいとされています。

そのため、まずできることは、たとえば、買い手が外国資本の法人や外国人の場合、売買契約時の重要事項説明において、日本のマンション管理の仕組みや区分所有者としての義務やルールなどの説明を義務化することなどが考えられます。

さらにそれぞれのマンションで総会を開き、区分所有者が外国居住者の場合には国内管理人の届出を義務とする管理規約の改定を決議することも有効です。これにより、マンション管理上のリスクを軽減できる可能性があります。

国土交通省からはすでに、マンション標準管理規約において国内管理人の選任を義務付ける場合の規定例が示されています。

2026年4月1日施行の区分所有法改正に伴い、多くのマンションで管理規約の一部改正が必要となるので、この機会を生かして、国内管理人に関する届出ルールを導入するかどうかについても、管理組合で議論することが重要でしょう。

いずれにしろ、外国人所有者の増加に関する全容解明には国や自治体によるさらなる調査とともに、その円滑な把握にむけた仕組みづくりが急務です。客観的なデータ分析を通じて、冷静に政策的な対応を積み重ねていくことが必要不可欠です。

文/野澤千絵

『マンション高騰の真実-都市部の「非居住化」が街を壊す』(中央公論新社)

野澤千絵

2026年8月7日

1056円(税込)

216ページ

ISBN: 978-4121508706

★マンションを買っているのは誰だ?
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都心、駅近に住みたい人、必読です。

誰がどんな目的で、好立地の高額マンションを買っているのか。
著者は登記簿等を徹底解析し、国内外の富裕層や法人が、新築のみならず中古まで買い漁っている実態を明らかにした。
多くは転売・資産保有等の目的で抱え込まれ、住まないうえに売却時も住みたい人には売られない。
どうりで買えないはずだ。

非居住化問題は、この先、マンション管理や都市政策に多大な影響を及ぼしかねない。
住宅を住みたい人の手に取り戻せ。