アメリカの新車販売で、トヨタが長年首位のゼネラル・モーターズ(GM)を猛追している。2026年上半期の販売台数は、GMが134万1325台、北米トヨタが124万3391台。差は9万7934台まで縮まり、前年同期比ではトヨタが0.5%増、GMが6.8%減だった。GMがハイブリッドを「つなぎの技術」とみてEVへの移行を急いだ一方、トヨタは20車種以上にハイブリッドを用意。EV販売が3四半期連続で前年を下回るなか、ハイブリッドのシェアは過去最高の14.1%に達した。両社の明暗に、海外メディアが注目している――。
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2025年12月5日、静岡県裾野市の「ウーブン・シティ」で開催された新型スポーツモデルのワールドプレミアで、スピーチを行うトヨタ自動車の豊田章男会長 - 写真=AFP/時事通信フォト

■首位GMとの差はわずか9万7934台

1931年以来、95年にわたりアメリカの新車販売でほぼ首位に君臨してきた、ゼネラル・モーターズ(GM)。その絶対的な地位が今、揺らいでいる。追い上げるのはトヨタだ。

GMと北米トヨタの発表によると、2026年上半期のアメリカでの新車販売台数は、GMが134万1325台、北米トヨタが124万3391台だった。両社の差は9万7934台。前年同期比では、トヨタが0.5%増(前年123万6600台)、GMが6.8%減(前年143万9951台)となった。

この95年で、GMが首位を明け渡したのは一度きりだ。2021年、コロナ禍で半導体など部品の供給網が寸断され、車を作れなくなった末の陥落だった。米自動車ニュースサイトのオートブログは、この年を除けば、両社の差がこれほど縮まった例はかつてなかったと指摘する。

米CNBCによると、コックス・オートモーティブの上級エコノミスト兼業界インサイト担当シニアディレクター、チャーリー・チェスブロー氏は、報道陣向けのイベントで、「このペースなら、年末にはGMは背後を気にすることになるかもしれない。トヨタが最量販メーカーとして追い抜く可能性がある」との見方を示している。

■ハイブリッドはGM1車種、トヨタ20車種超

両社の命運を分けたのは、電動化にどう取り組むかという経営判断だった。

GMは、エンジンとモーターを併用して燃費を稼ぐハイブリッド車を「つなぎの技術」と位置づけ、コルベット1車種にとどめた。これ以外では、電気自動車(EV)へ一気に舵を切った。一方のトヨタはハイブリッドを軸に据えながら、外部から充電できるプラグインハイブリッド(PHEV)やEVも並行して展開している。

2026年の市場では、ハイブリッドが伸び、EV需要が失速した。この読みの違いにより、販売台数に差が生まれた。

落ち込みが目立つのはEVのカテゴリーだ。米自動車サービス企業のコックス・オートモーティブによると、米国のEV販売は2025年第4四半期に前年同期比36%超減、2026年第1四半期は27.3%減、第2四半期は20.5%減と、3四半期連続で前年を下回った。

急落の主な原因は、優遇税制の終了と輸入関税だった。欧州テクノロジーメディアのネクスト・ウェブは、EV購入者向けの7500ドル(約119万円)の連邦税額控除が2025年9月末で打ち切られ、そこに25%の輸入関税が加わったと説明する。多くのEVで、購入の動機が薄れた。

GMはバッテリーをはじめとする主要部品を海外調達に頼るほか、海外工場で製造した完成車を相当数輸入している。「アメリカのメーカーだから関税は無縁」とは言えない状況だ。

影響の受け方は、メーカーによって大きく違った。CNBCによると、第2四半期(4〜6月)の新車販売で減少幅が大きかったのは、テスラ、フォード、GMだった。一方、ホンダ、フォルクスワーゲン、ステランティスは販売を伸ばした。

■EV失速を尻目に伸びるハイブリッド

実績を伸ばした各社に共通するのが、ハイブリッドのラインナップの強さだ。コックス・オートモーティブはケリー・ブルー・ブックの集計をもとに、上半期のハイブリッド販売が約9%伸びると伝えている。

いわゆる「電動車(electrified)」とは、ハイブリッドやPHEV、そしてEVや燃料電池車を含む総称だ。アメリカで減速したのは、電動化の中でもEVという1つのカテゴリーであり、電動化の勢い自体は衰えていない。

この流れを追い風にしたのが、トヨタだった。

北米トヨタが公表した第2四半期(4〜6月)の販売数は、1.1%増の67万3971台。うち電動車は19.5%増の38万3091台で、同社の販売数全体に占める割合は56.8%に達した。トヨタがアメリカで販売する車の半分以上を、すでに電動車が占めている。

モデル別の実績が公表されている上期(1〜6月)の累計から、その中身を読み解くことができる。同期間の電動車は67万367台。このうちEVはbZやレクサスRZなどを合わせて約2万6000台で、電動車全体の4%程度にとどまる。外部充電できるPHEVも約3万3000台で、5%程度だ。

残る9割強という圧倒的多数を、充電の必要がない通常のハイブリッドが占める。

2024年式 GMC シエラ エレベーション 1500 クルーキャブ 4WD(写真=Mr.choppers/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons)

■高燃費を求める客に売るクルマがない

イラン戦争でガソリン価格が高止まりする今、車社会のアメリカにおいても、人々は燃費に敏感だ。

ガソリン価格の全米平均は、6月24日時点で1ガロンあたり3.92ドル(約165円/L)。約1年前と比べて50セント(約20円/L)高い水準だと、米経済誌のフォーブスは全米自動車協会の集計をもとに報じた。

こうした情勢を受け、新車を選ぶ際にも燃費の比重が増している。コックス・オートモーティブが5月に実施した新車購入検討者への調査では、56%が「ガソリン価格の上昇によりハイブリッド車やPHEVの購入を検討する可能性が高まる」と答えている。オートブログは、燃費で不利な大型車こそ、GMとフォードの最も得意とする分野であったと指摘する。

もっとも、その大型車が売れなくなったわけではない。GMの発表によれば、第2四半期はGMCシエラが四半期として過去最高を記録し、フルサイズピックアップと大型SUVの販売でも首位を保った。

GM自身は、第2四半期の販売を71万4896台(前年同期比4%減)と発表したうえで、その理由にEV市場の縮小、生産終了車種、一部の在庫制約を挙げている。そのうえで、もう一つ問題がある。燃費を求めて動いた客に、GMが差し出せるハイブリッドがないことだ。

■中古市場にも波及したハイブリッド熱

ハイブリッド車の販売数の伸びは、パワートレイン(動力源)別カテゴリーの中でも最も大きい。2023年以降で販売台数が83%増えたと、フォーブスはコックス・オートモーティブのデータとして伝えている。

2026年第1四半期にはアメリカ市場でのハイブリッド販売のシェアが14.1%となり、過去最高に達した。設定車種も12ブランド49モデルに拡大している。2023年比では、モデルの選択肢が7つ増え、新たに2ブランドが参入した。

勢いは中古市場にも波及している。フォーブスが引用するカー・グルズのデータによると、中古ハイブリッド車の販売数は年初来34%増加し、平均掲載価格は6月中旬に3万8800ドル(約617万円)と過去最高を更新した。車種別ではトヨタ・カムリが306%増、ホンダCR-Vハイブリッドが78%増となったほか、ジープ・ラングラー4xeが68%増、トヨタRAV4ハイブリッドが27%増と伸びている。

日本車は一般に、信頼性(故障の少なさ)でアメリカでも高い評価を得ている。新車価格が高騰する昨今、リーズナブルに安心して乗れるクルマを求める消費者は多く、中古市場でもトヨタへの需要は高い。

2025年型トヨタ・カムリ XSE(米国仕様)のフロントビュー(写真=Autosdeprimera/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

■GMが見ていたのは顧客ではなく投資家

ハイブリッドを経由し、パワートレインを次の世代へとスムーズに移行させるトヨタ。それに対してGMは、なぜ一足飛びにEVに社運を賭けたのか。その動機を、業界関係者が語っている。

コックス・オートモーティブで業界分析を統括するステファニー・バルデス・ストリーティ氏は、ブルームバーグの取材に対し、「EVについては、ウォール街を喜ばせることが目的でした」との見方を明かす。「テスラのような企業価値評価を得たい、ということです」

目の前の顧客の需要に応えるのではなく、投資家の目を気にした。ブルームバーグは、GMが大胆なEV投資に踏み切ったのは、テスラの販売と株価が急騰し、世界各国の規制当局が排ガス規制を強化していた時期だったと指摘する。GMにとってハイブリッドは「高くつく暫定的な解決策」でしかなく、このためメアリー・バーラCEOは全面EVへと舵を切った。

■EV一本に絞らなかった豊田章男の判断

業界としても全面的にEV一色に染まるなかで、内燃機関から燃料電池まで幅広い選択肢を残すべきだと主張し続けたトヨタの豊田章男会長は、明らかに時流に逆らっているかのようにすら見えた。

しかし、豊田氏には信念があった。顧客のニーズも充電ステーションの整備状況も、地域ごとに違う。EV一本に絞るには早すぎる。決して反EVだったわけではないが、現実的な市場環境を分析し、EVに全てを賭けるには早すぎると判断した。

やがて市場は、ゆっくりと、しかし確実に豊田氏の見立てどおりに動いていった。「豊田会長はEVの大量生産を先送りすることで、数十億ドルを節約した」と、カナダ自動車ニュースサイトのカー・バズは分析する。EVの大量生産に前のめりにならなかった分、EVの販売が停滞する今になって、巨額の損失処理を迫られずに済んだ。

トヨタがアメリカで20以上の車種にハイブリッドを用意しているのに対し、GMはコルベットにしかハイブリッドの選択肢がない。GMも現在はハイブリッド強化に動いており、バーラCEOは1月時点で、ハイブリッドとPHEVの戦略を検討中だと述べたが、生産時期は未定だ。

フォードもハイブリッドの選択肢は限られ、主力は小型ピックアップのマーベリック、F-150、SUVのリンカーン・ノーチラスだ。

シボレー・コルベット E-Ray クーペ(C8、2024年)(写真=Charles/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

■EV生産をやめ、ガソリン車に戻す工場も

EVに賭けた代償を、GMは2025年末の決算で支払った。

同社が第4四半期に計上したEV関連の特別費用は60億ドル(約9540億円)で、その大半が北米分だ。内訳は、EV製造設備の評価減など18億ドルと、電池をはじめとする調達契約の解消費用など42億ドルである。

これに、中国の合弁会社である上汽通用汽車の再編に伴う11億ドル(約1750億円)が加わる。第4四半期の費用計上額は、合わせて71億ドル(約1兆1300億円)。GMの2025年通期の純利益27億ドルの、2.6倍に相当する額が吹き飛んだ。

GMは人員にも手をつけている。EV工場と電池工場で、およそ3400人に無期限・一時のレイオフを実施する。EV専用に整備されたデトロイトのファクトリー・ゼロなどが対象で、大半は今年1月5日付となっている。

EV路線からの転換は、工場の現場で目に見えて進行している。GMは、ミシガン州オライオンの組立工場について、EVの生産をやめ、ガソリンエンジンのフルサイズSUVとピックアップの生産に切り替えると決めた。

ただし、その大型車もガソリン高の逆風と無縁ではない。EVの生産能力を絞る一方、即座にハイブリッドを開発・市場投入することは叶わず、燃費で不利な商品構成に頼る形が当面続く。

■フォードEV部門は4年で2.5兆円の損失

厳しい状況はフォードも同じだ。EV部門「モデルe」は、設立からわずか4年で160億ドル(約2兆5400億円)超の損失を計上した。米自動車メディアのカー・スクープスによると、フォード自身も今年40億〜45億ドル(約6360億〜7150億円)の赤字を見込んでおり、CFOのシェリー・ハウス氏はモデルeの損益分岐点到達を「2029年ごろ」までは見込めないと述べている。

トヨタは今年、RAV4からガソリン専用モデルを外し、ハイブリッドとPHEVだけのラインアップにした。カー・バズによれば、1996年の発売以来の累計販売は640万台超。2025年にはアメリカSUV販売で47万9288台の年間首位に立った。

ただし2026年上半期は、ハイブリッド専用化に伴うカナダ・日本工場の改修で生産が追いつかず、米国販売は15万3955台と前年同期比35.7%減に落ち込んだ。それでも内訳を見れば、ハイブリッドは23%増、PHEVは30%増。減少分はほぼガソリンモデルとなっている。

消費者の考え方の変化を正しく予測したことで、現在の優位が生まれたと言えよう。「電動化の波には乗りたいが、航続距離への不安を日々抱えるのはご免」。あるいは、「ステーションで数十分もかけて充電したくないし、EVの車両価格は高すぎる」――。そう考える消費者の受け皿を、トヨタは周到に用意していた。

2019年型トヨタ・RAV4(写真=Kevauto/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

■EV販売でも米国トップ5入りしたトヨタ

フォーブスによると、コックス・オートモーティブのストリーティ氏は、「長期的には、未来はEVです。ただ、非常に長い期間、ハイブリッドが消費者の現状に寄り添う形で、その隙間を埋めていくでしょう」と述べている。

ガソリン高や新車価格の高騰などが影響し、過渡期として生まれた現在のハイブリッド需要。もっとも、遠い未来を見据えるなら、いずれかの時点でEVへの移行が焦点となるだろう。

トヨタとしても、長いスパンでEVが拡大するとの予測は否定していない。カー・バズが取り上げたように、2021年にトヨタは、2030年までにBEV30車種、世界年間販売350万台を目指す方針を示している。

すでにEVでも存在感は増しており、コックス・オートモーティブによれば、トヨタは第2四半期にEV販売台数を前年比で倍増させ、米国のEV販売上位5社に食い込んでいる。

ハイブリッドで示した鮮やかなタイミングの見極めを、EVの本格拡大となる次のターニングポイントでも見せてくれるか。日本と世界の注目が集まっている。

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青葉 やまと(あおば・やまと)
フリーライター・翻訳者
1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。
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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)