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 女優の南果歩(62)が、22日放送のTOKYO FM「川島明 そもそもの話」(土曜後5・00)にゲスト出演し、女優デビュー作にまつわる思い出を語った。

 関西から上京し、短大在学中に映画のオーディションに挑戦。きれいに着飾った他の候補とは対照的に、すっぴんで垢抜けない風貌だったというが、見事に役を射止めた。「それが役にはまっていたんじゃないかなと」と自己分析。それが、小栗康平監督の「伽耶子のために」(84年公開)だった。

 合格はしたものの、本格的な演技経験はなく、「そこから地獄が始まりました」と打ち明けた。「サードの助監督さんが付きっきりで、マラソンしたりとか…」。体力作りのために走ったり、相手役俳優との本読みを経て、いよいよ小栗監督と対面したという。

 ところが、「そしたら何か…気に入らないわけですよ、私のことを。何もできないから」という。「監督からは毎日のように怒られていたし、華やかな映画界ってみじんも感じなかったです。毎日毎日、断崖絶壁に立たされて。これが一生、続くと思ったら私、生きていけないと思うくらい、つらかった。星飛雄馬とお父さんみたいな感じですよ」と打ち明けた。

 印象的な出来事があったという。それは、涙を流すシーンでの撮影だった。「たくさん女優さんが泣いているシーンを見てきましたよ。凄くきれいな涙を流されて、自然に。あれだ。あれを目指さないと、と思って、もうド緊張で。前の日は一睡もできずに現場に行きました」。そして迎えた本番。「何とか涙が出たんですよ。よかった…と心の中で思ったんですよ」。ところが、監督の反応は意外なものだったという。

 「そしたら、監督が“カット!もういい!今日は終わり!”ってスタッフに言ったんですよ。え?私、ちゃんと泣けたはずなのに」。監督の鶴の一声で、スタッフは撤収の準備を開始。「スタッフさんは、スタジオからさざ波のように去っていく。私、1人残されて、薄暗い中で。何が起こったの?って。そこから本気泣きですよ」と振り返った。これまで優しかった制作スタッフにも冷たくあしらわれ、涙を流しながら電車で帰宅したという。

 翌朝、撮影所に行くと、小栗監督の姿が。「怖…って。目を合わせずに、“おはようございます”って蚊の鳴くような声であいさつしたら、ちょっと私と目が合って」。監督は南を呼び寄せ、こう言ったという。

 「“カメラはね、全部映すんだよって言うんでしょ。涙がすーっと流れた後にね、お前、涙出たって思っただろう?”って言うの。確かに思った!“そういうところまでカメラは撮っているんだ”と。怖っ!と思うじゃないですか。“心の奥底が映るんだよ、映画は”って。もの凄く恥ずかしくなって」。目からウロコの指摘に、南は「もの凄く反省したんですよ」と明かした。

 涙のシーンについても、アドバイスを受けたという。「もう一つ教えて下さったのは、“泣くシーンでも、涙は現象だから、心で泣いていれば、それでいいんだ”っていうこと言ったんですよ。“心で泣いていたら、そういう表情になるんだよ”ということをおっしゃったんですよ」と回顧した。

 厳しい現場で学んだことは、今の女優人生の大事な糧になっているという。「そういう意味では、初心者扱いしない。新人扱いもしない。対等な俳優として接して下さったことは、たぶん私が仕事を続けられているのは、あのデビュー作と出会ったからです」と感謝していた。