MIXIを騙る偽サイトを徹底調査 中に入ると粗だらけ、“宿敵”クラブのロゴまで

インターネット上にあふれる偽サイト。近年では、実在する企業になりすましたものも珍しくありません。
名前を騙られた企業側にとっては、もちろんたまったものではありません。公式サイトやSNSで注意を呼びかけるなど、対応に追われるケースもしばしばあります。
今年6月には、株式会社MIXIが同社を装った不審なウェブサイトについて注意を呼びかけました。
発表によると、当該サイトではMIXIの会社概要や役員の写真、情報などが、何者かによって無断で使用されているとのこと。
■ 一見すると本物?タレント写真も並ぶ仕事マッチングサイト
では、その偽サイトとは一体どのようなものなのでしょうか。編集部で調査したところ、該当するとみられる不審なウェブサイトはすぐに確認することができました。
トップページは、ウェブ上で仕事の受発注を行うクラウドソーシングサービスのような体裁。MIXIの本物のロゴこそ使われていないものの、はっきりと「ミクシィ」の名称を掲げています。他にも、有名タレントの写真まで掲載。

一見しただけでは、MIXIが新たに立ち上げた正規サービスなのではないか……そう錯覚してしまいそうな、かなり手の込んだ作りです。
しかし、編集部が気になったのは別の点でした。
実はこのサイト、デザイン自体に見覚えがあるのです。
編集部ではこれまでにも、ネット詐欺の実態を調べるため、さまざまな不審サイトを調査してきました。その中で、今回とほぼ同じフォーマットや、デザインの一部だけを変更したようなサイトを複数回目にしたことがあります。全て社名がことなるものの、デザインはほぼ同じ。使用されているタレントまでもが全く同じなのです。
こうした偽サイトが量産される背景のひとつに、ネット詐欺師業界で流通している「フィッシングキット」と呼ばれるサービスがあります。偽サイトを構築するためのテンプレートや各種機能をまとめ、専門的な知識が乏しくてもフィッシングサイトを作れるようにしたものです。
代表的なのが、今年6月にGoogleが提訴した、中国を拠点とする組織「Outsider Enterprise」が提供しているとされるフィッシングサービス「Outsider」。
利用料は週88ドル(日本円で約1万4000円)からとされ、通信会社や配送業者、ECサイト、政府機関などになりすますためのテンプレートが用意されているといいます。
もちろん、今回確認した偽MIXIサイトが「Outsider」をはじめとする特定のフィッシングキットによって作られたものかどうかは確認できません。
ただ、編集部がこれまで確認してきた複数の不審サイトとデザインや構成に共通点があることから、こうしたテンプレートを利用して偽サイトが量産されている可能性は考えられます。
■ せっかくなので「偽MIXI」を細かく見てみる
せっかくなので、今回見つけた偽MIXIの構造をもう少し細かく見ていきましょう。
トップページだけでもかなり作り込まれていましたが、当然ながらサイトはそこだけで終わりではありません。メニューには「会社概要」などのページも用意されており、見た目だけでなく、サイト全体として“それらしい形”が整えられていました。

まず「会社概要」のページを開いてみると、「株式会社MIXI」の名称とともに、代表取締役社長である木村弘毅氏の顔写真やトップメッセージが掲載されていました。
さらに、所在地や資本金などの詳細な項目も、実際のMIXIが公開している情報と一致。会社名だけを拝借したような雑な作りではなく、企業情報まで本物そっくりに整えられています。
事情を知らずにこのページだけを見れば、本物のMIXIが運営するサイトだと誤認してしまっても不思議ではありません。
■ 詰めが甘すぎるミスを連発 サッカーファンなら見逃さない「やらかし」も
ここまでを見る限り、なかなか手の込んだ偽サイトです。しかし細部まで目を凝らしていくと、その作り込みとは裏腹に「これはさすがにおかしい」と首をかしげたくなる箇所が次々と見つかります。
まず目についたのが、ページ下部のフッターに設けられた「個人情報保護方針(プライバシーポリシー)」です。リンク先を確認すると、そこには「株式会社MIXI」ではなく、全く無関係の実在する別企業の名称が記載されていました。

サイトの表側ではMIXIの企業情報を細かく掲載している一方、こうした部分には別会社の情報が残ったまま。どこかから流用した文章を十分に修正しないまま使っていることをうかがわせる、不自然な状態です。
また、「業界別活用術」「お客様の声」といった項目があるものの、クリックしても画面が変遷しない箇所が存在。見た目は整えていても、詰めの甘さが露呈しています。
そして何より、一目で「偽物だ」と見破れる決定的なやらかしが堂々と掲載されていました。あろうことか、そこには緑をチームカラーとする某Jリーグクラブのロゴがデカデカと掲出されているのです。
サッカーファン、とりわけ東京のJリーグ事情に詳しい人なら、この時点で「いやいや、これはおかしい」となるはずです。
というのも、株式会社MIXIといえば「FC東京」のクラブ経営に深く参画し、メインスポンサーを務める企業。同じ東京を本拠地とし、対戦のたびに激しいダービーマッチで火花を散らす“宿敵”とも言えるクラブのロゴが、MIXIを名乗るサイトに掲載されるなど、Jリーグの勢力図を知る者からすれば絶対にあり得ない致命的なミス。
双方のサポーター感情を考えても、許されるものではありません。この一箇所だけでも、偽サイトであることは完全に確定と言えます。
■ サイトに潜入してみると……至る部分に粗さが目立つツッコミどころ満載の造りだった
一通り表面は見終わったので、次にサイトに少し潜ってみることに。
トップページの「仕事を探す」をクリックすると、求人一覧がずらっと表示されました。その中には誰もが知るような有名企業の名前も。一見すると非常にそれっぽい造りになっています。

そのまま「仕事に応募」しようとすると、まずは会員登録が必要とのこと。潜入用のメールアドレスを入力すると、すぐに折り返しのメールが届き、本登録のために氏名や住所、電話番号といった個人情報の入力を求められました。もちろん架空の情報を使って登録完了をポチっと。無事に登録できました。

さあいざ仕事に応募しようとすると、今度は銀行口座の登録を求められました。ここでももちろん、実在しない銀行口座の情報を入力し、「銀行口座を確認」をクリック。さすがにこの審査は通らない……と思いきや、あっさりと承認されました。驚きの素通りっぷりです。

ちなみに今回確認したサイトでは、銀行名はプルダウン形式で選択する仕様になっていました。編集部が過去に確認した同系統のサイトでは銀行名も自由入力だったため、この部分については少し“アップデート”されているようです。
さて今度こそ、仕事に応募。筆者が選んだのは某アパレル企業のSNSプロモーションを行うというもの。報酬はどれくらいになるのかチェックすると、なんと驚きの自己申告制。契約期間も応募者側が決められる仕組みのようです。非常に斬新なシステム。
ひとまず適当に入力を行い、応募完了。するとステータスが「審査待ち」となり、保留状態となりました。ここはさすがにすぐに採用とはならなかったようです。
しかしその後数日待ちましたが一向にステータスは変更されず、先方から連絡もありません。これは推測ですが、住所や電話番号などの個人情報や、銀行口座情報を照会し、正しく入力を行った人だけに連絡を行う、といった手法が取られているのかもしれません。それでも不採用の通知くらいは欲しいものですが。
なおその他のツッコミどころとしては、「いったいどの口が言っているのか」と言いたくなる「当社サイトを不正流用した偽サイトにご注意ください」といったお知らせ記事や、MIXIではない全く別の企業の署名がなされていて、よそからのコピペがバレバレなお知らせ記事など、枚挙に暇がありません。やはり、表面だけ取り繕った悪質な偽サイト、そう断言して間違いないでしょう。

一通り見てきたので、最後にもう一つ余談を。実はこのサイトのベースになっているとみられるデザインは、ある実在企業が数年前に使用していたウェブサイトと非常によく似ているのです。
今回確認したサイトが、当時のウェブサイトを直接コピーして作られたものなのか、それとも同じ素材やテンプレートを経由して作られたものなのかまでは断定できません。
ただ、古いデザインの特徴が現在も色濃く残っていることを考えると、過去に取得されたサイトデータなどをベースに、内容の一部を書き換えながら使い回している可能性はやはり高そうです。
■ 個人情報や口座情報は絶対に入力しないで 偽サイトには十分な注意を
MIXIは注意喚起を行った6月当時、この不審なサイトについて、アクセスや個人情報の入力、問い合わせフォームの利用、金銭の支払い、ファイルのダウンロードなどを行わないよう注意を呼びかけていました。
今回、編集部が実際に確認したサイトでも、会員登録の過程で氏名や住所、電話番号を求められ、さらに銀行口座情報まで入力するよう促されました。
見た目が本物そっくりだからといって、そこに表示されている企業名や会社情報が正しいとは限りません。特に、個人情報やクレジットカード情報、銀行口座などの入力を求められた場合は、その場で入力せず、一度立ち止まって公式サイトなどから正規のサービスであるかを確認することが重要です。
もし不審なサイトにパスワードを入力してしまった場合は、同じパスワードを利用しているサービスも含め、速やかに変更を。クレジットカードや銀行口座などの情報を入力してしまった場合には、カード会社や金融機関に連絡し、不正利用がないか確認するなどの対応も必要になります。
そして、実際に金銭的な被害が発生した場合や、不正利用が疑われる場合には、警察などの相談窓口へ相談してください。
今回の偽サイトは、じっくり見ればツッコミどころがいくつも見つかりました。しかし、最初から偽物だと疑って見る人ばかりとは限りません。
実在する会社名、社長の写真、正しい所在地、そして有名企業の名前が並ぶ求人情報……。それらを一つひとつ本物から持ってくることで、「これだけ揃っているなら大丈夫だろう」と思わせるのが、こうした偽サイトの厄介なところです。
少しでも「おかしい」と感じたら、そのサイトの中に書かれている情報だけで判断しないこと。これが何より大切です。
※本稿では取材・検証を目的として不審なサイトにアクセスし、登録などの操作を行っています。こうした行為には個人情報の流出や金銭被害などの危険が伴うため、一般の方には推奨できません。絶対に真似をしないようご注意ください。
<参考・引用>
株式会社MIXI(@mixi_PR)
(山口弘剛)

