スプーン1杯で脳のヨボヨボ化を防げる…医師・和田秀樹がみそ汁、ヨーグルトに必ず入れる「スーパーで買える粉」
※本稿は、和田秀樹『認知症でもひとり暮らし』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■“ヘルシーな食事”が老化を招く
粗食のほうが、ヘルシーで体にいい。高齢者は、消化能力も低下してくるから、なおのこと、しょぼい食事を選ぶべきだ。そんな主張がまかり通っています。
これを真に受け、若い頃は、肉をガッツリ食べていたような人でも、年齢を重ねるにつれて、肉より魚や野菜メインの食事にシフトして行く傾向があります。そして「なんて健康的なんだろう!」とひとり、悦に入るのです。
まったくもって、バカげています。そもそも、日本人の平均寿命が延びたのは、栄養をふんだんに摂れるようになったからです。昔の日本のように、粗食で過ごしていたら、栄養不足で50歳くらいで死んでしまいます。もちろん、老化も著しく速い。『サザエさん』の波平さんがあの見た目で54歳という設定なのは、連載スタート当時の54歳の見た目が、それくらい老けていたからです。
粗食は、絶対的に悪いとはいいませんが、肉を敬遠し、ご飯にお漬物だけといった食生活は、おすすめできません。少なくとも、脳にとっては不健康であると断言できます。肉を控えた食生活は、脳の老化を進めるので、認知症のリスクを高めることにもなりかねないのです。
そうです。脳の老化を防ぎ、認知症に効く食べ物とは、ズバリ肉です。その理由を説明していきましょう。
■脳の衰えは前頭葉から始まる
脳の老化は前頭葉から始まります。その前頭葉とは大脳の前部にある部位の一つであり、知能や人格、理性、言語、運動などを司っているところです。ここが衰えてくると怒りっぽくなったり、気分がふさぎ込んで不機嫌になったり、意欲や好奇心が失われたり、身の回りに無関心になったりします。さらには車の運転に必要な注意力や判断力といった能力の低下ともつながっています。
その意欲や判断力、記憶力の衰えは、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の分泌の減少によっても引き起こされます。この減少を食い止めるのに、一番手軽にできることは、男性ホルモンの分泌促進効果がある食べ物を摂取することです。
男性ホルモンの分泌促進には、アミノ酸を多く含むタンパク質をとることが必要となってきます。そして、その理想的な食べ物こそが「肉」なのです。
肉にはトリプトファンという必須アミノ酸が多く含まれています。これはセロトニンという神経伝達物質の材料で、肉に含まれるコレステロールがこれを脳に運んでくれるのです。
■筆者が「肉を食べよう」と連呼するワケ
セロトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれ、幸福感と密接に結びついている物質です。これが減少してくると気分が沈んだり、イライラしたりして、感情の不安定さを招きます。セロトニンは加齢によって分泌が減少していく物質であり、その減少が認知症の原因の一つだといわれています。つまり、セロトニンの減少を抑え、分泌を促すことができれば、脳の老化を遅らせることになるというわけです。だから、私はあらゆる機会をとらえて「肉を食べよう」といい続けているのです。

肉に含まれるコレステロールには、そのほかに男性ホルモンや女性ホルモンの材料になり、老化を遅らせる働きがあることも覚えておくべきでしょう。また、セロトニンを保護する鞘のようなものも、コレステロールでできています。認知症予防においては、肉は必須の食べ物なのです。
肉以外にも、男性ホルモンを合成するために必要な亜鉛を含んだ食材(牡蠣など)、末梢血管を広げて血行を促進して脳を活性化するビタミンEを含んだ食材(ほうれん草など)、認知機能や筋肉の衰えを防ぐビタミンDを含んだ食材(鮭など)なども有効だといわれています。
■インド人がよく食べる「最高のメニュー」
認知症が治る特効薬の開発は、未だ難航しています。そのため、認知症を予防する食品の研究は、世界中でさかんに行われるようになってきました。
そんな中、新たに注目を集めている栄養素が、クルクミンです。カレーに入れるスパイスの一つであるターメリックに含まれる成分で、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを溜まりにくくする作用があることが分かっています。
その効果は絶大で、カレーをよく食べるインドでは、アメリカに比べて、アルツハイマー型認知症の発症が4分の1程度で、クルクミンを混ぜたエサで育てたマウスは、認知症を発症しにくいことが示されたほどです。
クルクミンを含むスパイス、ターメリックの和名は「ウコン」です。二日酔い対策として有名なので、日常的に摂っているかたも多いことでしょう。サプリなども、よろしいのですが、より高い効果を狙うなら、カレーを食べることをおすすめします。

■1日「スプーン1杯」でOK
というのも、クルクミンは、油と一緒に摂ることで、吸収率が高まるからです。カレーには必ず油が使われていますし、カレーが苦手な人も少ないでしょう。効率よくクルクミンを摂取するなら、カレーが理想的なのです。

カレーが苦手なかたは、ターメリックの粉を味噌汁に入れたり、ピラフに混ぜたりするといいですね。ただし、クルクミンの過剰摂取は肝障害を引き起こす可能性があるので、量と頻度は注意が必要です。
ターメリックの粉なら1日スプーン1杯ほど、ウコンドリンクなら1日1本が目安。カレーを食べるなら、毎日ではなく、2日に1回くらいのペースがいいですね。
私は、朝食の際に、毎日ヨーグルトを食べるのですが、そこに、ターメリック、シナモン、コリアンダーの3つのスパイスをミックスしたものをかけます。かれこれ10年は続けていますね。そのおかげか、頭もよくまわって、日々、活力はみなぎるばかりです。自分自身が試してそう感じるので、ターメリックはやはり、脳にいいのだと思います。
口から摂り入れる栄養素は、効果が出るのが早いです。毎日の食事でも、認知症予防はかなうので、お試し下さい。
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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
