(※写真はイメージです/PIXTA)

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がんや脳卒中など、身近な人が大きな病気にかかった際、家族には「治療費」という重い負担がのしかかります。特に、子どもの教育費がかかる時期であれば、その負担感はなおさら大きくなるでしょう。しかし、治療費のことばかりに気を取られていると、その後の思わぬ請求に頭を抱える可能性も……。本記事では、後藤夫婦の事例とともに、家族の死後に必要となる費用や注意すべきポイントについて、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。相談者の名前はすべて仮名です。

働き盛りの夫にがんが発覚、経済的な不安を和らげた「治験」

大企業の部長を務めていた後藤崇さん(仮名)は、同い年の妻・純子さん(仮名)と協力しながら、千葉の戸建てで3人の子どもたち(長女27歳、長男26歳、次男23歳)を育て、忙しくも充実した日々を送っていました。

そんな崇さんにがんが見つかったのは、5年前のこと。まだ子どもの学費がかかる時期でした。標準治療では十分な効果が期待できないとわかり、絶望の淵に立たされた崇さんと純子さん。そんなとき主治医から提案されたのが「治験」への参加です。

がん治療において、治験は「新しい治療を試せる機会」であると同時に、経済的な面でも家族の支えになることがあります。治験では、治験薬そのものの費用や関連する検査費用の一部を製薬企業が負担するケースが少なくないためです。

夫婦は相談のうえ、治験への参加を決断。これにより、闘病中は治療費への不安をあまり抱かずに過ごすことができました。純子さんにとって、仕事を続けながらの通院や崇さんの体調に合わせた生活の調整など心身の負担は決して軽くはなかったものの、「お金の心配だけは最小限で済んだ」ということが、当時の大きな支えになっていたそうです。

もちろん、治験には効果や副作用の面で不確実性が伴うため、経済的な負担の軽さだけを理由に選択すべきものではありません。あくまで主治医との相談のもとで検討すべき選択肢の一つですが、経済的な安心感が闘病生活を支える要素になり得ることは、知っておいてよい事実だと思います。

葬儀・お墓・仏壇で500万円…見落としていた「亡くなったあと」の費用

一方で、純子さんが想定していなかったのが、崇さんが亡くなったあとにかかる費用です。

長い闘病の末、崇さんは51歳で逝去。人望の厚かった崇さんのため、葬儀は入社以来の付き合いがある同期や同僚、親族にも参列してもらえるよう、一般葬を選びました。また、崇さんの実家は京都市内にあり、両親も健在です。遠方であることから、お墓と仏壇は別で購入することに。

純子さんや子どもたちが暮らすエリアから近い霊園と契約し、仏壇は将来的に実家の位牌をまとめることも見据えて大きさに配慮して選んだ結果、葬儀・お墓・仏壇の費用は合計500万円にのぼりました。

「こんなにかかるのね……想像できていなかった」

闘病中は治療費の心配を抑えられていた分、亡くなったあとの費用の重さが一気にのしかかり、純子さんはため息をつきました。

葬儀だけで約100万円…家族の「死後」にかかる費用

これは、後藤夫婦に限った話ではありません。闘病中は医療費や生活費のことばかりに意識が向き、“その先”に必要になる出費まで考える余裕がないことはよくあります。むしろ、治療費の負担が軽減されている家庭ほど、「お金の心配はひとまず乗り越えた」という安心感から、その先の備えが手薄になりやすい側面もあるかもしれません。

逝去後に必要になるのは、葬儀費用だけではありません。特にお墓や仏壇のように、これまで用意していなかったものを新たに整える場合には、葬儀とは別にまとまった支出が必要になります。こうした費用は、地域の慣習や家族考え方によって大きく幅があるのが実情です。

具体的な相場をみてみましょう。株式会社鎌倉新書による「仏壇 購入実態調査2026」をみると、葬儀費用の全国平均は96.73万円で、内訳は葬儀一式の基本料金が70.02万円、飲食費が11.67万円、返礼品費が13.03万円となっています。また、新たにお墓を建てる場合、一般墓の平均購入価格は152.0万円で、内訳は墓石代が101.7万円、土地利用料が46.5万円です。仏壇の全国平均購入価格は33.6万円で、近年は住宅事情に合わせて小型の仏壇を選ぶ人が増えているようです。

これらを単純に合計すると、葬儀・お墓・仏壇だけで約300万円になります。もちろん、樹木葬や納骨堂など費用を抑えられる選択肢もあるほか、すでに墓を持っている家庭であれば墓所・墓石費用は不要です。しかし、崇さんのように新たに準備する必要がある場合には、決して小さくない金額です。

「治療費」だけでなく“その先”への備えも

本人や家族が大きな病気に直面したとき、私たちはどうしても「治療費をどう賄うか」という点に意識が集中しがちです。

今回、崇さんが活用した治験のほか、高額療養費制度など、治療費の負担を軽減する仕組みはいくつかあります。こうした制度を積極的に利用することで、治療中の経済的な不安を和らげることができます。しかし、それだけで安心してしまうと、“その先”に必要となる費用への備えが手薄になってしまいます。

身近な人が病気にかかった際には、治療費だけでなく、万が一の場合に必要となる葬儀・お墓・仏壇といった費用まで視野に入れ、医療保険や貯蓄の状況を確認し、資金計画を立てておきましょう。この際、加入している「生命保険」の受取金額が、“その後の費用”も含めて十分な水準になっているかを確認しておくと安心です。

元気なうちに、こうした費用の目安を一度把握しておくだけでも、いざというときの負担感は大きく変わってくるはずです。

〈参考〉
■厚生労働省「1.「治験」とは」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu1.html

■厚生労働省「6.治験に参加いただく患者さんのために」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu6.html

いい葬儀「【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年) 喪主の6割超が「事前準備なし」で直面する負担。葬儀後の“おくやみ手続き”支援に高まる期待」
https://www.e-sogi.com/guide/60603/

いいお墓「【第17回】お墓の消費者全国実態調査(2026年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向」
https://guide.e-ohaka.com/research/survey_2026/

藤原 洋子

FP dream

代表FP