【マネー現代編集部】”庶民の味”たこ焼きがまさかの700円突破…「築地銀だこ」相次ぐ値上げで”客離れ”17ヵ月連続止まらず
大阪の「粉もん」文化を象徴するソウルフードであり、安価で手軽に食べられる“庶民の味”として親しまれてきた「たこ焼き」。そんなたこ焼きの専門店として関東で生まれ、今や400店舗以上を構える一大チェーンとなっているのが、株式会社ホットランドホールディングスが運営する、ご存じ「築地銀だこ」だ。
築地銀だこのたこ焼きといえば、表面が油で揚げられており、生地の中までしっかり火が通った、 “外はパリッ、中はトロッ”が特徴。それゆえ、“ふわっと軽い食感”を特徴とする本場・大阪のたこ焼きに慣れ親しんだ者たちからは、「あれはたこ焼きではなく『揚げ焼き』だ」と指摘され、度々論争になるのは有名な話。
とはいえ、“銀だこの味自体が嫌い”というワケではないようで、関西エリアにも築地銀だこや銀だこハイボール酒場の店舗網は広がっており、定着は見せている。
そんなたこ焼きチェーンとしては日本一の店舗数と知名度を誇る築地銀だこだが、ここへきて深刻な“客離れ”に苦しんでいるという。いったい、たこ焼き界のガリバーに何が起こっているのか。
売り上げ自体は伸びているものの…
まずは築地銀だこ(以下、銀だこ)を運営する株式会社ホットランドホールディングスの足元の業績動向を見ておきたい。
今年2月に発表された2025年12月期決算によれば、売上高は510億4100万円と前年比10.7%増を確保している。この売上高だけフォーカスすると、コロナ禍の影響を大きく受けた2020年の287億3200万円で底打ちし、以降右肩上がりに増加の一途を辿っていき、コロナ禍前の水準を大きく上回る形だ。
ところが、営業利益は17億8400万円で、前年同期の25億4500万円から29.9%もの大幅減少となっている。つまりは、「売上は伸びているけれど、利益は3割消えている」という状況と言える。
そこに輪をかけるように同社を苦しめているのが、中核ブランドである銀だこの客離れだ。2026年1月から現在までの〈築地銀だこ既存店および全店前年同月比実績〉を見ると、既存店客数は、97.5%(1月)→93.4%→97.9%→94.2%→97.2%(5月)と前年割れが起きている。
しかも、この流れは今に始まったわけではない。たとえば、2024年1月〜12月では、客数が前年割れとなったのは10月だけ。それが2025年1月を端緒としてここまで、実に「17ヵ月連続」で客数減が延々と続いているのだ。
創業時の420円から「700円の壁」突破
昨年から終わりの見えない客離れに悩む銀だこ。その要因としてまず挙げられるのが、度重なる銀だこの「値上げ」ではないだろうか。
銀だこは1997年、群馬県にあるスーパーのテナントとしてオープン。創業時のたこ焼き(1舟8個入り)の値段は420円(税込)だったという。ちなみにこの値段での提供は、今も年に一度開催される『大創業祭』でも創業価格(お持ち帰りで税込421円)として残ってはいる。
今から見れば非常に安く感じる値付けだった銀だこ。それでもすでにこの頃から、昔ながらのローカル店や屋台で販売されている1舟300円台のたこ焼きに慣れ親しんでいた関西人からは「銀だこは高い」というイメージは根強かったと聞く。
だが、ここから銀だこの値段は加速度的に上がっていく。コロナ禍前の2018年7月に550円から580円(8個入り、税込。以下同)への価格改定が行われ、さらにコロナ禍明け以降は、2023年3月:626円(お持ち帰りの場合。以下同)→2024年12月:669円→2025年12月:702円と、毎年40円程度の値上げが行われているのだ。
前述した通り、2025年1月を機に客数減が続いている銀だこだが、ちょうどその前月に626円から669円の価格改定が行われたことを鑑みると、この値上げが客足に響いたと考えるのが自然だろう。まして「700円の壁」すら突破した現在では、関西人はおろか、関東人でも「たこ焼きでこの値段は高すぎる」と感じる人は少なくないはずだ。
“庶民の味”根強いイメージが足かせに
とはいえ、銀だこ側も「値上げをしないとやっていけない」というのが本音だろう。なぜなら、たこ焼き含む「粉もん」業界全体が苦境に陥っているからだ。
今年1月に報じられた〈2025年の「粉もん」倒産 過去最多の28件〉というニュースが話題になって久しい。東京商工リサーチの調べによれば、〈物価高がお好み焼き・焼きそば・たこ焼き店など、いわゆる「粉もん」を直撃している。2025年の「粉もん」店の倒産は、集計を開始した2009年以降、最多の28件(前年比33.3%増)を記録したことがわかった。〉という。
もちろん、このニュースにおいて倒産した店の大部分は、資本金1000万円未満の小・零細企業、いわゆる小規模な個人店であり、銀だこのような大手チェーンの話ではない。だが、物価高の波は確実に銀だこにも押し寄せている。
主となるタコは、近年の円安と日本国内の不漁、さらに欧米圏での需要増が重なり、すでに庶民の味方から高級食材へと変わりつつある。小麦粉や油の価格上昇も続いている。そんな状況下では、価格転嫁もやむを得ないことは十分理解できる。
問題は「たこ焼き」という商品の性質にある。冒頭で示した通り、日本人には「たこ焼きは安くて美味しい庶民の味」というイメージが長きにわたって刷り込まれている。それゆえ他の食べ物以上に、客は値上げに敏感に反応してしまうのかもしれない。
果たしてこの負のスパイラルから、銀だこが抜け出せる日は来るのだろうか――。
銀だこが窮地に陥る中、運営元のホットランドホールディングスは新たな戦略に打って出ている。それが“たこ焼きから油そば”へのシフトだ。つづく【後編記事】『ラーメン業界で「油そばシフト」さらに加速…広がるコスパ至上主義「東京油組」は“10年で10倍”100店舗の大台間近』で解説していく。
【つづきを読む】ラーメン業界で「油そばシフト」さらに加速…広がるコスパ至上主義「東京油組」は”10年で10倍”100店舗の大台間近

