記事のポイント
アクシアは、ワールドカップ史上初となる公式ライセンス腕時計ブランドとして、各国代表モデルや記念モデルを展開する。
FIFAとの契約はわずか6カ月で成立し、予約販売だけで同社の年間販売数を上回る好調なスタートを切った。
ワールドカップの巨大なライセンスグッズ市場は、大手ブランドだけでなく小規模ブランドにとっても国際展開の大きな成長機会となっている。


ラグジュアリーブランドは何年も前からワールドカップに関わっており、腕時計ブランドも例外ではない。ウブロ(Hublot)やタグ・ホイヤー(Tag Heuer)といったブランドは、公式タイムキーパーやイベントスポンサーを務めてきた。

しかし、これまでワールドカップの公認ライセンスの腕時計をつくったブランドはひとつもなかった。

米国を拠点とする創業8年のスイス製プレミアム・マイクロブランド、アクシア(Axia)が、2026年その初の栄誉を勝ち取った。同ブランドは1000〜2000ドル(約15万〜30万円)の価格帯で腕時計をつくっており、これはタグ・ホイヤーのような大手ブランドと近い価格帯に位置づけられる。

アクシアは、大会出場チームごとにデザインされた一連の時計に加え、ワールドカップを記念した時計、そして最終的に優勝したチームのためのワールドチャンピオンエディションを発売する予定だ。

6カ月でまとまったFIFAとの異例の契約



年間約5000本の腕時計を販売するブランドにとって、これは予想外の独占契約だ。アクシアCEOのジョン・カナラス氏はGlossyに対し、このパートナーシップは6カ月という短期間で、あっという間にまとまったと語った。

ウブロがFIFAとのパートナーシップを終了した直後、カナラス氏は友人を通じてFIFAの関係者を紹介された。ウブロは過去4大会でスポンサーを務めており、公式腕時計パートナーが不在となったことで、FIFAは腕時計について試してみることにより前向きだったとカナラス氏は言う。

「我々はわずか数カ月で45のデザインを完成させた。これは私たちにとってもFIFAにとっても新しいことだ。これまでFIFAは時計のスポンサーがいたので、このようなデザインは検討したことがなかった。この分野はまさに開拓の余地が大きかったのだ」とカナラス氏は語った。

手頃な価格の腕時計へという最近のトレンドにふさわしく、アクシアは各チームの腕時計を3つの異なる価格帯で3バージョン展開する。

コスモス(Kosmos)が225ドル(約3万3750円)、エノシ(Enosi)が795ドル(約11万9250円)、アルゴス(Argos)が1495ドル(約22万4250円)だ。さらに、この3本すべてとお揃いのケースを含むスペシャル・コレクターズ・エディションのボックスセットが2515ドル(約37万7250円)で用意されている。

ライセンス契約という諸刃の剣



ワールドカップの公式ライセンス商品を扱うことと、公式タイムキーパーを務めることは異なる。

アクシアはカレッジフットボールなど、ほかのスポーツでは公式タイムキーパーを務めてきた。アクシアはブランディングの権利と引き換えに、販売した腕時計1本ごとのロイヤリティをFIFAに支払う。ライセンス腕時計の製造に長けたベテランであるカナラス氏は、こうした契約は諸刃の剣になり得ると語った。

「ライセンサーとライセンシーが一緒になって、その製品が市場でどう売れるかを予測し、それに基づいて販売の最低保証を設定しなければならない。小規模事業者にとって、このさじ加減は難しい。保証を低く見積もりすぎると、ライセンサーはやる価値がないと判断するかもしれない。強気すぎると、保証の達成に苦労するかもしれない」とカナラス氏は語った。

なお、彼は具体的な保証額を明かすことは控えた。

予約注文がはじまったのは6月初めで、6月中旬に出荷される。カナラス氏によれば、すでに好調な売れ行きが見込まれているという。予約販売だけでも、アクシアはこのコレクションで例年の年間販売数を上回っている。

すでに興味深いパターンが現れはじめている。アクシアは以前、カレッジフットボール・プレーオフのトーナメントとコラボレーションした際にも同様のモデルを用い、個々のチーム向けの腕時計と、トーナメントそのものをテーマにした腕時計を展開した。

そのコラボレーションでは、トーナメントをテーマにした腕時計は、チーム固有の腕時計よりもはるかに売れ行きが悪かった。しかし、ワールドカップ・コレクションでは、ワールドカップ全体を対象とした時計が、すでに各チームの時計を上回っている。

大手も小規模も狙う巨大なグッズ市場



ワールドカップの公認ライセンスグッズは、莫大な経済効果をもたらす。前回のワールドカップでは、ライセンスグッズが7億6900万ドル(約1153億5000万円)の収益を生み出した

2026年は大会が北米で開催されるため、国際ショッピングセンター協会(International Council of Shopping Centers)によると、その額は1億1100万ドル(約166億5000万円)を超えると見込まれている。

ナイキのような大手ブランドは、今年の大会に例年以上に多額の投資をしている。ナイキのグローバル・バイスプレジデント・オブ・フットボールであるカミロ・アンドラーデ氏はGlossyに対し、ワールドカップがナイキの本拠地である北米で開催されることは、グッズへの投資にとってまたとない機会だと語った。

アクシアと同様、ナイキも異なる価格帯で異なるファン層向けに複数の製品ラインを生み出している。

たとえば、本格的な愛好家向けの315ドル(約4万7250円)のマーキュリアル(Mercurial)シューズや、よりカジュアルなサッカーファン向けの150ドル(約2万2500円)のマッド90パック(Mad 90 Pack)スニーカーコレクションなどだ。

「この瞬間は、コミュニティをまたいだ途方もない一体感を生み出す。このような瞬間は、スポーツの背中を押す大きな追い風となり、顧客がこのスポーツとブランドに入っていくための入り口となる」とアンドラーデ氏は語った。

しかし、ナイキがすでにグローバル企業であるのに対し、カナラス氏はワールドカップを、より小規模なブランドが国際的に展開するための大きな機会とみている。

これまでアクシアは主に米国に焦点を当てた腕時計ブランドだった。しかしワールドカップのコレクションは、すでに同ブランドが新たな市場に届くことを可能にしている。

「モロッコの大手時計専門誌の一つが私たちのことを取り上げてくれて、おかげでモロッコ製の時計はもう完売している」とカナラス氏は語った。

[原文:Fashion Briefing: How a U.S. microbrand became the first official purveyor of licensed World Cup watches]

Danny Parisi(翻訳、編集:藏西隆介)