五輪広告枠 は大手だけのものではない。Amazonなどを経由し少額出稿可能に

記事のポイント
プログラマティック広告により五輪枠が中堅企業にも開かれた
Amazon DSPなど経由で少額予算でも出稿できる環境が整った
ブランド各社は認知拡大や市場攻略を狙い参入を進めている
50年以上にわたって製品を販売してきたピッツバーグの調理器具ブランドであるオールクラッド(All-Clad)は、これまでライブスポーツ中継に広告を出稿したことが一度もなかった。
「我々はアメリカの伝統的なブランドだ」と、オールクラッドの親会社であるグループSEB(Groupe SEB)のリテールメディアおよびAmazon担当責任者、ステファニー・サンドクビスト氏は語る。
そのため、スポンサー契約や高額なリニア放送(テレビ放送)のパッケージに投資することなく、アイスホッケーやスキージャンプの種目でチームUSAを応援する観客の前で広告を流せるチャンスを生かすかどうかは「考えるまでもないこと(当然のこと)」と同氏は語った。ただ、これはオールクラッドにとって画期的な出来事である。
プログラマティック解禁で五輪広告の門戸が拡大
五輪のようなイベントは、かつては業界最大手の広告主だけの領域であった。
しかし、2年前のパリにおいて、NBCユニバーサル(NBCU)がプログラマティックな手法による五輪広告在庫(インベントリー)の購入をブランド側に許可しはじめて以来、スポーツメディアの至宝のひとつが、より小規模な予算を持つブランドにとっても手が届くものとなった。
2026年のミラノ・コルティナ大会の広告枠は、Amazon DSP、フリーホイール(FreeWheel)、バイアン(Viant)、トレード・デスク(The Trade Desk)、Yahoo、そしてNBCUを通じて購入可能である。
Digidayが確認した資料によると、ピーコックにおける30秒枠の五輪のインプレッション単価(CPM)は、ライブではない映像で40ドル(約6000円)から、ターゲティングを適用したライブ映像での75ドル(約11250円)まで及ぶ。
これは冬季五輪の広告枠がストリーミング広告価格のなかでも高位に位置することを意味するが、数百万ドル規模の予算を持たない広告主でも、その熱狂の一部を手にできるのだ。
たとえば、2025年のディズニー・プラス(Disney+)の平均ストリーミングCPMは28.82ドル(約4323円)であった。
小規模ブランドも参入、PMP経由で広がる需要
広告在庫の大部分は2025年夏のテレビ番組先行販売(アップフロント)期間中にNBCUとの直接取引で手配されているはずだが、小規模な予算を操る広告主は、この機会を活かすためにプログラマティックのアクセスポイントを利用している。
その多くはプライベート・マーケットプレイス(PMP)取引を通じて行われており、一部ではオープン・エクスチェンジ(公開入札)も利用されている。
メディアエージェンシーであるコレクティブ・メジャーズ(Collective Measures)のコネクション・ストラテジー担当グループディレクター、アビー・マクナリー氏は次のように述べている。
「五輪の広告在庫がプログラマティックで購入できるのは今回が初めてではないが、その在庫量と、在庫にアクセスできるDSPの数は増え続けており、かつてないほど多くの広告主がメッセージを発信できるようになっている」。
オールクラッド、ブランド想起向上を狙う戦略転換
オールクラッドにとって、これは大きなチャンスである。同社は不安定な経済状況のなかでブランド認知度を高めたいと考えている。
2025年、同社は感謝祭(サンドクヴィスト氏によればこのカテゴリーにおける「スーパーボウル」にあたる期間)に向けて、Amazon PrimeやFire TVでのストリーミングテレビ広告への投資を初めて開始した。
普段は門戸が閉ざされているライブスポーツイベントを活用できるチャンスを、彼女は絶対に見逃したくなかった。
「ブランド想起(ブランド・リコール)がなく、消費者との関係も築けていなければ、今の時代に成長するのは非常に難しい」と同氏は語る。
常連大手と新顔ブランド、冬季大会で競演
Amazon広告のバイヤーサービス・サプライ責任者、クリス・コネッタ氏は、2026年五輪広告に参入した中小規模(SMB)の広告主はオールクラッドだけではないと述べている。
「ライブイベントは、特にパフォーマンス重視のマーケターにとって、新たなフロンティアだ」と同氏は言う。
コネッタ氏は、現時点でのAmazon DSPにおける五輪広告支出に関する具体的な数字の公表は避けたが、需要は「健全」であると述べた。
今回の冬季大会は、米国の視聴市場との時差が好条件であることも、大規模予算を持つブランドにとって魅力的に映っている。
中国と韓国でそれぞれ開催された2022年大会と2018年大会では米国東海岸とのあいだに13時間から14時間の時差があったが、今回はニューヨークよりわずか6時間進んでいるだけである。
ヒョンデ(Hyundai)、リング(Ring)、ヒムズ&ハーズ(Hims&Hers)といった、すでにフットボールやバスケットボールの中継で広告を出稿している常連企業に混じって、アークテリクス(Arc’teryx)のようなアウトドアウェアブランドも新顔として名を連ねている。
アークテリクス、冬季大会でテレビ戦略に初参入
カナダのブランドであるアークテリクスは、五輪広告への初登場を果たすだけでなく、米国でリニアテレビ枠を初購入する予定だ。
アークテリクスのグローバルブランド・クリエイティブ担当バイスプレジデント、マーク・マッキャンブリッジ氏は「通常、テレビは当社のミックス(広告構成)に含まれていなかった」と語る。
同氏の説明によれば、これまではリスティング広告、ソーシャルメディア、屋外広告により注力してきた。
しかし、冬季五輪が山岳系のスポーツに稀有なスポットライトを当てることから、方針転換をする価値があると判断した。
「米国は我々にとって非常に重要な重点市場だ」とマッキャンブリッジ氏は言う。「今、スポーツに注目する層は、より幅広い」。
このキャンペーンは、アークテリクスにとってオールクラッドほど大きな節目ではない。
静と動の演出でブランド哲学を表現
一方で、スキーブランドのサロモン(Salomon)を所有する親会社のアメア・スポーツ(Amer Sports)は、2025年第3四半期の営業利益が22%増の2億1600万ドル(約324億円)に達している。こちらも大きな節目であることには変わりない。
オールクラッドのCMが「米国製」の信頼性に依拠し、選手の競争心に触れているのに対し、このアウトドアウェア企業は、興奮のなかに漂う静寂で禅のような瞬間を強調している。
そのメイン動画では、スノーボーダーのスペンサー・オブライエンがブライアン・イーノ氏の楽曲に合わせてスローモーションでターンする様子が映し出されている。
マッキャンブリッジ氏によれば、納得のいく仕上がりにするために65テイクを費やした。
「山とは、単に凍った斜面をスキーで滑り降りること以上の大きな概念であることを、人々に認識してもらおうとしている」と同氏は語った。
「そこにはより大きなチャンスがあるのだ」。
[原文:Programmatic is drawing more brands to this year’s Winter Olympics]
Image via Peacock
Sam Bradley(翻訳、編集:藏西隆介)
