ルイ=ドレフュス氏は、穀物、海運、通信その他を手がける大グローバル商社「ルイドレフュス・グループ」の会長。「RLD」の略称で通るほど、フランスで最も有名な実業家のひとりだ。アディダスの経営者だった1997年にマルセイユ市から請われ、クラブを買い取った。その後10年間で2億ユーロ(現在のレートで約312億円)を投じたとされるが、その間マルセイユは無冠に終わっている。昨シーズンも1000万ユーロ(約15.6億円)の赤字を計上した。またルイ=ドレフュス氏には昨年6月、1997〜1999年の選手移籍金をめぐる不正会計事件の裁判で37万5000 ユーロ(約5850万円)の罰金が命じられており、現在控訴中。

 一方、買い手候補のカシュカー氏は、シリア生まれのアルメニア系カナダ人。43歳の気鋭の実業家で、医薬品メーカー「Inyx」などを傘下にもつ投資会社「カーバー・キャピタル・ホールディング」を経営する。「レキップ」紙のインタビューに応じたカシュカー氏は、1億1500万ユーロ付近の買収額を用意し、「夢が現実になる」と語っている。南仏にはここ5年、夏のバカンスで過ごすなど愛着があり、オリンピック・ド・マルセイユについては、ヨーロッパ留学時代の1993年に観たチャンピオンズ・リーグ決勝(対ACミラン)で強烈な印象をおぼえたという。

 14日にリーグ・アン2000試合を記録したばかりのマルセイユ。創立1899年、リーグ優勝8度、フランス杯優勝10度という輝かしい歴史を誇る。「マルセイユに魅了されるのはその歴史」と話す若い実業家の経営によって、新たな「栄光の時代」を迎えることができるか、今後の展開が注目される。