3試合連続でスタメンの香川。「サッカーに対する情熱や向上心、意欲は落ちてない」という。写真:滝川敏之

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 今季に新監督を迎えた鹿島アントラーズと柏レイソルがJ1のトップ争いを演じるなか、同じく新監督組のセレッソ大阪は一進一退の状況に直面している。

 横浜F・マリノス時代にアンジェ・ポステコグルー監督の参謀を務めていたアーサー・パパス監督のもとで始動したC大阪は、ボールを支配しながら攻め込むアグレッシブなスタイルを志向。2月14日のガンバ大阪との開幕戦(5−2)では派手なスタートを切ったが、その後は勝ったり負けたりが4月末まで続いた。

 それでも、5月突入後は京都サンガF.C.、ヴィッセル神戸、横浜FMに勝利して3連勝。キャプテンの田中駿汰を負傷で欠くなか、チームを力強く支えているのが、36歳のベテラン・香川真司だ。5月18日の川崎フロンターレ戦で3試合連続のスタメン出場。喜田陽とボランチでコンビを組み、ゲームをコントロールする役割を担った。

 前半はなかなかシュートチャンスを作れなかったが、的確な配球やポジショニング、守備のハードワークで中盤に落ち着きをもたらしていた。GK福井光輝の好セーブで失点を阻止するなどチームの守備も光っていた。

 後半の立ち上がりにもピンチはあったが、福井を中心にしのいだ後、パパス監督は中島元彦、北野颯太を投入。一気に攻撃のギアを上げていく。その采配が奏功し、確実にチャンスは増えたが、この日はどうしてもゴールが遠い。

 逆に川崎で途中出場したエリソンの爆発力に押され、85分過ぎに2点を叩きこまれてしまう。結局、C大阪は0−2で苦杯を喫した。

「もうちょっと耐えて0−1の状況だったら、何が起きるか分からなかったけど、0−2で試合が終わってしまった。あっさり失点しすぎてしまいましたね」と香川も悔しさを滲ませた。チームは7位から11位に順位を落とし、ここから再浮上を目ざさなければいけなくなった。
 
 香川にはその起爆剤になってほしいところだが、この日の一挙手一投足を見ても、中盤の低い位置に陣取って攻守のバランスを取ったり、パス出しの起点になる仕事がメイン。特に中島が出てきた後半はアンカー的な役割を担っており、前線に飛び出してゴールに絡むようなシーンは皆無に近かった。

「バランスを取る仕事を求められているのはありますけど、自分は隙を見てペナルティエリアに入っていかなきゃいけないし、それが自分の良さ。今日は物足りなかったですね。

 チーム内の役割があるなかでも存在意義を自分で証明しないといけない。それができていないのは、体力が足りないのか、スピードが足りないのか...。もう1回、自分の中で整理して、次の試合に向けてやっていきたいと思っています」と、本人はシュートゼロに終わった90分間を厳しい表情で振り返っていた。

 彼のイメージとしては、開幕の大阪ダービーで見せたようなゴールシーンが頭の中にあるのだろう。高い位置に上がり、ここ一番で相手に脅威をもたらし、フィニッシュを決められるのが香川の凄みだ。

 ただ、田中というキーマンが不在の今、パパス監督は香川に中盤を安定化させる仕事を担ってほしいと考えている様子。田中が不在だからこそ、コンスタントに試合に出続けられる側面もあるのかもしれないが、本人としては自由自在に動いて攻撃で違いを作れない...。今の香川はそんなジレンマを抱えているのだ。

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 目下、彼自身と対照的な状況にあるのが、同い年の盟友・乾貴士。2022年にC大阪を離れて清水エスパルスへ赴いたテクニシャンは、今季もトップ下やシャドーで数多くのゴールに絡んでいる。間もなく37歳になる選手とは思えないほど異彩を放っているのだ。

「乾は(清水を)彼のチームにしていますからね。それはJ2にいた時からそうだし、自分の実力で勝ち取っている。見ていても、すごく楽しそうにやってますよね。

 自分もどこで存在意義を示すかというのは大きな課題として毎試合に臨んでいるし、チャレンジしていかないといけない。やっぱり言葉じゃなくて、グラウンドで示さなきゃいけないんです。年齢は関係ないし、サッカーに対する情熱や向上心、意欲は落ちてない。それがある限り、本当に成長できると思っています」と、香川は語気を強めていた。

 連戦が続くとキレや一瞬のスピードが低下するなど、フィジカル的には確かに厳しい部分もある。それは30代半ばのプレーヤーの多くが感じているはず。それを長年の経験や磨き上げた感性と戦術眼で補っていくことでしか、理想のパフォーマンスには近づけない。
 
 香川自身もハードルが高いことは承知しているはずだが、理想に向かって挑み続ける貪欲さや勇敢さがこの男の強み。それをゴール、勝利という結果に結び付けられるように、前進を続けていってほしいのだ。

 田中の復帰は6月後半以降と見られるだけに、香川は21日のルヴァンカップ・京都戦を皮切りに、アビスパ福岡、浦和レッズ、清水との2週間の4連戦を乗り切っていかなければいけない。その間に彼なりの手応えを見出し、ジレンマを払拭してくれれば理想的。ゴールに絡む香川真司の姿を心待ちにしている人々は少なくない。

取材・文●元川悦子(フリーライター)