今季から磐田を率いるハッチンソン監督。クラブに新たなフットボールの文化を作っていく使命に燃える。写真:河治良幸

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 ジュビロ磐田はJ2で開幕2試合を終えて2連勝、勝点を6に伸ばしている。水戸ホーリーホックに3−2で競り勝ったホームの開幕戦に続き、2節では同じ“降格組”のサガン鳥栖を相手に、倍井謙の2試合連続ゴールで1−0の勝利を飾ったが、非常に僅差のゲームだった。

 磐田のジョン・ハッチンソン監督も「鳥栖は本当に良いチームで、この結果が彼らのシーズンを表わすわけではない」と前置きしながら「非常に良いセーブと終盤の良いゴールが大きな違いになった。その勝利をチームで手繰り寄せるのは大事だと思います」と、難しい試合展開でも勝点3を取る重要性を強調した。

 昨季は横浜F・マリノスを率いていたハッチンソン監督が掲げる“アタッキング・フットボール”で、今シーズンのJ2優勝とJ1昇格はもちろん、磐田に新たなフットボールの文化を作っていくという使命が指揮官にはある。

 チームの立ち上げから鹿児島キャンプ、そして開幕の2試合を通じて「プレスも良くなってきてますし、より早くボールを奪い返すところも良くなってきてると思います。また、いつ、どのようにトラップを仕掛けて、チームとして相手を追い込んで奪いにいくかというところは良くなっている」と守備面の手応えを強調する一方で、攻撃面で課題があることをハッチンソン監督は認める。

 大きなところで言えば、1つはビルドアップ面、もう1つはファイナルサードでシュートに持ち込むためのクオリティと意識だ。

 前者に関しては、キャンプから継続して取り組んでいるところで、最初はミニゲームなどを見ていても自陣でのパスミスやボールロストが多く、練習試合でも自陣でのミスから失点や大ピンチを招いてしまった。それでもハッチンソン監督やショーン・オントンコーチは逃げずに、前向きにトライすることを働きかけた。

 そうした成果は水戸戦や鳥栖戦でも表われており、自陣でのミスが減っただけでなく、危険な位置で奪われてもすぐ切り替えて、簡単にカウンターを許さない守備のポジションを取れるようになってきている。
 
 現段階では、ポゼッションをいかに、効果的に相手陣内でのチャンス構築に繋げていくか、そして相手のプレッシャーに対して下げすぎることなく、ボールを動かしながら相手コートでの攻撃を増やせるかというところに移ってきている。

 鳥栖戦では4−4−2でコンパクトに構える相手に対して、前半からボールは回すものの、なかなか前進できずにバックパスが目立ち、FWのマテウス・ペイショットやシャドーの佐藤凌我にボールが入らない。

 サイド攻撃もボールサイドに守備を寄せられた状況で、右はジョルディ・クルークスが川口尚紀、左は倍井が松原后のサポートを得ながら、何とか1つ外してクロスに持ち込むのが精一杯だった。

 しかし、後半は鳥栖のプレッシャーが前がかりになるなかで、ボランチの中村駿が右センターバックの江粼巧朗に「俺、空いてるから見てくれ」と要求。中央に起点ができたことで、効果的なサイド攻撃も生まれた。

 鳥栖戦の得点シーンは、相手のディフェンスが高い位置を取ってきた背後を狙って、左センターバックのリカルド・グラッサから出たロングパスを、左の背後で倍井が受けて、ペナ外に出てきたGKの頭上を越えるシュートによるゴールだった。

 水戸戦から2試合連続の得点を決めた倍井は「相手のラインが高いのは前半からずっと感じたので、リカとしっかり目が合って、タイミング良く抜け出せた」と振り返る。

 ただ、そうした狙いは持ちながらも、相手陣内に押し込んだところから、よりチャンスを作ることができれば理想的だ。

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 その意味で、鳥栖戦は61%のボール保持率を記録しながら、シュートを鳥栖の半分である7本しか記録できなかったことが、ハッチンソン監督も明確な課題だと感じているようだ。

 もちろん、シュートチャンスを作るプロセスも重要だが、十分に打てるシチュエーションでパスを選択してしまう傾向を放っておくと、ポゼッションをベースとした攻撃の弊害になりかねない。どれだけボールを持てても、矢印はゴールであるという大前提は変わらない。

「より多くのゴールを決めて、試合に勝つというところは大事なんですけども、枠内シュートの数を重要視していて、ちょっとシュートをためらうシーンが多かったかなと。重要なチャンスを作ったりとか、そのエリアに入っていきながらもパスを選択してしまう。そこはトレーニングで取り組んでいく予定ですけど、アナリストやショーンがフロントサードのところに取り組んでいます」

 そう語るハッチンソン監督は、第3節で迎えるV・ファーレン長崎とのアウェーゲームを「我々にとっても大きなチャレンジになる」と言い切る。優勝&昇格争いの最大のライバルになるとも見られる長崎を相手に、シーズン序盤における磐田の立ち位置や現状が見えてくると指揮官も考えている。

 基本はボールを握りながら、昨シーズンは18得点のマテウス・ジェズスなどJ2では規格外とも言えるタレントを擁して、前線に圧力をかけてくる。そこを押し返しながら、磐田が高い位置の守備やポゼッション、そしてクルークスや倍井の仕掛けを活かしてゴールに迫れるかどうかは鍵だ。
 
 ただし、磐田がうまくリードして終盤に差し掛かっても、「(長崎は)とにかく点が取れる。それも早く、短い時間で取れる」とハッチンソン監督が警戒するように、特にリードされてからの猛攻は破壊的なものがある。

 開幕のロアッソ熊本戦は後半の17分から22分の5分間で、3得点をまとめ取りして3−2で勝利。そして第2節はレノファ山口FCを相手に、アウェーで後半アディショナルタイムに、増山朝陽の劇的なゴールで2−2に追い付いた。

 一方の磐田は水戸戦で3点リードから2失点を喫しており、前節の鳥栖戦も終盤のPKストップや後半アディショナルタイムの2本のビッグセーブなど、キャプテンでもある川島永嗣の大仕事なしに、1−0の勝利はあり得なかった。

 いかに攻守のベースのところで優位に立ちながらリードを奪い、最終的には長崎の圧力に屈することなく試合を終えることができるか。

 開幕3連勝となれば序盤戦で大きなアドバンテージを得ると同時に、チームも確かな自信を得られるはずだが、新たな成長プロセスの初期段階にある磐田にとって、困難なミッションになることは間違いない。

取材・文●河治良幸