(※写真はイメージです/PIXTA)

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令和4年度の文部科学省調査によると、不登校の小中学生は29万9,000人を超えており、その数は過去最高を記録しています。不登校となる原因は一人ひとり異なっており、子どもに「なぜ学校に行かないの?」と尋ねても理由を教えてくれず、問題解決に悪戦苦闘する親も少なくありません。本記事では、ぞう先生の著書『うちの子、脱・三日坊主宣言!』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集し、ぞう先生の実体験から子どもとの向き合い方について考えます。

不登校の理由がわからない

今まで、学校で出会う子どもたちを中心にお話ししてきましたが、ここでは自分の子どもの話をしようと思います。

実は、僕の息子は一度、不登校になったことがあります。息子が小学3年生のときでした。朝、突然「学校に行かない」と言い出したのです。とても驚きました。どうして学校に行きたくないのかを聞いても答えてくれません。仕方なくその日は学校を休ませました。最初はすぐ行くようになるだろうと思っていました。しかし、そうはいきませんでした。そこで、いろいろな手を尽くしました。

・学校に行かない理由を聞き、対策を考える

・学校に行かなくてはならない理由を話す

・みんな学校に行きたくないと思うときがあると共感する

・学校に行かなければ将来大変なことになるとおどす

まず、理由を聞きました。ところが、どう聞いても返事はあいまいです。特定の教科が嫌だと言うのでその教科は受けなくてもいいと言ってもダメでした。いじめや友達関係かと聞いてもそれは違うと答え、担任の先生に聞いても、それはなかったと同じことを言う。学校になぜ行くのか? 学校に行かなければ、将来の選択肢が減るなんて話はまったく通用しません。「お父さんもお母さんも学校に行きたくないときあったわ」と言ったところで、よしっ! じゃあ学校に行く! なんてことにもならず。どれも効果はゼロ。

むしろ、息子の状態はひどくなりました。こちらがアプローチすればするほどひどくなりました。僕たち夫婦は覚悟を決めました。“長期戦”になる、と。すぐに行かせようとせず、違う方法を探ることにしました。

学校に行かなくなり、すぐ夏休みがきたこともあり、良さそうなものを、何でも試しました。一緒に玄関を掃除したり、家に神棚があると良いと言われて設置したり、漢方が効くと言われ飲ませたり、旅行に行ったりしました。旅行では久しぶりに息子の笑顔を見ることができました。これで夏休み明け、行ってくれるかも。そう思っていましたが、行きませんでした。

2学期の途中、息子の小学校で面談をしました。そこで、不登校担当の先生から衝撃の一言を言われます。

「〇〇くんは、簡単なことも一人で決めることができません」

不登校担当の先生と息子が家の周りを散歩中のことでした。道が分かれていて、「どっちに進む?」とたずねたそうですが、それに答えられなかったそうです。散歩の途中、右か左か聞かれて答えられない。ハッキリ言ってどっちでもいいのですが、答えられない。僕はそれを聞いて、はっとしました。

消極的な子ども

「道(レール)を与えすぎた」

・息子が何かできなかったり、困っていたりすると、すぐ手を差し伸べる

・外で息子が近所の人に黙り込むとすぐこっちが答える

・息子が困りそうなことを先回りして教えてしまう

不登校に関しても、こちらから対策を与えるばかり

僕たち夫婦は、息子に自分で考えさせる余地を与えていなかった

「これからは、小さなことからでいいので、自分で考え、行動させるようにしてください」一つの方向性が決まった瞬間でした。今日からは、息子に自分の頭で考えさせよう。しかし、なかなかうまくいきませんでした。頭ではわかっていても、ついつい手を差し伸べてしまうのです。

ある日、担任の先生がやってきました。そして息子にたずねました。「今日は、何をしていたの?」「……。」すると、すかさず2秒くらいで僕が、「宿題やってたやん」と答えてしまいました。そのとき、あっ!と、またやってしまったと、だまっていればいいのに、聞かれているのは息子なのに、ついつい代わりに答えてしまう。意識していてもこれです。

また、別の日、お風呂に入っているときのことです。「明日はどうする?」「……。」2秒くらいでまた僕が、「朝から無理やったら、3時間目からでもいい。体育はある? あったら体育だけでもいい。なんやったら5時間目からでもいいで」すぐ提案。早口でまくしたてる。いかん。これでは、子どもの考える余地がない。だまれ! 口をふさげ! 今までを振り返ると、僕には聞く力が欠けていることがわかってきました。

・すぐ答えを求める

・答えないと別案を出す

僕がやることはただ一つでした。それは、待つこと。息子が答えるのをただ待つ。それだけでした。

そこから徐々に、息子は変わりました。最初は沈黙が長かったのですが、だんだん短くなりました。一番変わったのは、表情がよくなったことです。消極的で、自分では何も決められなかった息子は、その後、自分で学校へ行くことを決め、今では元気に登校しています。消極的なのではなく、僕たちがそうさせていたのです。今は、自分のことや学校での出来事をよく話します。僕は、その話をうんうんと聞くだけです。

僕が息子の不登校の件から学んだことは、たくさんありました。それは普段から子どもの話に耳を傾け、聞くことに徹し、ジャッジしない。また、話だけではなく、行動もそうです。すぐこちらから手を差し伸べない。必ず、自分で考える余地を与える。そして、その判断を受け入れる。親子一緒に学ぶことのできた出来事でした。

【まとめ】

・子どもが決めるまで待つ

・子どもの話はすべて受け入れる

ぞう先生