(写真:PIXTA)

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タッチで改札を通り抜ける「Suica(スイカ)」や「PASMO(パスモ)」などの交通系ICカード。全国の鉄道・バスなどの事業者間で相互利用が拡大しており、“どこでもタッチで乗車ができる”非常に便利な存在だ。しかし、実はその風潮に異変が起こっている。

11月5日、Xでは、バスの運転席の後方に掲示された注意書きの写真が注目を集めた。2024年11月16日(土)から、全国共通交通系ICカードの利用ができなくなるとの内容で、《くまモンのICカードのみご利用いただけます》との記載があった。

実は、熊本県内のバス各社(九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バス)は、全国交通系ICカードによる運賃決済を11月15日で廃止するのだ。2025年3月上旬からは費用負担が約半分のクレジットカードなどを使ったタッチ決済を導入し、切り替えまでの運賃決済は現金または5社が発行している「くまモンのICカード」のみとなる。

市交通局が運営する路面電車・熊本市電についても、2026年の4月から交通系ICカード決済を廃止すると、熊本市の大西一史市長が5月28日の定例会見で明かしている。

SuicaPASMO決済を廃止せざるを得ないまさかの事情

同日の会見で、市民の利便性の低下について問われた熊本市長は、交通事業者のこうした決断は「苦渋の決断であった」といい、次のように事情を明かした。

「更新だけにかかる費用が12億円以上という、非常に高コストなもので、更新コストが異常に高いと言わざるを得ない」

なんと、全国交通系ICカードの決済システムの更新に、5社全体で約12億円の費用が必要になる見込みだと言うのだ。市長によると、12億円あれば新たに導入予定の「3両編成の市電が3編成買えるぐらいの金額」になるといい、経営悪化で運行自体に悪影響を及ぼすリスクを避けるためにはやむを得ないとの判断だという。

とはいえ、モバイル型も含めると全国共通交通系ICカードの利用者は多く、県民だけに止まらず県外からの利用者、さらにはクレジットカードを持っていない学生などにもストレスとなることは否めない。

熊本市長も会見で「12億以上も更新費用だけにかかるということは、一体どういうことなのか。正直に言って、大都市のシステム維持のために、地方にこれだけしわ寄せが来るような状況は、果たしていかがなものかと思っています」と苦言を呈し、今後は全国でも同様の自治体が出てくると指摘。今後は国で利用しやすい環境を整えていく必要があると訴えていた。

熊本県だけでなく、全国の地方自治体が今後直面する可能性のあるこの問題に、Xではさまざまな意見が上がっている。

《全国『どこでも』使えるってのがこの手のカードの売りじゃないんか》
《残念ながら地方の私鉄などでこのような事は広がっていくのではないでしょうか》
《交通系ICカードが時代遅れになりつつある可能性》
《これが日本のアホなところだよな。せっかく全国で使える統一した規格なのに、更新費用をバカ高くして維持できなくするの、完全にアホやろ》