効率的に時間を確保するには?(写真:mits/PIXTA)

社会人にとって時間の使い方はそれこそ最重要の要管理項目だ。

1日24時間、という時間は当然皆同じだが、その24時間の使い方はまさに人それぞれであり、個性の発揮しどころだ。

どのようにして効率的に時間を確保するか

本連載の読者の多くは仕事をもった社会人だと思われるが、仕事をしていれば1日の3分の1くらいは仕事に費やす事になるだろうし、それに通勤時間や睡眠時間といった固定的な時間を考慮するとますます時間はなくなる。

ましてや家族がいて家事や育児も、となるとそれこそ24時間じゃ全然足りない、という事にもなりかねない。


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ではそういった中、今自分に一番必要なのは何か、24時間の時間配分をどうするべきかは、年齢によって変わってくる。

20代や30代前半のビジネスパーソンにとっては、今後ビジネスという競争を乗り越えるために知的インプットをいかに増やすか、が非常に大切であるし、優先順位が高くあるべきだ。

一方で、それ以降のビジネスパーソンにとっては、もちろん知的インプットの時間はビジネスパーソンとして当然大切だが、仕事においてはよりアウトプットに比重を置くべきだし、よいアウトプットを出すためにも睡眠時間の確保を含めた体調管理も重要だし、家族との時間の共有や今後の長い人生を実りあるものにするための趣味や教養のための時間確保も大切になってくる。

言い換えると、30代前半までは優先順位を下げていた、生活維持のための時間と人生のクオリティーを上げるための時間の優先順位を高め、一方で知的インプットのための時間の比重を下げる、という事になろう。

長い人生において、そのようにして最終的にワークライフバランスを取る、という考え方である。

仕事が中途半端だと、最適なバランスにはならない

仕事をしなくても生きていけるという恵まれたヒトはほぼいないだろうし、大半のヒトは仕事とはほぼ一生の付き合いになるだろう。

そう考えると、仕事、つまりワークの部分がいつまで経っても中途半端では人生における最適なバランスなんて考えられないのだ。

仕事が中途半端だといつまで経ってもその部分における効率化を図ることができず、効率化できないから時間を投入するしかいけなくなり、時間を仕事に大量に投入しないといけないから、他の事をする余裕がどんどんなくなり、人生におけるバランスがいつまでも悪い、という状態になってしまう。

だからこそビジネスパーソンとしての修業期間である30代前半まで、頭も柔らかく、体力気力もあるこの時期においては知的インプットを極限まで増やす必要があるのだ。

この年齢における知的インプットが多ければ多いほど、のちに自分が仕事において出せるアウトプットの質も量も増えるというものだ。

将来キャリアにおいて大きくジャンプできるように、仕事における足腰を鍛えるための期間という事だ。

したがって、この年齢のビジネスパーソンとしては、如何に目標達成のための時間を増やすか、が重要になってくる。

言い換えると、そのほかの時間である、生活維持のための時間と人生のクオリティーを上げるための時間をいかに削減できかが勝負であるとも言える。

私自身の例で言うと、この年齢の時には睡眠は「多くて」1日3時間だったし、趣味のための時間なんぞ1カ月にちょっとあればよいほう、という感じであった。

知的インプットの時間を確保し増やす、という事が最重要課題であるわけだから、当然通勤時に電車に乗っている最中や、風呂につかりながらの勉強などは初歩的な事としてやるのは当然だ。

ちなみに今はスマホを使って、という勉強方法が成り立つが、当時はそんな便利なものはなかったので、大きめの参考書は縮小コピーして満員電車においても周りの迷惑にならない範囲の手元で開いて勉強、なんて涙ぐましい工夫をしたりしていたものだ。

その他にも、毎日着る服や食べる物を考える時間を削減するべく基本は同じもの(週5日でランチは立ち食い蕎麦、とか)、エレベーターに乗ればちょっとでも時間を確保するべく目的の階数を押す前に閉じるボタンを押す(もちろんだが後ろからヒトがやってこない事を確認してからだ)、早食い早歩きやダッシュは当然、といった具合だ。

とにかく仕事と仕事につながる知的インプットの時間を1秒でも確保するべく他の時間を極限まで削って、という生活をしていたものだ。

まぁそんな事をしていたからか、今でも平日は同じものをあえて複数持っている。上下黒のユニクロしか着ない、という個性も何もない感じになっているのだが……。

もちろんどこまでやるか、は自分次第で考えればいいのだが、この年齢のビジネスパーソンはやはり知的インプットの時間をいかに増やすか、という事に焦点を当てるべきだし、繰り返しだがその頑張りや工夫はその後の人生を大きく変えると言っても過言ではない。

さて、それ以降の40代50代を含むビジネスパーソンであるが、以降は先ほど述べた通り、仕事においてはインプットよりもアウトプットの質と量を高める、という方向性にもっていくべきであり、その時間の優先順位を引き上げるべきだ。

もちろん知的インプットの時間確保は引き続き重要だ。

しかしそこに時間を大量投入するという事はせず、今まで培ってきた経験やスキルをベースとして、ルーチン的にインプットする、という程度でよいと思う。

時間をかけて包括的に、というよりはピンポイントで的を絞って、という感じだ。

いつか仕事を離れたり、一線を退く時のために

それよりも、年齢とともに健康ケアをより重要視しないといけないし、現実的に体力も衰えてくるから、より長く質のよい睡眠時間の確保とか適度な運動なんかが大切になってくる。

加えてその後の長い人生を、仕事だけではなく人生全体のクオリティーを上げるために趣味の時間を持ったり、さまざまな教養を身に付けるための時間確保が大切になってくる。

だれしもいつかは仕事を離れたり、一線を退く時が来る。

そういった時に備え、それこそ24時間を持て余さないように、早めに趣味や仕事以外で熱中できる何かを見つけておく。

30代前半までは「その後のキャリアに備えての先行投資」として知的インプットを行ってきたが、以降は「その後の人生に備えての先行投資」として、仕事以外へ自分の幅を広げる事にも注力するべきなのだ。

もちろんそういった事を通じて、人間としての深みや幅が広がったり、人間観察力がより鋭くなったり、より大局的な視点で世の中を見られるようになったりと、仕事にとってもプラスの影響が出る事も間違いないだろう。

キャリアと人生、双方ともに長距離走であり、ゴールの見えないものだ。

だからこそ、長期的な視点でもって、今何をするべきか、何を優先するべきかを考え、メリハリのある時間の使い方が大切なのだ。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)