父へ届けるフリーを滑りきった大島光翔が2年ぶりの優勝!快勝の江川マリア、今季のテーマは自分超え【東日本選手権】

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10月25日〜27日に行われたフィギュアスケート・東日本選手権。

男子は大島光翔、女子は江川マリアが優勝した。

この大会を勝ち抜いた選手達は12月21日から大阪・RACTABドームで開催される全日本選手権へ出場することができる。

今回はその切符を手にした選手たちを紹介していく。

父へささげるフリーで大島光翔が優勝

男子は上位5名が全日本へ進出した。

大島光翔が2年ぶり2度目の優勝。

大学ラストイヤーの今季、大島は明治大学主将として“スケート一本道”をテーマにかかげて挑む。

ショートでは、冒頭トリプルアクセルを出来栄え点(GOE)2.24点の加点がつく完璧な出来で成功した。

全てのジャンプを着氷し、ステップでの転倒が悔やまれたものの首位発進する。

続くフリーは、大島のコーチでもある父・淳さんがプロスケーターとして最後のアイスショーで披露したという思い入れのある『デスペラード』を披露した。

トリプルアクセル2本を含む7つのジャンプを全て着氷。演技構成点も唯一の70点台をマークし、“父に届けるプログラム”と気持ちを込めて滑り、2年ぶりの優勝を果たした。

5年連続5回目の全日本出場となる大島。

「自分自身と向き合って、自分の実力を発揮できれば結果がついてくると思うので、本当に集中して自分の力が発揮できれば」

4回転ジャンプの投入にも意欲を見せている大島。そして、制作中だという“KOSHO”タオルの完成も楽しみにしたい。

2位は北村凌大。

シニアデビューの昨季、全日本へ初出場を果たし、オフシーズンには高橋大輔さんが手がけるアイスショー「滑走屋」のメンバーに選出され高橋大輔さんと練習をともにした。

そうした機会もあり、北村は今季のショートには高橋さんが2018年に現役復帰を遂げた際に使用していた曲を選んだ。

そのショートでは、ジャンプを全て着氷させ2位につく。「ここまでの試合で一度も良い演技がなかったが、自分を信じてできた」と振り返った。

迎えたフリーでは、冒頭3回転ルッツのコンビネーションジャンプを完璧に決め、持ち前の伸びやかなスケーティングで滑り切り自己ベストを更新する。

ここまでの試合でコンディションが良くなかったという北村だが、この東日本に照準を合わせ、本領を発揮した。

「ほっとしています」と演技後に語った北村は、2年連続の全日本への切符を勝ち取った。

初出場の去年は、「シーズンの中で一番点数が低かった。なので、去年の失敗を活かして今年は修正できるように頑張りたいです」と目標のショート通過を目指し、挑む。

3位に戸田晴登。

ショート6位から迎えたフリーでは4回転サルコウの大技に挑戦。その大技を今季初着氷させ、そのまま勢いに乗りジャンプを全て着氷する。

フリーのみで3位と巻き返し、夢の全日本初出場となった。

今年大学入学を機に、地元・福岡から上京した戸田は、優勝した大島と同じチームに所属し練習に励んでいる。

全日本出場が決まった瞬間、普段の練習でジャンプのアドバイスをもらっているというチームメイトの大島とともに喜びを分かち合った。

全日本までに「4回転ジャンプを安定させて、チャレンジではなく自分のものにしてできるような練習をしたいです。絶対にフリーに残ります!」と意気込んだ。

4位は今季シニアデビューの山田琉伸。

「全日本の切符を失いたくない」という強いで挑んだ勝負のフリーで、ミスを最小限に抑えた気迫の演技を披露する。

大学2年生の山田は今年7月、全日本出場のため決意の移籍。さらなる高みを目指し、三浦佳生も所属する新横浜プリンスFSCへ移った。

新しく師事を仰ぐ佐藤紀子コーチのもとでしなやかな表現力を強化した。その成果を発揮し、念願の全日本出場の切符をつかんだ。

「全日本ではトリプルアクセルを入れたショートでノーミスで、60点台を絶対に出せるようにして、フリーを滑ることができるように頑張りたい」と強い気持ちで挑む。

5位は菊地竜生。

ショート9位で迎えたフリー。「自分の中でもしっかり下の点数がついてきますし、近くで手直しをいろいろとしてくれるので自分には一番合っているんじゃないかなと思ってお願いしています」

菊池がこう語るように新プログラムの『もののけ姫』は、姉の里菜さんが振り付けを担当。昔からどうしても滑りたかったという思い入れのあるプログラムだ。

本番はトリプルアクセル2本をクリーンに着氷。その勢いに乗りジャンプを全て着氷させ116.51点をマークしフリーで4位に。大逆転で最後の全日本出場枠を勝ち取った。

シニア1年目の今季、初出場となる全日本で「最大限、『もののけ姫』の世界観や、自分の今できる最高のパフォーマンスをしたい」と意気込む。

【シニア男子】
1位 大島 光翔(明治大学)210.69点
2位 北村 凌大(日本大学)178.26点
3位 戸田 晴登(東洋大学)172.52点
4位 山田 琉伸(早稲田大学)171.59点
5位 菊地 竜生(明治大学)169.19点

2位に差をつけ江川マリアが優勝

女子は上位5名が全日本へ進出。

東日本選手権で2度目の優勝を果たした江川マリア。

去年の全日本選手権で11位となり、今シーズンは強化選手として挑む。

ショートでは、冒頭3回転ルッツを完璧に決め、完成度の高い演技を披露し首位発進。

フリーの『トゥーランドット』を壮大な曲に合わせて、伸びやかで美しいスケーティングと質の良いジャンプで観客を魅了した。

去年は優勝を逃し2位だった。涙を流した去年から、2位と20点近く差をつけて圧勝した。

自分との戦いをテーマに挑んだ今大会は、「“自分を超える”ことはまだできていないので、全日本にそこはお預けかな」と振り返った。

「ショートもフリーもどちらも笑顔でしっかり終われるように、去年の自分を超えられるように頑張ります」と話し、3度目の大舞台へ挑む。

2位には三枝知香子が入った。

「去年、全日本選手権に出させていただいて、なかなか自分の進歩を感じることができなくて。もっと強くなりたいと思って、移籍しました」

去年出場した全日本での経験から、MFアカデミーへ移籍し挑む今季。

新たな環境でジャンプの跳び方から見直し、流れのあるジャンプを重点的に練習したという。

ショートでは、水をイメージしたこだわりの衣装で『水百景』を披露。

伸びやかな滑りとノーミス演技で、スピン全てで最高評価のレベル4を獲得し、三枝は3位で折り返した。

フリーでも安定感のあるスケーティングでジャンプもまとめ、ショートとフリーで演技をそろえ3度目の全日本出場権を獲得した。

「うれしさを超えて、次こそは全日本でっていう気持ちです」そう話す三枝の気持ちはすでに全日本へ向かっている。

覚悟の移籍後に挑む大舞台での活躍に期待したい。

3位には平金桐。

昨シーズン、2年間に及ぶケガを乗り越え復帰を遂げた平金。念願の全日本には届かず、1月に現役続行を決意した。

「今年は1年プラスしたことで全然違う緊張感というか、常に全日本を狙っている自分がいて、日々の練習でもすごい緊張感にさいなまれながら過ごしてきました」

ショート5位で挑んだフリーでは、ジャンプを全て着氷し、自身も武器と語るスピン3つで最高評価のレベル4を獲得する。

「演技が終わった瞬間はよしやったぞって思いました」

演技後全日本出場が決まった平金は、全日本への思いをこう語る。

「一年間本当にいろいろな方々に携わっていただいて今の自分があると思う。みなさまにお礼を込めて全日本出られるよって言いたいですし、長らく有名でない私の演技を応援してくださった方には、やっと全日本という舞台に出れるので、そこで見ていただきたい」

念願の夢舞台での彼女の演技に注目だ。

4位は奥野友梨菜。

高校2年生でシニア転向を選択した今季、2度目の全日本出場を勝ち取った。

「高校生でも存在感を出せるように」とショートの曲は『ピンクパンサー』。

スピン全てでレベル4を獲得し、7位につけた。上位5名が全日本出場となる中、迎えたフリーは、ショートに続きスピン3つでレベル4を獲得する。

一押しでぐんぐん伸びるスケーティングと細部の動きまで美しい表現力で、演技構成点はトップに次ぐスコアをマークした。

「今年の目標が全日本選手権に進んで、フリーに進出すること」

見事全日本出場の目標を達成した奥野が次に見据えるのは、前回叶わなかったショート通過だ。シニアで心新たに、全日本の大舞台に挑む。

5位に郄橋舞。

昨季大学進学を機に拠点を関東から東京へ移した。シニア2年目の今季は、強豪集う東京ブロックで6位など好調の中で挑んだ今大会。

ショートでジャンプの転倒が響き、9位と出遅れてしまう。それでもフリーで会心の演技を見せる。ノーミス演技でフリーのみで3位と巻き返し、全日本への切符をつかみ取った。

「一番大事な東日本で100点を超えられて、とっても嬉しくてちょっと涙が出ました」と、大一番で実力を発揮した郄橋。

新フリー『ラヴェンダーの咲く庭で』のみどころはコレオシークエンスのイーグル。初の全日本でも笑顔で滑ると意気込んだ。

今季で引退を表明している吉岡詩果は、ラストの東日本選手権となった。

「自分が想像していた東日本とは大きくかけ離れてしまった演技だった」と振り返った吉岡は、フリーの2本目のジャンプで転倒。その後なんとか立ち上がったもののジャンプを跳ぶことはできなかったが、会場の温かな拍手を後押しに最後まで滑り切った。

リンクを降りた後は自力では歩行できない状態だったが、氷上では最後まで笑顔を絶やさなかった。結果は23位だった。

「夏から少しずつ痛くはなっていたが、それでも練習を続けていた。東日本までは持ってほしいという思いで練習していたが、東日本の前にも全然練習ができなくなっていた。今日も2回転ジャンプは跳ぼうと思ったが、フリップで転んだときに力が入らなくなりジャンプは跳べませんでした」

8月頃から膝の痛みが悪化したという吉岡。関東選手権で5連覇を達成したが、吉岡の足は限界に達していた。

「最後までスケートを楽しむことは忘れずに滑れたと思います」と振り返った。

7歳でスケートを始めた吉岡は、2018年のジュニアグランプリシリーズでは3位に入った実力者だ。

ケガに悩まされることも多かったスケート人生だが、最後まで諦めなかった。「今後もスケートに携わりたい」とスケートへの情熱を絶やさない彼女の今後を応援したい。

【シニア女子】
1位 江川 マリア(明治大学)185.77点
2位 三枝 知香子(日本大学)160.07点
3位 平金 桐(法政大学)150.84点
4位 奥野 友莉菜(駒場学園高校)149.94点
5位 郄橋 舞(法政大学)148.37点