千葉県のリサイクル店強盗致傷事件に関わり、有罪が確定した中桐海知

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「短時間で高収入が得られる」「ホワイト案件」という甘い言葉を信じて、SNSで高額バイト応募したら、いつのまにか特殊詐欺事件、広域強盗事件の実行犯にさせられていた……。
 今年8月以降、いわゆる「闇バイト」による強盗事件が首都圏で相次いでいる。闇バイトに集まる彼らは、なぜいとも簡単に、怪しげな募集文句に騙されて人生を棒に振ってしまうのか?
 それを考える上で、いま再び注目を集めているのは、一連の詐欺・強盗事件「ルフィ事件」である。

 実行犯のうち12人を詳細に取材した『「ルフィ」の子どもたち』(週刊SPA!編集部 特殊詐欺取材班 著)では、彼らの素顔と動機を明らかにしてしている。
 今回は、中桐海知(当時23歳)について見てみよう。現役自衛官だった彼は、なぜ闇バイトに応募してしまったのか?(以下は、『「ルフィ」の子どもたち』から抜粋・再構成したものです)

◆「住所不定、自衛官」逮捕の衝撃

 2022年5月〜2023年1月、「ルフィ」「キム」などと名乗る男たちが指示役として暗躍した、通称「ルフィ事件」。実行役のひとり、中桐海知の場合は、ギャンブルによる借金がきっかけだった。

 2023年1月12日、千葉・大網白里市のリサイクル店で起きた強盗致傷事件に関わったとして、翌日の2023年1月13日、中桐は千葉県警によって逮捕された。中桐は逃走用のレンタカーを用意し、実行犯らを現場に運ぶ運転手役を務めていた。
 事件の翌日、中桐がリサイクルショップ近くに放置したままだったレンタカーを回収するために戻ると、千葉県警の捜査員によって身柄を拘束されたという。当初から犯行を認めていて、8月2日、千葉地裁から懲役3年(求刑同5年)の実刑判決を言い渡されている。

 一方、逮捕時に報道された中桐の肩書きは「住所不定、自衛官」。
 彼はこのとき、三重県津市にある陸上自衛隊久居駐屯地の第33普通科連隊に所属する3等陸曹(3曹)だったのだ。同県松阪市内の高校を卒業した中桐は、一般曹候補生として自衛隊に入隊したとみられる。

ギャンブル借金430万円が上司にバレて所属部隊から脱走

 曹は一般の軍隊における下士官に相当し、3曹は自衛隊では下から4番目だが、努力次第で幹部に昇進する道も開けている。その平均年収は360万円程度というから、20代前半の中桐にとって、経済的にもそれほど悪い条件ではなかったはずだ。
 ところが、中桐は、競艇などのギャンブルにハマり、多額の借金を抱え込むことになる。中桐の裁判では、次のような経緯が明らかになっている。

「検察側の冒頭陳述によると、ギャンブルなどでつくった約430万円の借金が上官に発覚し、中桐被告は2022年11月、無断で自衛隊の所属部隊から脱走。SNSの闇バイトを検索し、「ミツハシ」と名乗る指示役と知り合った。ミツハシは今村(磨人)被告とみられる。」(読売新聞2023年7月26日付。カッコ内は筆者引用)

 そこからの転落は瞬く間だった。2022年12月、「ミツハシ」の指示どおりに高級腕時計を売却することで、約55万円の報酬を手にしたという中桐。それは直前に永田らが広島市の時計販売買取店に押し入り、奪った130点以上の腕時計(2439万円相当)だった。
 ミツハシから、それに続く「仕事」として持ちかけられたのが、リサイクルショップを襲う実行犯たちの運転役だったのだ。自衛隊を抜け出してから、千葉県警に逮捕されるまでわずか49日間の脱走劇だったことになる。

◆「クリスマスに遊ぶマネーがないです」

 裁判では、検察側によって、中桐とミツハシが通話アプリ「テレグラム」を介して行ったやりとりも再現された。そこから、あまりにも無防備に闇バイトに足を踏みこんでいく中桐の姿が浮かびあがる。