「あとは頼む」「ごめん…」 佐野日大のエースが口を“真一文字”に結んだワケ 意外な肩組みに見えた仲間の温かさ
THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム
第77回秋季関東地区高校野球大会は29日、川崎市の等々力球場で準々決勝を行い、佐野日大(栃木)は健大高崎(群馬)に3-10で7回コールド負け。来春の選抜甲子園出場が濃厚となる4強入りを果たせなかった。エース左腕の洲永俊輔投手(2年)は、7回途中まで142球の力投。ピンチをつくって、2番手の和田匠真投手(2年)と交代するシーンで見えたチームスポーツの“醍醐味”に、心が熱くなった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
マウンドで肩を組み合った。3-8と5点差をつけられていた7回無死一、二塁、投手交代を告げた佐野日大の動きに目を奪われた。走者2人が生還すれば、7点差がつきコールド負けに近づく。州永は、グラウンド横にある一塁ブルペンから走ってきた和田にボールを渡した。受け取った和田が州永の肩に優しく手を置くと、応えるように州永も肩に手を回し、グラブで和田の胸をポンと叩いた。
洲永はここまで142球を投げていた。無念の交代にまるで、泣くのを我慢して笑顔を作っているかのように見えた。真一文字に結んだ口元に力が入り、こわばっていたのだ。悔しさが伝わってくる表情が、強く印象に残った。
試合後のベンチ裏には、肩を落とした州永の姿が。涙ぐみながら、肩を組んだ際の心情を明かしてくれた。「自分がエースである以上、あんな場面で交代をしてしまったので……。まず『あとは頼む』という気持ちと『ごめん』という気持ちでした」と、自身への不甲斐なさを口にした。
優しく肩を組む姿とは対照的な硬い表情は、申し訳なさからきていた。大ピンチで見えたエースの責任感と仲間の優しさ。チームスポーツの魅力を感じ、心が熱くなった。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)