なぜ中日・立浪は「3年連続最下位」で終わり、西武・松井は「交流戦前の休養」に至ったのか…今季退任した監督たちの「強烈だった指導」「ヤバすぎる采配」

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シーズン終わりの恒例行事とはいえ、一挙に5人退任となると、なんとも寂しいものがある。さらば名将たちよ!プロ野球をとことん愛する長谷川晶一、村瀬秀信の二人のライターが、その実像と思い出を語りつくす―。

「晒し投げ」の衝撃

長谷川:プロ野球のレギュラーシーズンが終わりましたが、今年は阪神、中日、楽天、オリックス、西武の5球団の監督交代が発表されています(※10月15日現在)。球界を盛り上げた監督たちに敬意を表しながら、彼らの功績や苦悩について振り返りましょう。

最も話題になったのが中日・立浪和義監督ですが、退任はやむなしと言わざるを得ません。'22年に満を持して監督に就任したものの、3年連続最下位という球団ワースト記録を作ってしまいましたから。

村瀬:先に功績を挙げると、観客動員数は伸びているんですよね。'24年の中日の主催試合の動員数は233万人と、16年ぶりに230万人を超えました。落合博満監督の頃よりも好調だった。

長谷川:それだけ立浪監督への期待が高かったぶん、ファンの目は年々厳しくなりました。今年のヤクルトとの開幕カードは2敗1分。私は神宮にこの開幕戦を観に行ったのですが、ドラゴンズファンのヤジはひどかったです。「立浪、辞めろ!」という声が球場に響き、悪い意味での熱気がほとばしっていた。

村瀬:やはり、采配に悪手が目立ちましたよね。

長谷川:象徴的な一手が「晒し投げ」でした。'23年8月25日のDeNA戦で、プロ3年目の近藤(廉)投手を9回に登板させるも、1イニングで打者16人に8安打5四死球となり、10失点。早めに交代すべきだったんですが、立浪監督は懲罰的な意味で投げ続けさせた。本来ならピッチングコーチが止めさせたはず。ただ、監督に対して物言えない環境だったのでしょう。この仕打ちを見て、選手は「失敗するとこんな晒し者にされるのか……」と萎縮したはずです。

選手を指揮する難しさ

村瀬:監督の重要な資質のひとつが、伝達力。つまり、決断の意図が選手に伝わることです。星野仙一監督はそこをちゃんとわかっていて、「この苦難を乗り越えた先に成長があるんだぞ」と陰に陽に選手に伝えていました。ところが立浪監督の采配は、ただ選手に恐怖を与えただけだったように思えます。

もうひとつが京田(陽太)選手の二軍降格です。監督就任早々の'22年5月、DeNA戦の試合中に突然京田に対して「勝負する顔をしていない」と言い放ち、二軍降格させました。「闘志を取り戻せ!」という意味を込めたんでしょうが、結局京田は伸び悩み、その年のオフにDeNAにトレードに出されてしまった。

その京田が、今年の中日とのシーズン最終戦で決勝打を放ち、中日の3年連続最下位が決まった。あれは立浪監督の3年を象徴するシーンでした。監督が京田に降格の意味をしっかり伝えていれば、二軍で調子を取り戻し、中日を支える名選手に育っていたかもしれません。

長谷川:昭和・平成なら厳しい方針も通用したのかもしれませんが。阪神の岡田彰布監督、オリックスの中嶋聡監督も、今が旬の30歳前後の選手を指揮する難しさを話していましたね。

西武ファンの嘆きを聞け

村瀬:立浪監督にはメディアからもファンからも厳しい声が上がりましたが、西武の松井稼頭央監督の休養は同情する点が多々あります。

球団としては西武の一時代を築いた松井に対して敬意を込めての監督要請だったわけですが、球団側が戦力を整備しきれなかった。

長谷川:'23年は5位。2年目の'24年も開幕後に連敗が続き、4月終了時に借金10。心労が募ったのでしょう、5月下旬に休養が発表されました。

村瀬:交流戦の前に休養した監督って、'09年、横浜の大矢明彦監督以来なんです。松井監督は最後、歯を食いしばりすぎて顔の筋肉が固まり、鍼のついたテープを張っていた。あれはいたたまれなかったですよ。

長谷川:やはり、戦力不足に悩まされましたよね。まず就任時に、主力の森友哉がFAでオリックスに出ていった。そして山川穂高が不祥事を起こしシーズンをほぼ欠場、今オフにはFAでソフトバンクへ移籍した。

村瀬:その山川は初凱旋となる西武戦で、大ブーイングのなか史上2人目となる2打席連続満塁弾をベルーナドームのスタンドに叩き込んだ。あれで空気が決まりました。

長谷川:ファンも松井に罪はないと思っているんです。私の友人の西武ファンはやけっぱちでこんなことを言ってました。

「稼頭央に罪があるとすれば、高橋光成の髪を切らせなかったことだ」

それぐらいしか責めるところはないのに、辞めざるを得ないという、悲しい2年間でした。

村瀬:運や縁を味方につけるのも、監督の資質、ということでしょうか。松井には、近い将来再登板のチャンスを与えないといけないと思いますよ。

「週刊現代」2024年10月26日・11月2日合併号より

つづく後編記事『なぜオリックス・中嶋と阪神・岡田は歴史に残る名将になり、楽天・今江は解任されたのか…「チームを日本一にする」監督の“意外な条件”』では、“監督のあり方”“非情とも思える監督人事”などについて、さらに語ります。

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