西田敏行さん(C)日刊ゲンダイ

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【桧山珠美 あれもこれも言わせて】

【追悼】西田敏行さんは情熱の“全身俳優”…後年は病との闘いとの連続、幾度も引退危機に

 先月29日、大山のぶ代が亡くなった。中高年にとってのドラえもんはやはり大山のぶ代で、あの唯一無二の個性あふれる声は今も忘れられない。

 その悲しみも癒えぬうちに、先週17日には西田敏行が急逝。さらに20日、おすぎとピーコのピーコが9月3日に亡くなっていたと公表された。

 テレビが輝いていた時代の人たちがどんどんいなくなる。相次ぐ訃報に一抹の寂しさを感じる今日この頃だ。

 西田は俳優としてはもちろん、ナレーションがまた輪をかけて素晴らしかった。土曜夕方放送「人生の楽園」(テレビ朝日系)。大ヒット曲「もしもピアノが弾けたなら」を歌う時のあの甘い声や少し残る福島なまりから人柄や優しさが伝わってきた。相棒の菊池桃子もアイドル時代と変わらないかわいらしい声で、2人が交互に担当するナレーションには毎週癒やされた。西田の急逝でナレーションはどうなるのか。

 ちなみに、西田と菊池は2代目で、初代はドリフターズのいかりや長介と伊藤蘭だった。いかりやも「踊る大捜査線」の和久さんさながら、出演者に寄り添い包み込むようなナレーションが心地よかった。「今週は何かいいことありましたか。私ね、思うんですよ。人生には楽園が必要だってね」の始まりにはホッとしたものだ。

■後任なら中井貴一堤真一吉田鋼太郎中村雅俊

 後任は誰になるのか。いかりやや西田のような味のある人情系俳優が適役だが、令和の今、そんな俳優がいるかどうか。笑いやユーモアのセンスも必要なだけに難しい。

 すぐに思い浮かんだのは中井貴一。「サラメシ」(NHK)のナレーションを担当。軽やかでテンポもよく、しかも親しみがこもっている。かと思えば、後半「あの人が愛した昼メシ」のコーナーで、故人となった有名人の愛した料理や店とエピソードの紹介では、落ち着いた静かなトーンになる。さすがと思わせるものがある。

 本命は中井として対抗は堤真一。数々のドキュメンタリーを担当し、ナレーションには定評がある。「もふもふモフモフ」(NHK)ではネコやワンコの声も担当し、ユーモア全開、おちゃめな一面を見せていた。

 芝居っ気が強いが、吉田鋼太郎もあり。舞台俳優だけあって滑舌もよく言葉がちゃんとこちらに伝わる。「所さん!事件ですよ」(NHK)の軽快な感じもいい。

 大穴は西田と同世代で宮城出身の中村雅俊。「ふれあい」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を持つ中村の美声はナレーションにも向いている。夕方のニュースでグルメ企画のナレーションをやっていて、とても耳に心地よかった。

 長寿番組はおしなべてナレーションがいい。あだやおろそかにはできないのだ。

(桧山珠美/コラムニスト)