長崎県庁を志望→4年後にドラ1「野球にも頭が必要」 160キロ右腕の“方向転換”
愛工大4年間で急成長、中村優斗が実力で勝ち取った“1位指名”
周囲を期待を上回る進化を遂げた4年間だった。24日に開催された「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で、愛工大・中村優斗投手がヤクルトから1位指名を受けた。指名選手の中では最速での交渉権確定。名前が呼ばれた瞬間、見守ったチームメートからは歓声が沸き起こった。
プロ注目投手に成長した中村だが、高校までは無名の存在だった。長崎・諫早（いさはや）農高では野球部に所属しながら、卒業後は公務員の道に進むことを決めていた。「本気で目指していましたし、諫早農高に進学したのも長崎県庁で働くためでした」と高校生ながら将来を見据えていた。
その道を変えたのが、愛工大・平井光親監督との出会いだ。ロッテでパ・リーグの首位打者を獲得した経験を持つ平井監督は、中村を見た瞬間、「必ず“うえの舞台”でやれると思いました」と振り返る。プロを経験した平井監督からの「愛工大で一緒にプロを目指してみないか」の誘いが、公務員志望だった高校生の心を動かした。
愛工大進学後は、1年春から主戦投手として活躍し、3年春、秋、4年春と3季連続で最多奪三振のタイトルを獲得。3月には侍ジャパンのトップチームに抜擢されると、欧州代表との第2戦に登板し、最速157キロで1回を無失点。4年秋の最終戦では自己最速を更新する160キロを記録し、ドラフト1位でのプロ入りを叶えた。右腕が積み重ねた“結果”に、平井監督も「想像していた以上の成長でした」と舌を巻いた。
右腕の飛躍を後押しした思考「野球だけやっていても意味がない」
平井監督は、プロ注目右腕に飛躍を遂げた中村を「賢い投手」と評価する。「中村のすごいところは、常に目標を立てて、それに向かってトレーニングするところです。結果が出ないときはしっかりと反省しますし、周りの指摘も素直に受け入れています」と、前向きで謙虚な姿勢が4年間での成長を後押しした。
大学入学時に目標にしていた150キロは早々とクリアし、2年秋には155キロを計測。新たな目標に定めた160キロは、4年秋の最終戦でマークした。そして、目標にしていたドラフト1位でのプロ入り。目標を立て、それに向かって計画し実行していく“逆算思考”は、中村のクレバーな一面を感じさせる。
「大学に進学して、野球だけやっていても意味がないと思っていましたし、野球にも頭が必要だと思っているので文武両道は常に心がけてきました」と話す中村は、3年のうちに卒業に必要な単位を取るなど、チームメートも認める優等生。「大学では公務員が頭に浮かぶことはなかったです」と、自身が定めた目標を見据え、鍛錬を重ねていった。
指名後の会見では「プロに入るだけではなく、プロで活躍することが目標なので、そこだけはぶらさずに頑張っていきたいと思います」と意気込みを口にした。人生を大きく変えた愛工大での4年間を胸に、底知れぬポテンシャルを秘めた最速160キロ右腕が憧れだったプロの舞台に乗り込む。（真田一平 / Ippei Sanada）
