「何を言ってもムダなんだ」夫への諦めを抱えた妻が常に思い浮かべる「離婚」の2文字。夫婦関係の行方は

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 3組に1組が離婚しているといわれている現代。離婚原因の1位は、“性格の不一致”という調査結果もある。家族観や金銭感覚、食生活……ひとことで性格の不一致といっても、中身はとても幅広い。

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 一度は愛を誓い合った夫婦も、もともとは他人である。価値観の違いをすり合わせる努力がなければ、だんだんと関係に溝ができていくであろう。この“性格の不一致”をかなりリアルに描いているのが、本作『離婚してもいいですか?』(野原広子/KADOKAWA)だ。

 結婚9年目、主人公の志保は2児の母。夫は中小企業のサラリーマン。見かけはいたって平和な普通の家族。だけど……「離婚」その2文字が浮かばない日はない。

 産後クライシスという言葉があるとおり、産後の夫婦間の温度差や心ない言葉は大きな溝を作りやすい。夜泣きや子どもの熱にも寄り添うことのない夫。そんな生活が続き、「この人に何を言ってもムダなんだ」と志保は諦めた。

 夫の前では本当の私を押しこめる。そんな自分は大嫌い。もう……離婚してもいいですか? その思いに、志保が向き合う姿を描いている。

 本作の魅力は、リアルな感情と日常生活を描いていることだ。不倫夫やDV夫に対する、制裁漫画ではない。よその人から見たら、“いいダンナさん”の夫。毎日ちゃんと働いて借金もなく、浮気するでもない。そう、離婚を決断できるような、わかりやすい「決定打」はないのだ。

「小さな期待が次々とくだけて チクチクとつきささりながら 私の中につもっていく。」志保のなかに小さな出来事が積み重なって、大きな溝になっていく様子をこのセリフが表している。

 離婚に踏みきれなかった志保。しかしある日、「決定打」となる出来事が起きる……ついにそのときがやってきた。彼女が取った選択は? あなたが志保なら、どんな選択をする?

 夫婦のあり方を考えさせられる本作。夫婦関係に悩んでいる人はもちろん、家庭を持つすべての人にぜひ読んでもらいたい1冊だ。

文=ネゴト / いなり