西田敏行さん

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 映画「釣りバカ日誌」シリーズなどに主演し、人間味のあるユニークな演技で親しまれた俳優の西田敏行(にしだ・としゆき)さんが東京都世田谷区の自宅で死去したことが17日、明らかになった。76歳だった。

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 【悼む】1999年7月、「西田敏行さんのお父さん(養父)が亡くなったから、話を聞きに行ってくれ」との指令を会社から受けた。当時、入社して3か月余り。自宅へ行き、チャイムを押した。

 「はい」と答えたのは、聞きなじみのある西田さんの声。その場で「ご愁傷さまです」と言うのが正しいのかも分からないまま「この度は、お父様が…」とインターホンに向かって話すと「ちょっと待ってね」と自ら扉を開けてくれ、玄関に入れてもらった。まだ、気持ちも落ち着かない時だっただろうが、つたない私の質問に沈痛な面持ちながら「父を、息子として誇りに思います」と答えてくれた。

 それから数年後、「釣りバカ日誌」の撮影現場で取材をする機会があり、その時のことを聞いた。なぜ、見も知らぬ記者を玄関にまで入れてくれたのか。西田さんは「父のことを知って来てくれたことは間違いないからね。それに対して、きちんと顔を見て話したかった」。別の映画の現場でも目に入ったのは、エキストラや裏方の人たちにも気さくに話しかける姿。分け隔てなく接することが、誰からも愛される源だった。(高柳 哲人)