ソウルで2005年11月10日、李箱文学賞の授賞式に参加したハン・ガンさん(右)。左は父の韓勝源さん=東亜日報提供

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 今年のノーベル文学賞の受賞が決まった韓国作家ハン・ガンさんの作品を発行する出版社は11日、ハン・ガンさんのコメントを発表した。

 ハン・ガンさんは「受賞の連絡を初めて受けた時には驚き、電話を切るとゆっくりと現実感と感動が感じられた」と振り返った。また「一日中、巨大な波のように温かい祝福が伝わってきたことも私を驚かせた。心から感謝する」と記した。

 一方、出版社は受賞決定に伴うハン・ガンさんの記者会見は行わないことも明らかにした。

 出版社の発表に先立ち、ハン・ガンさんの父で作家の韓勝源(ハンスンウォン)さんが11日、韓国メディアの取材に応じた。韓さんは、ハン・ガンさんが記者会見を開かない方針だと説明。理由について、ハン・ガンさんが「世の中では戦争が激しく、毎日遺体が運ばれていくのに、何の宴会をして楽しく記者会見をするのか」と考えている、と語った。

 韓さんは10日夜に記者から受賞の知らせを聞き、「あまりに突然で戸惑った」という。ハン・ガンさんに記者会見を開くよう勧めたが、ハン・ガンさんはロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでのイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘などを挙げ、「記者会見はしないことにした」と韓さんに伝えた。そのため、韓さんが代わりにメディアの取材に答えることにしたという。

 韓さんはハン・ガンさんの文章の魅力について「とても繊細で美しくて悲しい」と表現したうえで、イギリスの翻訳家をはじめ「韓国語の独特な感覚を表現できる翻訳家」との出会いに恵まれ、各地で翻訳されたことで、受賞につながったと語った。

 また、韓さんは「親孝行な娘だ。青は藍より出でて藍より青し。平均値を少し超えた父を超えることは、立派なことだ」と述べ、娘が受賞した喜びを語った。(ソウル=太田成美)