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5月にも太陽フレアが発生し、それに伴い地球では磁気嵐と呼ばれる現象が起き、日本各地でもオーロラが見られました。きのう9日にも太陽フレアが発生したので、地球で同様の現象が起きるか、期待・危惧されています。

【写真を見る】「太陽フレア」の地球への影響は?専門家が詳しく解説 過去には「大規模な停電」や「低緯度オーロラ」も 

天文学に詳しい山陽学園大学地域マネジメント学部の米田瑞生さんに聞きました。

ー太陽フレアとはどのような現象なのでしょうか。

(米田瑞生さん)
「太陽フレアは『太陽表面での爆発現象』で、X線などで太陽を観測した時に明るく輝いて見える現象です」

「X線は地球の大気を透過できないので、地上からは観測できません。人工衛星が、太陽活動を把握するため、常時X線などで太陽を観測しています」

「太陽フレア」でプラズマが放出され地球を直撃?

ー太陽表面で爆発現象があると、どうなるのですか?

(米田瑞生さん)
「フレアに伴って、太陽のプラズマ(水素のガスが電離して、水素イオンと電子に分かれた状態のもの)が宇宙空間に放出されます。これをCME(コロナ質量放出)と呼びます」

「このCMEのプラズマが地球を直撃したとき、磁気嵐が起きます。磁気嵐が発生すると、地球の周囲には強力な電流が流れます」

「この電流により、オーロラが広い範囲で明るく観測される他、この電流が磁場を作り出します。磁気嵐の規模は、オーロラの他、地上で磁場を計測することでも把握することができます。5月に発生した磁気嵐では、磁場も大きく変化しました」

9日に発生したフレアの地球への影響は?

(米田瑞生さん)
「しかし、太陽フレアがおきれば、必ず磁気嵐が発生するわけではありません。フレアに伴って発生したCMEのプラズマが、地球に衝突するかどうか、これは簡単にはわかりません」

「昨日9日に発生したフレアは、太陽の地球に向いているところに観測されました。ですから、同領域から発生したCMEが地球を直撃するかもしれない、ということで、話題になっています」

「CMEの進路は、簡単には予測できません。宇宙空間の複雑な磁場の形状などに左右されます。これは、発生した台風がどこを通るのか、その進路に私たちがヤキモキするのと同様です。ですから、このような太陽の活動が我々に与える影響を予測することを『宇宙天気予報』と呼んでいます」

「嵐による影響は、あまり良いことはありません。過去には大規模な停電が発生しました。GPSなど衛星を使った位置測定の精度が悪化したり、電波を使った通信に障害が発生することもあります。最近では、スペースX社の人工衛星が、数十機も失われました」

日本でもオーロラが見えるのか

(米田瑞生さん)
「飛鳥時代や江戸時代、磁気嵐発生時には『珍しいことに夜空に赤い光が見えた』といった、オーロラの目撃情報が記録されていますが、電気に依存した現代社会では、生活への影響も警戒する必要があります」

「とはいっても、普段は北極・南極圏でしか見られないオーロラを見たいと思うのが、本音ではないでしょうか。日本で見えるとすれば、北の空にうっすら、赤く見える可能性が高いです。CMEが地球に到達するとすれば、10日夜から2, 3日がチャンスです」

米田瑞生さんプロフィール

2002年4月 - 2006年3月 東北大学理学部宇宙地球物理学科 
2013年6月 - 2017年6月 ハワイ大学天文学研究所客員研究員
2015年4月 - 2017年9月 東北大学大学院理学研究科客員研究者 (博士(理学)) 
2023年4月 - 現在 山陽学園大学地域マネジメント学科 

主に太陽系内外の惑星・衛星の大気・磁気圏について、研究。特に木星の衛星イオの火山活動がどのように変動しているか、その詳細を調査。イオの火山の研究には、東北大学にいたころに、マウイ島にあるハワイ大学の施設内に設置した望遠鏡を使っている。

若い頃には高山病と闘いながら、チリ・アタカマ砂漠にある、東京大学アタカマ天文台での観測研究に従事。また、現職の山陽学園大学では情報関連の教育に従事する一方、特別な場所・施設でなくても、観測できる現象を調査すべく、「晴れの国」のメリットを活かして、低コストで流星を観測する方法を模索中。