ネット掲示板で「ブスまとめ」に取り上げられ…「元SKE48」が明かす、知られざる「オーディション」の裏側

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有名人がSNS上の誹謗中傷に声を上げるケースが増え始めている。例えばプロ野球界では選手会が2023年9月に対策チームを立ち上げ、本格的に誹謗中傷対策に着手しはじめた。事務所が誹謗中傷や殺害予告、ストーカー行為に法的措置をとると発表するなど芸能界でも様々な取り組みがあるものの、対策が追いついているとはいいがたい。

2022年にSKE48を卒業し、タレントとして活動を続けている五十嵐早香さんの連載第5回。18歳の夏、メイド喫茶でバイト中にお客さんから「SKE48のオーディション」を勧められたのをキッカケに、アイドルへの一歩を踏み出した五十嵐さんが直面したのが「誹謗中傷」だった。オーディションの記憶をたどりながら、当時のことを自ら綴ってもらった。

全裸で「決断」

バイト先のメイド喫茶から家に帰り、貰ったCDを眺めながら、その日のことを思い出した。

丁度これからの進路を真剣に考えなければいけなかったので、自分はアイドルになりたいか考えてみた。家に帰り考え、夕飯を食べながら考え、寝る前に考えた次の日だった。

その日はバイトが無く、朝食兼昼食を食べ終わった後のお風呂上がりに突然脳から決断が下った。

洗濯機の前で全裸で髪を拭きながら、「アイドルという職につこう」と決心したのだ。人生において大事な瞬間とは不思議と鮮明に覚えている──。

こんなに覚えているなら決断する前にせめて服ぐらい着ておけばよかったと、思い出す度に後悔している。そこからは驚くほどのスピードで事が進んだ。

ちょうど1週間前に友達と「夢の国」で遊んだ時の写真を使って、オーディションに応募。落ちたとしても色々なオーディションに受けて、なんとかアイドルという職業を手にしようと思っていた。

夏休みが終わり、再びフィリピンでの学校生活が再開したが、頭の中は日本での出来事でいっぱいだった。

学校が始まってから1ヶ月も経たないうちに、合否のメールが来た。学校帰りにドキドキしながら確認すると、書類審査に通過したことが記されていた。

ネットの掲示板で…

喜ぶのも束の間、次の面接審査の予定はすぐだったので急いで飛行機のチケットを買い、学校を休んで再び日本に帰国することにした。二次審査では面接と書いてあったが、実際はルックス審査に近いものだと感じた。

10人くらいが部屋の中に呼ばれ整列した。一人一人1分程の軽い自己紹介をさせてもらった後に、「真っ直ぐ立って」「後ろを向いて」「歯をしっかり見せて」という号令に10人全員で従いあっさり退室した。

来た希望者とはあまりすれ違うことは無かったが、48グループで初めての年齢制限が無いオーディションだったので、中には30代だと言う方も居た。

父と2人で来ていたので、名古屋観光を少ししてすぐにフィリピンへ戻った。そしてまた毎日学校へ通い、授業中もまさに上の空だった。

正直さすがにそろそろ落ちるかと思っていたが、しばらくしてなんと再び合格メールが届いた。そして「SHOWROOM」というアプリで配信をするよう言われた。

任意ではあるが、ここでファンを獲得することによって最終審査の投票に繋がるので、ほとんどの希望者は配信をしてニックネームを使い、顔を晒した。

この時、初めてファンに私達の顔が明かされた。

掲示板には「○○番可愛い」「○○番ダンスうまいらしい」等のコメントが書かれていたが、中にはまだ幼い歳にも関わらず誹謗中傷を既に書かれ始めている受験者もいた。

そして私は掲示板の「ブスまとめ」のようなタイトルで取り上げられており、サイトのメインの写真として配信中のスクリーンショットが使われていた。

幸い当時の私は驚くほどポジティブだったので、「私がブスな訳ないだろ。きっと嫉妬してるんだな!」とあっさり流せていたのは、今の私にとっては羨ましい。それだけフィリピンで得た愛情と幸福は大きかったということだ。

歌唱審査の曲は…

次の審査のメールには、審査当日までに覚えてくるダンスと、歌う曲が記載されていた。プロのダンサーが分かりやすく踊ってくれている練習動画も送られてきた。

この審査に合格すれば、いよいよ最終審査という名のファンからの投票合戦が始まる。つまり最後の審査では、もはや努力だけではどうにもならない。自分で努力できるのはこれで最後、全力を尽くさなければ必ず後悔すると思った。

歌唱審査用の曲は何曲かの中から選ぶことができ、私はAKB48の指原莉乃さんの卒業ソングである「ジワるDAYS」を選曲した。

いよいよ審査当日、泣いても笑ってもここまで来れたことに意味があった、そう念じつつも、やはり受かりたい一心だった。今回は父と母の2人が一緒に日本に来てくれた。

会場の前で「行ってきます」と言う私に、「頑張って!」と小声で言う両親を見て、より一層受かりたい気持ちが強くなった。受験をしたことがない私にとっては、両親から期待される初めてのイベントだった。

第6回に続く…

番号が呼ばれず、泣き出す人も…「元SKE48」が振り返る、オーディション「最終審査」のリアル