衆議院は10月9日、解散し、事実上選挙戦が始まります。総選挙の争点の1つとなる「自民党派閥による裏金事件」のその震源となったのが、名古屋市昭和区などを選挙区とする愛知3区です。

 前職の池田佳隆議員は逮捕され、保釈後も雲隠れを続けていて、自民党からは別の候補者が立候補する予定です。

 選挙が迫るなか、有権者の政治への信頼をどう取り戻すのでしょうか。



■「裏金事件」の震源地 愛知3区に自民党からキャリア官僚が立候補へ




 2024年10月3日、ネクタイ姿で引っ越しの荷ほどきを行う男性。水野良彦さん(51)、次の衆院選で、昭和区などを選挙区とする愛知3区に自民党から立候補を予定しています。

内閣府のキャリア官僚の座を捨て、家族で東京から移り住む決意をしました。




愛知3区に立候補する予定の自民党 水野良彦さん:
「転身先がこういう話だったというのはおそらく(家族に)反対されるだろうなと思って、言い出しづらくて。驚いたと思いますよ」

9月20日に立候補を表明したばかりの水野さん。有権者への「お詫び」から始まる異例の会見でした。

水野さん:
「改めましてこの政治資金問題に関しまして私、3区の支部長になったということは、まずみなまさにお詫びを申し上げなければならない。大変申し訳ございませんでした」



■保釈後も雲隠れ続ける池田前議員に税金から“給料”や“期末手当”も




 岸田総理の退陣の引き金にもなった自民党派閥の「裏金事件」。愛知3区が地盤で、安倍派だった比例東海ブロック選出の池田佳隆前衆議院議員は、およそ4800万円を政治資金収支報告書に記載せず、裏金化していたとして2024年1月、東京地検特捜部に逮捕され、その後起訴されました。




保釈後も国会を欠席し、雲隠れしたままの池田前議員。辞職していないため毎月、給料129万4000円と税金のかからない旧文通費100万円を受け取り、6月には300万円を超える期末手当も。これら全てが国民の税金から支払われています。




愛知3区の有権者の女性:
「脇があまいというちょっとか認識が甘いんじゃないかなっていう。そこが情けないよね」

愛知3区の有権者の男性:
「真相をきちっと説明するという義務があると思いますよね。それをうやむやにして新しい政治ということはあり得ない」

別の愛知3区の有権者の女性:
「逃げるのではなくて、選挙で選ばれた人だから責任をもって説明するべきだと思います。人を変えてそれでいいというわけではないので」



■池田前議員を支えた人や3区の立候補予定者の反応




「雲隠れ」した池田前議員は、いまどこにいるのか、なぜ議員を辞職しなかったのか。




天白区の事務所だった場所を訪れると、ポスターや看板もなくなり、もぬけの殻の状態です。




Q事務所はいつごろなくなりましたか
近くの会社の人:
「ざっくり半年くらい前」

Q挨拶は
「特になかったですね」

周辺にも姿を見せず、挨拶もなく姿を消した池田前議員。

東京の事務所にも問い合わせましたが、スタッフが「マスコミの問い合わせには対応しないよう弁護士から指示があり、お答えできません」と話しました。




これまで池田前議員を支えてきた地元の地方議員にも話を聞きました。

Q池田前議員と連絡はつきますか
緑区選出の中里高之 名古屋市議:
「つかないですね。つかないし連絡もないっていう状態ですね。しっかりと説明責任を果たしながら、誠意を見せるような形で運動していきたい」

天白区選出の須崎幹 愛知県議:
「政治と金について説明責任を果たしながら信頼回復をしながら、街角に立って露出していくしかないと思っています」

池田前議員と選挙区で4度にわたり闘ってきた立憲民主党の前職、近藤昭一衆院議員(66)は、裏金事件への自民党の対応を批判したうえで、今回の事件で国民の政治への信頼感が失われたと話します。




愛知3区選出の立憲民主党 近藤昭一前衆議院議員:
「除名して終わり、きちっとした責任、そうしたことに応えずしてですね、選挙に入っていくっていうのは本当に問題だと思いますね。やっぱり政治というのは、有権者の皆さんが政治家に投票して、ある種、委託をするわけですから、信頼関係がないといけない。 しかしその信頼関係が壊れている」

日本維新の会から立候補予定の新人、皆川雅一さん(43)も、自民党の説明不足を厳しく指摘します。




愛知3区に立候補する予定の日本維新の会 皆川雅一さん :
「直接説明もなく、実際にどういうふうにいま自民党が動いているのか全くわからない。今後選挙になった時に、我々は一体誰に投票すればいいんだと。有権者の皆さんに判断していただくっていうよりは、やっぱり自民党の中で判断をしている」

参政党から立候補予定の杉本純子さん(47)は「何の説明も謝罪もないと政治家への不信感、関心離れがくるのは当たり前だ」と話しています。




愛知3区には政治団体、日本保守党からも立候補予定者がいます。




大橋享さん(59)が立候補を予定しています。



■「まずはお詫びです」精力的に活動する愛知3区の自民候補者




 自民党から立候補する予定の水野さんは10月4日、昭和区の商店街の経営者らとの意見交換会に出席しました。




司会:
「池田さんの後なので、あまりよろしくないんですけど頑張るということで、人となりだけでも知ってもらおうかなということで」

水野さん:
「池田さんの色んな話についてのご意見もたまわれればと思いますが、私としては前向きに、皆さんが思い悩んでいらっしゃることを聞きたいと。ざっくばらんにみなさん、お考えを伝えていただけるとありがたいです」

子育て、経済政策、様々な話が出る中、参加者から水野さんにある注文がありました。

参加者:
「池田さんも別に一生懸命やっていなかったわけではなくて、小石に躓くこと、だけどそれは逮捕という形だから大きい石だったかもしれないけれども、それはそれとして次、自民党の方が水野さんになることによって、それをただ払拭するために出るのではなくて、こう変えたいという意欲をもたれていたらみなさん投票すると思う」

水野さん:
「未来がどんどん、右肩上がりというわけじゃないけど、ある程度予想された幸せな未来が描ける、そういう世界を作りたい」

参加者:
「官僚やめて、東大出て、覚悟してよくやるなと思っていますよ。悪いことできないですよ」

水野さん:
「やったことないから(笑)」

意見交換を終えた水野さんに、話を聞きました。

水野さん:
「池田さんの事件っていうのもあるんでしょうけど、なんとなくうっすらと感じることとしては、政治に対する期待感のなさっていうんですかね、信頼感は当然失われているんだけれど、それ以前のところから、なんかどうせ何もしないよねっていう感じを持っているのかもしれない。ああいう声に応えていくことが少しずつみなさんが『こいつに話をしてやろうかな』って思ってくれるんじゃないかなって思いますね」

最高気温が30度を超えた10月2日には、自ら資料を抱え、団体回りをする水野さんの姿がありました。

水野さん:
「歩いて回っていますね、電車と歩き。歩きはタダですから」

地下鉄を乗り継いで向かったのは、愛知県医師会です。前回選挙で池田前議員を推薦していた県医師連盟に支援を求め、挨拶に訪れました。

自身の経歴や立候補の経緯を伝えた水野さん。1時間ほどの面会を終えましたが、その場で推薦を得ることはできませんでした。




水野さん:
「まずはお詫びですよ。信頼を失ったということに対して、政治を志す者が等しく信頼をどう回復するか、この区(愛知3区)は特にそういう経緯があったので、私が自ら謝らなければならないということです。それがけじめを示すことだし、しっかり信頼回復に向けて頑張っていくということを示せるのかなと」

裏金事件が招いた政治への信頼の失墜、それを取り戻すことができるのも政治しかありません。

2024年10月8日放送