30日、レバノンの首都ベイルートで、イスラエル軍の空爆による被害を調べる警察官ら=AP

写真拡大 (全2枚)

 【カイロ=田尾茂樹】レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、地上侵攻を始めたイスラエル軍に徹底抗戦する構えだ。

 ここ2週間ほどの大規模空爆などで大打撃を受け、劣勢を強いられるが、地の利を生かして反転攻勢を目指す。

 組織ナンバー2のナイム・カセム師は9月30日のテレビ演説で「あらゆる幹部の代わりがいる」と述べ、空爆で多数の幹部が殺害された影響はないと主張した。その上で、「我々の作戦は続く。戦いは長い」と消耗戦もいとわない姿勢を強調した。

 イスラエル軍の猛攻で多くの司令官を失ったヒズボラは、保有しているミサイルとロケット弾の20〜25%を破壊されたとの見方もある。だが、シリア内戦への参戦経験があり、レバノン南部の急峻(きゅうしゅん)な地形を知り尽くした熟練民兵は多数が健在とみられる。地下に築いたトンネル網も生かし、イスラエル軍に大きな打撃を与えたい考えだ。

 イランの支援でレバノン国軍をしのぐとされる強大な組織となり、中東で影響力を拡大してきたヒズボラは、指導者ハッサン・ナスララ師を殺害され、築き上げた威光を失いかねない危機に直面している。様々な宗教と宗派が混在するモザイク国家レバノンでは、キリスト教徒やイスラム教スンニ派の間でヒズボラの減退を歓迎する声もささやかれるといい、これ以上の権威失墜は避けたい状況だ。

 ヒズボラは、全面紛争による壊滅的な被害を避けるため、これまでイスラエルの市街地などには抑制的な攻撃にとどめてきた。今後もこうした姿勢を維持するかどうかは不透明だ。