“美術館で食す”メゾン・ド・ミュゼのアートなフレンチをランチで。アンティークな洋館での美食体験を編集部がレポート

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◆“美術館で食す”メゾン・ド・ミュゼのアートなフレンチをランチで。アンティークな洋館での美食体験を編集部がレポート

青山の閑静な住宅街の一角にたたずむ「メゾン・ド・ミュゼ」は、“美術館で食す”ことがかなう唯一無二のレストラン。アールデコ様式の洋館の中で、アート作品の鑑賞と伝統を踏まえつつ新たな感性を取り入れたフレンチを楽しむことができます。そんな非日常体験を、誕生日や記念日などの特別な日に味わってみませんか? 今回は、オズモール編集部がランチを体験レポート。発見やサプライズにあふれたフレンチをぜひご覧あれ。

◆オズモール編集部が「メゾン・ド・ミュゼ」でフレンチランチを体験

写真上:外観、左下:2階への螺旋階段、右下:メインダイニング
「メゾン・ド・ミュゼ」は、1934年に建てられた渋谷区の有形文化財に指定される歴史ある洋館。入口からはクラシカルでモダンな雰囲気が醸し出され、石造りのアーチをくぐると優美な螺旋階段や美しい石壁やタイル、クラシックな調度品が配された空間が広がります。どこを切り取っても絵になり、写真を撮る手が止まりません!

アールデコの巨匠・エルテの作品を世界一保有している美術館でもあり、館内には約120点以上が展示されています。その貴重なコレクションを目当てに訪れるゲストも多いとか。


写真上:個室「ROMANEE(ロマネ)」、左下:個室「PENSEE(ポンセ)」、右下:個室「CHINON(シノン)」
お食事空間はメインダイニングのほか、さまざまなバリエーションの個室があり「次はあのお部屋でお食事がしたい」と何度でも訪れたくなるほど。写真でご紹介しきれないのが残念なほど、全室趣が違い素敵です。
そんな中で今回案内していただいたのは「PENSEE(ポンセ)」という名の八角形の個室。気品と華やかさに満ちた空間で、非日常的な雰囲気があふれます。

お料理は、フランス料理の伝統をベースにしながら料理長・藤原シェフの独創的な感性を取り入れた季節のコース。ここでしか出会えない美食体験がかないます。
旬の食材を厳選し、日本人の舌に合うように酸味やハーブ、フルーツなどを巧みに組み合わせ、1皿1皿を軽やかに仕上げているのもポイント。
さらに盛り付けにも一工夫。建物の洗練された雰囲気に調和するよう、意識しているのだそう。


まずはシャンパーニュで乾杯。メゾン・ド・ミュゼの地下には広いワインセラーがあり、なかなかお目にかかることのできないヴィンテージワインが収められていて、ワイン好きのライターのテンションが今まで見たことないほどアップしていたのが印象的。

充実しているのはワインだけではありません。フランス産のクラフトビールやカクテル、ワイナリーが作る日本酒などもラインナップ。フレンチにきたけれど1杯目はビールがいい!、そんな希望にも応えてくれます。

また、ノンアルコールにも力を入れているということで、写真右側のノンアルコールワインのほか、ワイングラスでいただくお茶や、オリジナルのモクテルも充実。
ノンアルコールペアリングもオーダーできるので、お酒が苦手な方でもコース料理とのマリアージュを堪能できます。


この日は秋らしい食材を使った6皿のコースをいただきます。メニューは基本的に季節ごとに変わり、その間にも常に進化を続けているそう。同じシーズンに2回以上訪れても、常に新しい発見ができますね。また、昼と夜でメニューが異なるので、それぞれの魅力を味わうのもおすすめ。

まずはアミューズに、「アンチョビを練り込んだクロワッサン」を。
1口目はカリッした食感とともに、バターの風味と香ばしい味わいが口いっぱいに広がります。厚みのあるシャンパーニュとの相性も抜群。2口目には中心に忍ばせたアンチョビの濃厚な旨味と塩気がやってきて、クロワッサンとの風味と溶け合い、食欲を刺激するハーモニーが嬉しい。


続いては、かわいらしい前菜3種。

右は、リヨン地方の郷土料理「セルヴェル・ド・カニュ(=絹織り職人の脳みそ)」。フロマージュブランにハーブを加えたメニューです。丸めたフィアンティーヌ(薄いクレープ)に絞りこんであるので、サクサクのうちにどうぞ。
上のレモンコンフィチュールのおかげで爽やかな酸味が最後に抜けていきます。

真ん中は「ゴルゴンゴーラチーズのあたたかいフラン」。穏やかな味わいのブルーチーズが、上にのったりんごのコンポートとオレンジの花のはちみつの優しい甘みと相まって素晴らしいバランスです。ちょこんと乗ったセージも効いていて、清涼感のあるラストに。

左は、焼きなすのペーストと練りごまの「ババガヌーシュ」。アラブの料理だけど、フランスでもポピュラーなのだそう。焼きなすのほんのり香ばしい旨味とクミン、ごまのクリーミーな後味で、エキゾチックな雰囲気が漂います。ザクロゼリーの酸味もアクセント。

3種それぞれに違った旨味を感じられて、前菜だけでワインがぐんぐん進んでしまいます!


パンはレストランのパン職人による焼きたてをご用意。バターはA.O.Cと言われるフランス政府からの認証を受けたもので、「たっぷりつけてお召し上がりください」と藤原シェフ。
まずはシンプルなライ麦パンを温かいうちにいただきます。朝ごはんにあると幸せになりそうな優しい味わいで、料理を引き立てる名脇役ぶり。
この日はほかに、バジルを練り込んだライ麦パンとシンプルなバゲットもいただけました。いろいろな種類を味わえるのって嬉しいですよね。


秋らしい色合いの1皿は、「カボチャの冷たいスープとブラッドオレンジのジュレ。エビのポッシェと共に」。
カボチャのスープをすくうと、鮮やかなオレンジ色のジュレが。意外な組み合わせですが、秋の訪れを感じさせるカボチャのまったりとした優しい甘みに、残暑を吹き飛ばすブラッドオレンジのジュレの酸味が調和していて、全体として軽やかなスープに仕上がっていて驚きました。

注目ポイントはエビ。「いろいろなエビで試した結果、天使エビというニューカレドニアで自然に近い形で養殖されたものをセレクトしました。食感が良くて味わい深いんです。それをハーブティーで茹でておいしい香りをまとわせています」と藤原シェフ。
プリプリとした食感と、エビの甘みがおいしく、そのうえカボチャやオレンジとも見事に一体化しています。

スープを円で囲んでいるのはクルトンとエビ油。クルトンは自家製エビ油で揚げられており、細部までこだわりが光ります。この満足度の高いスープは、ぜひ味わっていただきたい1皿です。
パンとももちろん好相性。


続いては魚料理の「サーモンのポワレ マトロート仕立て」。マトロートとは、ロワール地方の家庭料理で、川魚をワインで煮込んだ料理のこと。
付け合わせにはベーコンが使われることが多いのですが、今回はなんと燻製にしたウナギが添えられています。魚料理に魚の付け合わせとは、珍しい組み合わせではないでしょうか。

信州サーモンは肉厚で上品な味わい。パリッと焼き上げられた皮目をソースに絡めていただくと、思わず笑みがこぼれるほどのおいしさです。あっさりした部分から脂質が多い部分まで網羅している大振りな身なので、1皿で味わいの変化を楽しめるのも魅力。ウナギからは燻製の香りがふわりと漂い、食欲をそそります。

赤ワインのソースは優しいコクで、酸味を調整することで軽やかな味わいに。ソース用のワインのセレクトにもこだわりがあり、この料理ではラングドック地方のシラーを使い、深みを表現しているのだそう。


メインディッシュのお肉は、「ミスジのロティ 小さなクロジフレット添え」。牛肉はその時にベストな状態のものを仕入れ、産地や部位は日によって変わることも。
ナイフでスーッと切れるお肉は、きめ細やかで上品な脂の甘みが広がります。牛肉のお出汁を詰めたソースが、ミスジの味わいをより深めてくれます。

付け合わせのクロジフレットとは、サヴォワ地方のグラタンのような郷土料理です。そば粉のサブレを土台に、玉ねぎやじゃがいも、ルブロション(ウォッシュチーズ)が層になっています。
上品なミルクの味にウォッシュチーズらしいコクのあるルブロションが、素朴な味わいのサブレや野菜と絡み合い、ミスジにも引けを取らない存在感!
カリカリに焼かれたベーコンの塩気と、パセリの爽やかな香りで、さらに味わいに奥行きを感じました。