ウォルマート 、Amazonに対抗するためオンライン事業を強化中。美容分野と中古品分野を続々拡充
記事のポイント
ウォルマートはAmazon式戦略でプレミアムビューティ商品を拡充。
中古品販売拡大を目指し、既存の中古販売カテゴリー・ウォルマートリストアードも強化。
ロジスティクス強化にもより注力し、競争力を高め、成長を加速している。
ウォルマートはAmazon式戦略でプレミアムビューティ商品を拡充。
中古品販売拡大を目指し、既存の中古販売カテゴリー・ウォルマートリストアードも強化。
ロジスティクス強化にもより注力し、競争力を高め、成長を加速している。
ウォルマート(Walmart)は、急成長中のサードパーティマーケットプレイスを強化して競合他社から市場シェアを奪うために、Amazon式の戦略を採用している。
そのなかには、ビーチウェイバー(Beachwaver)やT3などの20ブランドのラインナップをはじめとする、プレミアムビューティ(Premium Beauty)の自社マーケットプレイスへの導入がある。これは、ウォルマートが美容分野における優位性をライバルのAmazonから死守する試みの表れといえる。Amazonが数々の高級ブランドを自社プラットフォームに取り込んでいるからだ。
また、中古の電子機器や小型家電を販売するウォルマートリストアード(Walmart Restored)の強化版であるリソールド アット ウォルマート(Resold at Walmart)を立ち上げ、中古品・コレクターズアイテムカテゴリーを拡大している。ウォルマートによると、中古品の品揃えには現在、幅広いカテゴリーにわたる1700以上の販売者からの500万点の商品が揃っているという。
Amazonを追いかける
これは、ウォルマートが小売店の規模を超えて成長し、Amazonと競合できるeコマースの巨大企業になることを目指してサードパーティのマーケットプレイスに賭けていることを示す最新の兆しである。ブルームバーグ(Bloomberg)によると、ウォルマートはeコマース事業が今後2年以内に黒字化すると予想しているといい、その目標に近づいている。
同社のグローバルeコマースの売上高は2023年に初めて1000億ドル(約15兆円)を超えた。これによりウォルマートがAmazonに追いつきつつあることが示されているが、巨大なeコマース企業であるAmazonの昨年のオンライン事業の純売上高は、2310億ドル(約34兆円)以上である。
ウォルマート・マーケットプレイスのカテゴリー担当バイスプレジデントであるマイケル・モッサー氏は、「ウォルマートの新しい品揃えは消費者の需要を反映しており、さらなる成長を促進するものだ」と、あるインタビューで語っている。ウォルマートの全米における実店舗の大規模なリテールフットプリントは、競争が激化するeコマース環境において同社のマーケットプレイスが「ユニークな位置付けにあることも意味する」と同氏は付け加えた。
また、モッサー氏は「ウォルマートの店舗やオンラインで買い物をする顧客は週に2億5500万人を超えているため、販売者にとって有意義なビジネスを生み出す機会を提供できる」と言い添えた。
ロジスティクスとフルフィルメントの機能強化
アーカンソー州ベントンビルに本拠を置くウォルマートは、ロジスティクスとフルフィルメントの機能の強化にも引き続き取り組んでいる。たとえば、ウォルマート・ローカルファインズ(Walmart LocalFinds)では、加盟業者の実店舗から直接集荷・配達することが可能になる予定だ。
また、ウォルマートによると、販売者はウォルマートのサプライチェーンを活用して(販売者の)eコマースサイトからの注文にも対応できるようになり、この機能はホリデーのショッピングシーズンに合わせて開始されるという。ウォルマートのサプライチェーンのおかげで、現在ではアジアから全米のウォルマートの倉庫への商品の直接輸送も処理できるようになっている。
さらに、ウォルマートは販売者向けの特典をいくつか発表した。販売者がホリデー向け在庫を9月30日までにウォルマートの保管施設に搬入すれば、繁忙期の保管手数料を免除することが2年連続で発表されたのだ。(それとは対照的に、Amazonは8月初めに繁忙期のホリデーのフルフィルメント手数料を発表。ただし、ウォルマート同様、保管超過料金は廃止されている)。
ウォルマートはeコマース事業がここ数四半期で急速な成長を遂げていることを受けて、こうした諸々のアップデートを行った。第2四半期決算では、オンライン売上が全世界で21%、米国で22%増加したと報告。一方で、競合のAmazonではマーケットプレイスの成長が鈍化しており、オンラインストア部門は直近の四半期で前年比5%の成長にとどまっている。
Amazonの戦略を踏襲するウォルマート
ウォルマート・マーケットプレイスは、同社のオンライン売上の全体的な成長の主要な推進力となっており、過去4四半期の各四半期で売上が30%以上増加したという。また、同社によると、Walmart.comに出品する販売者数は昨年度に20%増加したようだ。この成長は同社のセラーサミットの参加者数の多さに反映されており、「販売者数は昨年の3倍以上だった」とモッサー氏はモダンリテールに語った。
イーマーケター(eMarketer)のリテールアナリストであるスカイ・カナベス氏は、次のように述べる。「ウォルマートは買い物客、とくにウォルマートプラス(Walmart+)会員にマーケットプレイスでの購入を引き続き奨励するために、マーケットプレイスの価値をさらに高めることを目指している。それにより、さらに多くのブランドや販売者を惹きつけることができる。同社は、成功を収めるマーケットプレイスを構築するためのAmazonの戦略をまさしく踏襲している」。
ウォルマートのプレミアムビューティの立ち上げを例に考えてみよう。クリニーク(Clinique)、キールズ(Kiehl’s)、トゥー フェイスド(Too Faced)などの高級美容ブランドがここ数カ月でAmazonと契約を結んだことは、以前モダンリテールで報じた。注目すべきなのは、高級ブランドはかつてAmazonに対して偏見を持っており、それゆえにAmazonを避けていたことである。高級ブランドのAmazonへの参入というこの大変化は、ウォルマートにとって代償を伴うものだ。
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)によると、ウォルマートは現在米国最大の美容品小売店であるにもかかわらず、2025年までにAmazonにその座を奪われると予想されている。また、イーマーケター(eMarketer)によると、美容品の消費者はウォルマートのほぼ2倍の割合で、オンライン購入をAmazonでしているという。
グローバルデータ(GlobalDat)のリテールアナリストであるニール・サンダース氏は、ウォルマートがオンラインプラットフォームへの投資を継続するにつれ、「オンラインで規模を拡大したいブランドにとってウォルマート・マーケットプレイスはいっそう現実的な選択肢になる」と述べ、こう続ける。
「Amazon同様、ウォルマートが素晴らしい販売原動力であることは否定できない。ウォルマートにはトラフィックがあり、コンバージョン率があり、人々を惹きつけるブランド名がある」。
eBayにも狙いを定める
前述したとおり、ウォルマートはAmazonのeコマース戦略をもうひとつ踏襲している。それは、1700以上の販売者による500万点の商品を取り揃えた再販事業のリソールド アット ウォルマートの強化だ。なお、Amazonは8月初め、オンライン再販マーケットプレイスの名称をアマゾンウェアハウス(Amazon Warehouse)からアマゾンリセール(Amazon Resale)に変更すると発表している。
また、カナベス氏はウォルマートがコレクターズアイテムのトレーディングカードの品揃え拡大に注力している例を挙げ、「ウォルマートがライバルのeBayにも狙いを定めていることを示唆している」と語る。
実際、eBayはニッチなカテゴリーに注力しているため、AmazonやウォルマートやTemu(テム)との激しい競争に対応することができている。eBayは第2四半期中に、コレクターズアイテムやリファービッシュ品などのカテゴリーにおける好調な業績もあり、20億ドル(約2924億円)を超える収益を報告した。
eコマースの競争が激化の一途をたどる現在、ウォルマートはAmazonと同様に、顧客に膨大な種類の商品を提供することを目指している。コンサルティング会社のカーニー(Kearney)で消費者プラクティスのパートナーを務めるウェイド・ジュブリー氏は、「ウォルマートがeコマース事業を成長させるために経験豊富な競合他社らを参考にするのは必然だ」と述べる。
「マーケットプレイスの関連性を維持するには、フレッシュで関連性の高いコンテンツと製品が不可欠だ。コンテンツが古くなるが否や、消費者は関与をやめて、すぐに利用できるほかの数々のオプションのいずれかに移行するからだ」とジュブリー氏は言う。
つまり、サンダース氏が言うように、「Amazonもウォルマートも成長のある分野に向かっている。そうしない理由はないだろう」ということなのだ。
[原文:Walmart beefs up its third-party marketplace to further take on Amazon]
Allison Smith(翻訳:ぬえよしこ、編集:島田涼平)