臓器移植の成功率を上げるために「臓器を冷凍保存する技術」の研究が進んでいます。新たに、カリフォルニア大学の研究チームが「冷凍保存した臓器を急速かつ安全に解凍する方法」を発表しました。

Magnetic-Nanorod-Mediated Nanowarming with Uniform and Rate-Regulated Heating | Nano Letters

https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.nanolett.4c03081



Scientists use magnetic nanotech to safely rewarm frozen tissues for transplant

https://phys.org/news/2024-09-scientists-magnetic-nanotech-safely-rewarm.html

一般的に、臓器移植に用いられる臓器は冷蔵保存されますが、冷蔵保存には「保存可能期間が非常に短い」という欠点が存在しており、適切なタイミングで適切な臓器を入手できないという問題が存在しています。この問題を解決するために臓器を冷凍保存する技術の研究開発が進んでいます。

臓器を冷凍保存する際に大きな問題になるのが「解凍時に組織が壊れる」という点です。このため、冷凍技術だけでなく、組織を破壊しない解凍技術の開発も求められています。

新たに、カリフォルニア大学の研究チームは磁性ナノ粒子を用いて冷凍臓器を急速かつ安全に解凍する技術を開発しました。磁性ナノ粒子は簡単に言うと「非常に小型の棒磁石」で、交流磁場にさらされると発熱するという特徴を持っています。

磁性ナノ粒子を用いることでマイナス50度ので保存した冷凍臓器を急速に解凍可能です。ただし、この方法には「磁性ナノ粒子が不均一に分布していると、磁性ナノ粒子の密度が大きい場所で過加熱が発生する」という問題を抱えています。研究チームはこの問題を解決するべく「最初に磁性ナノ粒子を交流磁場にさらして融点まで温度を高め、温度が融点付近に達したら静磁場にさらして磁性ナノ粒子を整列させて過加熱を抑制する」という手法を採用しました。



磁性ナノ粒子を用いた解凍法はすでに「培養したヒトの皮膚線維芽細胞」や「ブタの頸動脈」でのテストに成功しているとのこと。研究チームは開発した技術が臓器の長期保存に役立つと述べています。