宝塚大劇場

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 宝塚歌劇団に持ち上がった、上級生からのイジメによる団員の自殺から1年。そろそろほとぼりが冷めたと判断したか、歌劇団はさり気なくメディアへの“意趣返し”を始めたという。

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“イジメ加害者”全員が舞台に

 詳細の前にこれまでの経緯を振り返ると、当時25歳だった宙組メンバーの死は陰湿なイジメやパワーハラスメントに加えて、過密なスケジュールによる過重労働が理由とされた。

 担当記者が解説する。

宝塚歌劇団の対応は、当初から二転三転。ようやく今年3月に上級生によるイジメの存在を認めました。加害者らは遺族に謝罪文を提出しましたが、歌劇団の村上浩爾理事長は7月末の会見で“いまのメンバーで、きっちりと前に進めていくことが大事”と発言。イジメを行った上級生の処分は見送られました」

宝塚大劇場

 6月には昨年10月からストップしていた宙組の公演が再開。芝居がなくショーのみの変則形態だったが、

「イジメの当事者だった上級生は全員が出演しました。日数こそ通常公演より短縮されましたが、それでも宝塚大劇場と東京宝塚劇場は共に大入り満員でした」

記者の選別が行われていた

 さて、かくして“平常運転”に乗り出した歌劇団は、その裏で記者の選別をしていた。事情を知る歌劇団関係者が声を潜めて言う。

「長年、公演に招待してきた演劇評論家や演劇記者のうち、10人以上とのお付き合いを取りやめたんです。ほとんどはベテランで、特定の媒体に所属しないフリーの記者ばかり。突然の判断の背景には、先の問題を巡る報道があったようです」

 何が起きているのか――。

「発足以来、歌劇団とマスコミは良好な関係を築いてきました。公演に好意的な記事やコラムが新聞や雑誌に掲載されれば歌劇団は集客効果が期待できます。一方、メディアもトップスターの肉声や動静記事を、売り上げに直結すると重宝してきましたから」

 両者は“ウィン・ウィンの関係”にあったそうだが、

「昨年9月に起きた団員の自殺をはじめとする一連の不祥事に、いつもは歌劇団に好意的な評論家や記者たちも、過重労働や悪質なパワハラを見過ごしてきた歌劇団の体制を批判する記事を書いたり、コメントを発した。歌劇団内部でも、とくに上層部は、それが気に入らなかったようです」

 結果、歌劇団はヘソを曲げ、急きょ“お付き合いの見直し”を決めたというのだ。

大御所評論家まで“排除”

 先の担当記者が解説する。

「中には歌劇団の取材歴が46年に達し、ヅカファンとしても半世紀以上、彼らを見守ってきた、全国紙OBの大御所的な評論家も含まれていました」

 この人物が歌劇団の不興を買ったのも、とある新聞に寄せたコメントが原因とみられているという。

「歌劇団では、昨年頭にも宙組の前トップスターのパワハラ疑惑が週刊誌などで報じられていた。大御所評論家はこの点に触れ、“歌劇団はこの時点で対応すべきだった。すべてが後手後手だ”と批判した。その上で“近年は少し厳しめの劇評を書くと劇団から圧力を感じるなど、辛口の指摘がしづらい雰囲気があった”と、自身の心情も吐露しつつ、歌劇団に徹底的な調査を求めていたのです」

 まさしく正論。長年にわたって歌劇団を見つめ続けてきたからこその“愛ある叱責”といえそうだが、

「複数の歌劇団関係者から、幹部たちが激怒して招待状の送付を中止したと聞きました。本当なら、歌劇団は死者を出した騒動から何も学んでいないことになる」

 歌劇団に見解を尋ねると、

「公演の紹介や批評などを広く発信していただくことが招待の目的ですので、数年にわたり、その実績がないと見受けられる方々へは、都度ご招待を見直し」ていると説明。更に、記事の内容で招待の可否を判断していないと回答した。

「週刊新潮」2024年9月12日号 掲載