約130万円! 「軽自動車」だけど「外車」!? 斬新「“2人乗り”仕様」なコンパクトモデルとは
輸入車の「軽自動車」?
税金、有料道路の料金、任意保険料などが安くメリットが多い軽自動車。近年では高級化・装備の充実・高額化が進み、安価の印象は薄くなりましたが、かつては車両購入価格でも大きなアドバンテージがありました。
ところで、世界中には軽自動車と似たような大きさ・車格のコンパクトカーがたくさん存在しますが、輸入車の軽自動車はほとんど見られません。
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なぜなら、軽自動車が「日本の独自規格」であるためです。車体の大きさ・エンジンの排気量上限が決められており、現在では、全長3.4m・全幅1.47m・全高2m、排気量660cc以下と定められています。
車体は規格内だけど全幅がオーバー、車体は規格内だけど排気量がオーバー、などのクルマは、当然軽自動車として登録ができません。
また、輸入車は日本への航送費や、日本仕様に合わせる改良などのコストが上乗せされてしまい、軽自動車の魅力である低価格の実現が難しい、という側面もあります。
しかしそんな中でも、軽自動車登録を可能とした輸入車はわずかながら実在します。そのひとつが、スマート「K」です。
スマートは、当初は「MCC」というメーカーのブランドでした。MCCとはMicro Compact Carの略。
ファッション性が高い時計で人気を博したスイスの「スウォッチ」と「メルセデス・ベンツ」の合弁企業で、スウォッチが発案した「2シーターのマイクロカーを作りたい」という構想を、メルセデス・ベンツのエンジニアリングで実現することを目的としました。
そして1998年、スマートとしての第1号となる「クーペ」を欧州で発売しました。
全長はわずか2.5mしかなく、卵型の車体のほとんどを大きなドアが占めるようなスタイルが特徴。メルセデス・ベンツが開発したボディは堅牢で、極めて小さなクルマながらも、安全性は同社の中型モデル「Eクラス」に匹敵すると謳われていました。
2トーン・カラーの外装色にも意味がありました。シルバーの部位は「トリディオンセーフティセル」と呼ばれる強固な骨格で、衝突時や横転時に乗員を守る役目を果たします。ボディパネルはFRP製で、骨格以外をそれで覆っていました。
内装も斬新です。従来のクルマの概念を覆すようなポップなデザインでまとめられており、チープになりがちな多くの小型車と一線を画していました。
1998年には日本でも並行輸入がスタートし、2000年からダイムラー・クライスラー日本が正規モデルを発売。しかし同年、パートナーだったスウォッチが撤退。それを受け2002年に社名を「スマート」に変更しています。
そんな渦中の2001年。スマートは、日本の軽自動車規格に収まる「K」を発売して大きな話題を呼びました。
スマートクーペのエンジンにはもともと600cc版が存在しており、全長も規格をクリアしていました。しかし全幅がわずかに超過していたため、軽自動車として販売できなかったのです。
そこでスマートは、フェンダーを削って細いタイヤを選ぶことで全幅を1.47m以下に収めることに成功。装備も簡略化して価格を抑え、輸入車としては破格の約130万円で販売しました。
2003年にはマイナーチェンジを実施。ヘッドライトが涙目型に変更されたほか、燃料タンク容量を22リッターから33リッターに増やすなど、各部に改良が行われました。
個性的な軽自動車だったスマートKでしたが、日本市場では2人乗りが敬遠される傾向もあるためか、2004年に販売を終了してしまいました。
なお初代スマートクーペは同年、車名を「フォーツー」に変えたのち、2007年に2代目、2015年には3代目へとフルモデルチェンジを実施するも、2024年春に生産を終了しています。
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2024年現在、イギリスのスポーツカーメーカー・ケータハムが、スズキのエンジンやパーツを用い全幅を削って生み出した「セブン170」が、軽自動車として販売されています。
過去には、1999年頃から少数が並行輸入された「フィアット126」も、軽自動車として登録することが可能でした。
このように、なかなか実現しない「軽自動車の輸入車」ですが、今後どのようなモデルが登場するのか楽しみに待ちたいと思います。