昨今、心配される震災や夏の水害。だれもが災害に向けて日頃からの備えを意識するようになりました。高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしている、美術エッセイストの小笠原洋子さんは、「高齢者のひとり暮らしだからこそ備えは十分にしておきたい」と語ります。どのように備えているのか教えてもらいました。

家具が転倒しないか家のなかをしっかり確認

先日大きな地震がありましたね。ひとり暮らしだからこそ、大地震への備えや日頃の防災対策を、今こそ徹底しておきたいと思います。

【写真】小笠原さんの防災グッズ

まず、家具が転倒や移動しないよう、転倒防止用伸縮棒や、家具の下に入れて踏ん張る板や、転倒防止マットなどをチェック。とくに寝室には注意を払って、頭にタンスの引き出しなどが落下してこないように再確認しました。

棚からもものがどんどん落ちてきたり、家具が倒れたりすれば、どうしても外へ飛び出したくなる気持ちも起こるでしょうが、危険なことです。でも外への出口が開かなくならないよう、注意することも必要です。恐怖の最中一挙に、様々な即決や行動が求められるので、とにかく落ち着きと冷静さが大事ですね。

そんな私は「ひとり防災訓練」を時々試みています。たとえば、玄関扉がゆがんで開かなくならないようにするため、玄関の隅に小さな箱を用意しました。大きな揺れがきたら扉を少しあけて、その箱を差し入れようと思っています。

持ち出し袋に入っているものを確認

次に、すでに準備してある非常持ち出し袋の中を調べてみることにしました。そして避難すべきとき、すぐに動きが取りやすいような場所に置き直しました。でも、動きをとるため、入れるものはなるべく少なくするように配慮しました。そもそも、非常持出しと書かれた企画サイズのリュックは、詰められるだけ詰めると高齢の私には重過ぎて、とても背負っては逃げられないと気づいたのです。

よく言われているのが、リュックではなく「防災ベスト」。ポケットが多めについた、軽くて上質な素材を見つけましたが、一万円ほどして年金暮らしの私には高額過ぎましたので、これに代わる、薄手で大きなポケットが内側にもついたブルゾンを、持ち服の中から見つけて、それに最低限度の防災グッズ入れにすることにしました。

入れた物は、タオル、ヘッドライト、レインコート、給水袋、ゼリー飲料と固形食を一個ずつ、常備薬と携帯トイレです。このブルゾンを着てから、普段持ち歩いているショルダーバッグを下げれば準備万端です。ショルダーバッグには現金(1000円札と小銭が必要です)や、携帯電話ほか、普段入れて持ち歩いている小物一式が入っています。あれもこれもと思いますが、何度も考えて必要最低限のものを選びました。

住む地域の避難場所を確認

さらに自宅のある地域を、ハザードマップで検証したうえで、避難場所と非難経路を調べました。近隣区域地図に印もつけました。

そして買い物帰りに、荷物を持ったまま、避難所の小学校まで行ってみました。案外遠いと感じましたが、災害の最中、初めて避難を体験するよりは、とくにひとり暮らしで、多くをひとりで判断しなければならない私にとっては、行って確認してよかったと思っています。

日頃からのローリングストックも徹底しています

なお地震の後の生活にも困らないよう、5日分ほどの水やトイレ対策など備蓄品を確保してあります。ちょっと不足しているなと思った食品は、なるべく早めに補っておきます。備蓄した非常食の、消費期限を過ぎていないか、たびたび確かめるクセをつけています。賞味期限が近いものから食べていくようにし、食べた分は補うことを忘れないようメモしておくと便利です。

このローリングストック方式を、日常の食生活の中に習慣づけておくと、慌てることなくいざというとき役に立つと思っています。もちろん非常食ばかり食べているのでは、食の楽しみが失われてしまいますので、その点も気を配るようにしています。

ただ、ストックがたりないと気がついたとき、買いしめにつながるような行動はしないようにしています。ひとりの焦燥感が社会問題につながってしまうからです。防災にも節度をもつことが、災害に備える基本で、かつ冷静なふるまいへの第一歩だと、自分に言い聞かせているのです。

水害への備えも同時に行います

地震ばかりでなく豪雨も多発しています。大きな台風もありました。避難所まで行かれない場合は、上の階への垂直逃避が必要ですが、私の場合、集合住宅の一階住まいですので、ここへ入居したとき、まず大水害時の不安を感じました。水が最初に浸入する戸口や、床まで開くガラス戸などは、せめて簡単な水のうで塞げるよう、大きなポリ袋を準備しました。ほかにも隙間をできるだけ塞ぐ工夫を、日々考えています。

想定外の気象変動が、たびたび起こりうる時代になりました。私のようにひとり暮らしの高齢者などは、普段から念入りな防備態勢をシュミレーションしておくと、少しは行動にも違いが出てくると思っています。備えあれば憂いも減りますし、平素情報に耳を傾けて、パニックだけは起こさないよう心がけておきたいものです。

※今回紹介した防災は個人の対策です。個々の間取りや家族構成に合わせて自己責任のうえで行ってください