年を重ねると、だんだん体が思うように動かなくなり、台所仕事もおっくうになりますよね。70代を迎えたエッセイストでイラストレーターの中山庸子さんもそのひとり。しかし、キッチンにある「重いもの」や「大きいもの」をなくしてみたら、想像以上に料理がラクになったそうです。今回は、中山さんに自炊をラクにするコツについて教えてもらいました。

きっかけは、大容量の「揚げ油」が重すぎたこと

シニアの夫婦の食卓に揚げ物が登場することは少なくなってきていましたし、「そのつど持ち上げるのが大変だから」と、大きいサイズの揚げ油を買うのをやめました。そしたら、自然に揚げ物をせずにすむようになりました(ちょっと悪知恵)。

【写真】捨てられないお気に入りのホーロー鍋は別の役割に

今は、揚げ物が食べたいときは、デパ地下で買ったり、「たまにだから」と外で食べたり、ときには食材宅配サービスの冷凍食品を頼んだり。まず、大きめの天ぷら油がキッチンから姿を消して、私の場合は断然プレッシャーなく料理ができるようになりました。

次は「大きいフライパン」もやめてみた

揚げ物をやめたので、ついでに大きい深めのフライパンもやめることに(これも悪知恵のひとつ…?)。収納場所も取っていたし、ここ数年は小さい方のフライパンでほとんど調理しているのに気づきました。

それに、趣味のテニスのせいで右手首の負担がだんだん大きくなっていると感じていたのもあります。もうしばらくはテニスを続けたいので、どうせ振るなら右手首に負担がかかる大きなフライパンよりラケットの方を選んだという感じでしょうか。

手軽な大きさのフライパンだけにしたら、チャーハンや炒め物もラク。ハムエッグもふたり分ならちょうどいいし。洗うのにも場所もとらないし。そんなこんなで、大きなフライパンをやめたことでスイッチが入り、調理器具関係の「やめる」に拍車がかかりました。

捨てられないお気に入りのホーロー鍋は別の役割を

フランス製の重たいホーロー鍋の底の一部分が欠けてしまいました。とても気に入っていたので、取り扱っている店で修理できるか聞いたところ、残念ながら難しいとのこと。

買い直してもいいけれど、重いしなぁ…と。そこで、大きいフライパンもやめたところだったから、重い鍋もやめよう! となりました。

ステンレス製の両手鍋は、ホーローのほどおしゃれではないけれど、本当にラク。当たり前ですが、鍋にはたいていたっぷりの具材と液体が入りますから、腕にも腰にも負担がきます。

そのフランス製の重たいホーロー鍋なんですが、私はどうしても捨てる気になれず、別の役割を彼女(白くておしゃれさんなので勝手に女性代名詞で)に与えたんですね。

今までスープづくりに活躍してくれた彼女の今の仕事は、スープにする前の生のジャガイモやタマネギの保管。抽斗(ひきだし)の中から外へと配置替えをされた白い彼女、なかなかの存在感を放っています。

ラクな自炊の秘訣は、スッキリ空間をキープすること

70オーバーのシニアにとって、食事の準備はなかなか大変。揚げ物をやめたくらいでは、しんどさは解消しないかもしれない。でも、調理に取りかかる前に片づけという仕事がなければ、しんどさは相当に減るはずです。

わが家の場合、キッチンの脇を通らないとトイレ・洗面所に行けない間取りのため、自然にキッチンは片づけるクセがつきました。前に住んでいた家は、キッチンが独立していてリビングから見えなかったので、正直なところ今より散らかってたかな。

だから、最初この中古物件に越した頃は「面倒だな」と思うことが多かったけれど、片づけ慣れをした今は「すぐに調理に入れるからラク」と思えるようになりました。

なるべくスッキリした空間をキープしておくことで「始めるか」と食材やまな板やザルなどを即出せるのが、ラクに自炊する秘訣のようです。三角コーナーも洗い桶も水きりカゴも、ずいぶん前にやめました。代わりに布巾や手ぬぐい、穴あきのポリ袋を使っています。

全体的に「小さく、軽く、少なく」をやったら、キッチンの空間が「広く、動きやすく、片づく」というように効果が大で、ラクラク料理ができるように。今ではキッチンで「ヨッコラショ」という回数が、格段に減ったはず!