老後資金は2000万円が必要か否か、高齢者の貧困など、シニアのお金の問題がよく話題になります。そのせいか自分の老後に不安を覚える方も多いかもしれません。「そこまで老後のお金の心配をする必要はない」と主張するのは、高齢者の生き方に関する著書を多くもつ高齢者医療の専門家の和田秀樹さん。シニアのこれからのお金に対する向き合い方について教えてもらいました。

老後に不安を抱くより、やりたいことをやるためにお金を稼ごう

メディアが過剰に煽るので、老後は生活が困窮するのではないかという不安を抱いている人が多いのですが、過剰なお金の心配は不要であると私は思っています。

介護保険制度ができたおかげで、仮にひとり暮らしで介護が必要になったとしても、要介護認定されれば公的な介護支援を安価で受けられますし、年金の範囲内で入れる特養もあります。

介護費用というとものすごく高額なイメージがありますが、制度をうまく使えば負担はさほど大きくありません。少なくとも60代のうちはまだまだ体力がありますし、積極的に働くのもいいでしょう。

やはり先立つものがないと、どうしてもやりたいことが制限されてしまいますが、「お金がないからやりたいことを諦める」のではなく、「やりたいことをやるためにお金を稼ぐ」という発想が必要です。

仕事自体で高収入を得るのは難しくても年金と合わせればかなりの金銭的余裕が生まれるはずです。心身の健康よい影響を及ぼすというのも働くことの見逃せないメリットです。

人手不足の今、60代は貴重な戦力にも

仕事が見つかるか不安だという人もいますが、心配には及びません。今や、空前の人手不足ですし、たとえば長く専業主婦を続けてきた人などは家事代行サービス業界では貴重な戦力になるはずです。

ニーズの高い介護職は、比較的簡単に取得できる「介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)」をもっていればよりよい条件で働けます。ただし仕事を探すときは、「それを楽しいと思える」とか「それをやって楽しめる」など、お金以外の目的がもてる仕事を選びましょう。

「嫌なことはやらない」のが60歳以降の生き方の鉄則なので、実際にやってみたら合わなくてストレスになるようならさっさと辞める決断を。

お金を貯め込むことより、使って楽しむ喜びを得よう

また、60歳以降はお金を貯め込むことより、お金を使って楽しむ喜びを得ることのほうが大事です。ある程度お金が貯まったら、少し贅沢な旅行に出かけるなどして、いい意味で「散財」し、楽しむために働くというサイクルにするほうが楽しくて充実した人生になります。

もう一つ大事なのは、子孫にお金を残そうとしないこと。そしてそれを表明しておくことです。あなたのお金はあなたのものなのですから、自由に使う権利があります。

下手に遺そうとすると遺される側からの横槍が入りやすく、「やりたい放題」に生きられなくなる危険があります。