Dangbei DBOX02こと「Mars Pro 2」

映像コンテンツの主役はネットに

大谷選手の活躍やパリオリンピックもスタートしたことで、海外のスポーツ中継を見る機会が増えた。特に今年のオリンピックはTVerがほぼ全試合を中継するということもあり、この機会にテレビではなくスマホ、タブレット、スマートプロジェクタで気になるスポーツを見るという習慣が定着しそうだ。サービス側もNetflixやドコモ、アマゾンがスポーツ配信を強化しており、もはやテレビじゃなくても夜は十分楽しめるようになりつつある。

こうしたコンテンツを大画面で楽しむなら、60インチ以上のテレビを買うより断然4Kプロジェクタのほうがコスパがいいのは言うまでもないわけで、各プロジェクタメーカーも高解像度・高輝度・高色域の3高製品に力を入れている。

日本では20万円を切る4Kレーザープロジェクタ「Mars Pro 4K」で人気を集めたDangbeiだが、今年5月末にDangbei DBOX02こと「Mars Pro 2」を発売した。同社のフラッグシップモデルで、Google TV搭載、Netflix公式ライセンスも取得したモデルだ。

公式サイト価格は26万9,800円だが、Amazonでは現在4万480円OFFクーポンが配付されており、22万9,320円となっている。またネットで調べると、大手家電量販店では概ね23万2,800円というのがストリートプライスになっているようだ。

3色レーザー4Kプロジェクタとしてはかなり価格を抑えた「Mars Pro 2」の実力を、早速試してみよう。

デザインはそっくりだが小型化

Mars Pro 2は実質「Mars Pro 4K」の後継機という位置づけになるが、見た目は両モデルともほとんど変わらない。だが外寸を見るとMars Pro2のほうが多少小さくなっており、体積で13%減、重量で11%減となっている。

今年5月末に発売されたDangbei DBOX02 こと「Mars Pro 2」

カラーはブラックのみで、外装はアルミ、天板にはガラスを使用するなど、高級機らしい落ち着いたデザインを継承している。

ディスプレイはDLPで、解像度は3,840×2,160/60p。光源はALPD(Advanced Laser Phosphor Display)方式の三色レーザー。ALPDは中国Appotronics社が開発したプロジェクター用レーザー光源技術で、レーザー蛍光体とRGBダイレクトレーザーを組み合わせることで、レーザー特有のスペックルノイズをほぼ排除している。輝度は2450 ISOルーメンを確保しており、光源寿命は約3万時間。フォーマットとしてはHDR 10+、HDR 10、HLGに対応する。

レンズ部にはガラスカバーがかけられている

投影面積は1.7mで60インチ、5.3mで200インチとなる。推奨サイズは80インチ~120インチ(2.2m~3.4m)となっている。

操作ボタン類は天面に電源ボタンがある程度で、基本的はすべてリモコンでの操作となる。

ガラス製の天面にはタッチ式の電源ボタンがあるのみ

端子類はすべて背面で、左から3.5mmヘッドフォン、USB2.0×2、eARC対応HDMI、HDMI2.1、S/PDIF、LAN、電源となっている。電源は180WのACアダプタが付属する。実際の消費電力は約150Wだ。

拡張性の高い背面端子群

180WのACアダプタが付属

なお今回は別売のスタンドもお借りしている。本体底部には三脚ネジ穴があるので、それを使ってブランコ状になっている部分にマウントする格好だ。正面投射の場合は結構腰高に見えるが、これは上部へ向けて投射する場合のマージンである。

別売の専用スタンド

スタンドに本体を乗せたところ

スタンド底部には回転機構も備わっており、テンポラリな設置での微調整に威力を発揮する。台形補正およびフォーカスも自動なので、設置場所変更による再調整はプロジェクタが勝手に判断してやってくれる。

底部には回転機構も付けられている

スピーカーは左右の通気口奥に内蔵されており、12Wフルレンジが2基だ。

側面前方に楕円スピーカーがある

リモコンは以前からDangbei Atomなどに採用されているものと同じGoogle TV音声入力対応のもので、横の赤いボタンはAF、黒いボタンは台形補正などを行なうプロジェクタメニューへのショートカットだ。サービスのショートカットボタンは、YouTube、Netflix、Prime Videoとなっている。

リモコンは以前の製品と同じ

設定機能はシンプル

では早速設定して使ってみよう。OSはGoogle TVなので、最初にアカウントを設定すれば、紐付けされているサービスが自動でインストールされる。Netflixも公式対応なので、問題なく使用できる。

OSはGoogle TV。Netflixにも公式対応している

他社製品では、急遽Netflixがアプリから視聴できなくなるといった事もあるが、Dangbeiは以前もご紹介した「Emotn N1」の頃からNetflix公式ライセンス取得にこだわっており、今回も同様の流れということである。

本機の特徴はなんといっても2450 ISOルーメンという明るさにあるが、輝度設定では、自動のほか、標準、ECO、ハイパフォーマンス、カスタムに変更可能。ハイパフォーマンスが一番明るいが、これに設定するとファンが爆回りするため、ものすごくうるさい。広い場所で遠距離に射つのでなければ自動か標準でも十分明るいし、ファン音も静かだ。

輝度設定は5タイプから選択する

画像モードとしては、Standard、Vivid、Movie、Game、Customがあり、CustomではRGBバランスなどがマニュアルで変えられる。本機には壁色補正といった機能がないので、壁色での変化が気になる場合はマニュアルで調整することになる。

画像モードも5タイプ

カスタム設定のパラメータ

フレーム補間機能は、MEMC(Motion Estimation/Motion Compensation)というメニューになっており、モーションブラーを押さえてフレーム補間できる機能になっている。この機能は画像モード選択と連動しており、Standardではオフだがゲームでは「中」に設定されるなど、組み合わせになっている。

MEMCの設定は4段階

製作者の意図通りのコマで見たい場合はここをOFFにする必要があるが、スポーツ観戦ではONにしたほうがいいだろう。画像モードを切り替えるとそれぞれのプリセット値に戻ってしまうので、注意して欲しい。

変わったところでは、3Dの映像表示にも対応するところだ。左右、上下ほか、Blu-rayの3Dコンテンツにも対応できる。

音に関してもサウンドモードが複数用意されており、標準のほか映画、音楽、スポーツ、カスタムに切り替えできる。フォーマットとしてはDolby Digital、Dolby Digital+、DTS Xに対応している。

サウンドモードも5タイプから選択

昼間でも使える明るさ

今回はTVerにてオリンピックの配信を中心に視聴した。TVerの配信は、ライブではおそらく24pか25pで、現地の英語解説音声もそのままなので、オリンピック公式の配信ストリームをそのまま流しているのだろう。MEMCがOFFだと映画のような雰囲気だが、気になるようであればMEMCを使えば滑らかに見える。

一方ダイジェスト配信は日本人選手の試合を再編集したものなので、60pで配信されている。MEMCなしでも動きは滑らかだ。

輝度に関して言えば、「標準」でも十分な明るさがあり、昼間の室内でも問題なく視聴できるレベルだ。もちろん黒は部屋の明るさ以下には落ちないが、明るさ方向の高さでカバーしている。ちょっとカーテンで遮光してやれば、さらに良くなる。

あいにくオリンピック配信はHDRではないので、夜にNetflixで4K HDR作品「三体」の第1話、バーのシーンを視聴してみた。再生を開始すると画面左上に「HDR」という文字がポップアップするので、HDRコンテンツである事が確認できる。

一般的に有機ELディスプレイのスマートフォンでは、HDRコンテンツになるとガーンと輝度が上がるが、本機では最初から設定上の最高輝度を出しているので、HDRだから輝度が上がるという感じはない。部屋をきちんと暗くすればHDRらしさは感じられるが、環境光の明るさに左右されずガーンと明るくなるというわけではない。

暗いシーン、明るいシーンで観察したが、レーザー特有のスペックルノイズは感じられなかった。ALPD方式の素性の良さが感じられる。

音量は十分に出るが、低域はやや不足気味。ただ中高域の明瞭感は高いので、セリフなどの表現は問題ない。音の広がりもまずまず高いが、綺麗にサウンドフィールドを聞くには、プロジェクタを自分の正面に置くか、真後ろに置くしかないのは、スピーカー一体型のプロジェクタの宿命である。パッと楽しむなら本体スピーカーで、本格的に映画を楽しむならサウンドバーでというスタイルは、テレビと同様だ。

HDMI入力も試してみた。HDMI入力への切り替えはリモコンのショートカットがなく、Google TVのサイドメニューに入っていかなければならないので、多少面倒だ。パソコンのHDMI出力を入力してみたが、4K解像度あるとかなりの大画面での作業も可能だ。距離を離せばそれだけ大きくなるが、今度は視力との兼ね合いも出てくるので、そのあたりは調整が必要である。

パソコン画面の表示も問題なし

HDMIの入力が切れると、警告画面が表示される。「戻る」ボタンを押せばGoogleTV画面に切り替わる。

入力がなくなったときの警告画面

総論

一人暮らしの若い人の間ではテレビ代わりにプロジェクタ、という人も出始めているが、一般家庭ではテレビはテレビで別にあり、プロジェクタはプラスアルファとしてあるものだ。

すでに映像コンテンツは、家族全員で見るというよりもパーソナルスペースでゆっくり見るというものに変化しており、テレビがパブリックディスプレイだとすれば、プロジェクタはパーソナルディスプレイという在り方のほうがしっくりくる。

そこに対して単に大画面だというだけでなく、昼間でもちょっとカーテンを閉めれば使える高輝度4Kプロジェクタは、コンシューマでもハイエンドモデルなら存在したが、一般庶民には高嶺の花とも言える存在だった。

だが昨年あたりからDangbei、JMGO、XGIMIあたりが30万円を切る価格で商品を市場投入し始めている。古い製品ではストリートプライスで30万円以下まで値下がりした製品もいくつかあるが、本機は最初から約27万円という価格で登場しており、価格攻勢ではDangbeiが一歩リードという状況になっている。

明るさの基準もANSI、ISO、CIVAと色々あってややこしいことになっているが、ホームプロジェクタとしては概ね2,000ルーメンを超えられるかどうかというのが、1つの閾値になっているようだ。これを超えられる光源としてはレーザーか、XGIMIの「Dual Light」か、ということになる。

贅沢に映像コンテンツを楽しむ方法として、高輝度4Kプロジェクタは、ちょうどいいレンジに入ってきている。