DMM TV、高画質・低通信量のAV1コーデック採用。アニメのバンディングも軽減
DMM.comは、動画配信サービスの「DMM TV」において、大手国内配信事業者として初めて次世代動画圧縮コーデックのAV1を採用し、2024年7月から同コーデックを使った動画配信を本格的にスタートした。従来コーデック(H.264)で圧縮した映像と比較し、同等の画質を保ったまま40~70%程度の通信量でコンテンツを楽しめるという。
現在は2024年1月期以降に配信開始したアニメ作品を中心に、AV1を使ったコンテンツを配信中。AV1での再生に対応したAndroidスマートフォンやAndroid TV、Fire TVで、DMM TVアプリ経由で対象作品を再生すると、AV1による高圧縮高画質な映像を楽しめる。
検証動画での再生テスト
(C)copyright 2008, Blender Foundation / www.bigbuckbunny.org
再生環境がAV1に対応しているかを確認できる検証動画も用意。Webブラウザからアクセスして検証動画を「お気に入り」登録したあと、アプリ内で検証動画を再生すると、再生されている動画圧縮コーデックを確認できる。
対象コンテンツは随時拡大予定。視聴環境についても、今後各種WebブラウザやiPhone、iPad、VR機器などへの提供も予定している。
2024年冬アニメ(1月~3月配信)特定コンテンツでの平均ビットレート比較
AV1を採用したことで、ユーザーの通信量節約につながるだけでなく、混雑した回線での安定的な視聴の実現や、再生開始やシーク操作などのパフォーマンス改善など、さまざまな視聴体験の向上につながるとのこと。
ダウンロード容量比較
また、AV1はストリーミング視聴だけではなくダウンロード視聴にも適用されるため、端末のストレージ容量節約にもつながり、より多くのコンテンツをダウンロードしてオフライン再生することも可能。
「DMM動画」と「DMM TV」の平均ビットレート(kbps)比較
VMAFの値とバンディング発生量
DMMでは、20年以上にわたって動画配信サービスを運営するなかで、コンテンツの高圧縮化と高画質化に取り組んできたといい、2022年12月から提供しているDMM TVにおいても、リリース当初からコンテンツ種別による独自処理、シーン分析によるパラメータ調整といった、新しいアプローチによって高い圧縮率と高画質を両立。DMM TVリリース以前に提供していたDMM動画と比較して、1/3程度のデータ量で同等の画質を実現してきた。
コンテンツX 1話における大手国内配信事業者とのダウンロード容量比較
コンテンツX 1話における、同様の次世代コーデックを採用している大手グローバル動画配信サービスとのビットレート比較
今回採用したAV1は、従来のH.264と比較して、パラメータによるデータ量のコントロールが難しく、「画質と圧縮率の両立が従来以上に困難であることから、採用障壁が高い技術となっている」ものの、DMMでは画質指標として用いられるVMAF(Video Multi-Method Assessment Fusion)はもちろん、DMM TVの強みのひとつである豊富なアニメ作品ラインナップも踏まえ、アニメの画質を左右するバンディングの発生状況などにも着目。さまざまな画質評価指標を用いて開発した独自の解析技術により、適切なパラメータを選定することを可能にしたという。
こうした取り組みを通じて、AV1採用を実現した結果、さらに50%程度の圧縮が可能となり、DMM動画での圧縮技術と比較して1/6程度のデータ量で同等の画質を実現。また、複数の大手国内配信事業者と比較した場合も、半分程度のデータ量で同等以上の画質でのコンテンツ提供を達成しているほか、DMM TVと同様の次世代コーデックを採用している大手グローバル動画配信サービスと比較しても、アニメにおいて同等かそれ以上の圧縮効率を実現しているとのこと。
AV1は、Alliance for Open Media(AOMedia)によって開発されたロイヤリティフリーのビデオコーデック。AOMediaにはGoogleやApple、Netflixなどが名を連ねている。
(左)バンディングが多く発生しているグラデーション /(右)バンディングが軽減されたグラデーション
バンディング発生例と、実際軽減されている例
(C)犬塚惇平・主婦の友インフォス/「異世界食堂2」製作委員会
バンディングは、映像や画像の色のグラデーションがスムーズでなく、不自然な線や帯状の境界が現れる現象。動画を圧縮した際に顕著に発生することが多く、夕焼けの空のグラデーションや、淡い色の背景などで頻繁に見られる。特にアニメにおいてはバンディングが発生しやすいシーンが多く、例えばキャラクターの顔に影がかかるシーンで影の部分に輪郭が出てしまうことや、空のグラデーションがスムーズではなく階段状になってしまうケースなどがある。
DMM TVでは、このバンディングを軽減させるさまざまなパラメータチューニングを行なっており、特にアニメの画質向上に大きく寄与しているという。