Image: Dua Rashid - Gizmodo US

外側画面がたっぷり広くなった。

Motorola(モトローラ)の折りたたみスマホRazr 2024が、アメリカで予約受付開始されました。アウトディスプレイは折りたたみスマホで最大面積を誇ります。

昨年モデルは画面がちっちゃくて、防水・暗所撮影も弱くて評判が今ひとつ。上位機種のMoto Razr+ 2023(日本ではrazr 40 ultra)と、Samsung(サムスン)Galaxy Z Flip 5(ともに1,000ドル)との比較対決でもZ Flip5に負けちゃってましたが、今年はデザイン刷新です。

Razr+(日本ではRazr 50 ultra)が4インチ、Razr(同Razr 50)は昨年のRazr+と同じ3.6インチのアウトディスプレイ。昨年1,000ドルした上位モデルの画面サイズが、300ドル安い700ドルで手に入るのは単純にうれしいですね。

プロセッサーも強化され、Gemini AIの音声アシスタントが使えたり、防水性能が向上するなど新機能が充実しました。1年しか経っていないのに、昨年モデルと比べること自体はばかられるほどの進化を遂げています。

Motorola Razr

◾️これは何?

モトローラ最新の折りたたみスマホ

◾️価格

Razrは700ドル(約11万1000円)、Razr+は900ドル(約14万2000円)

※アメリカ・カナダ市場以外では、新型Razrは「Razr 50」、Razr+は「Razr 50 ultra」の名称になっています。

◾️好きなところ

・折り目が目立たない。ヒンジが改善

・マルチタスクOKなCPU

・結構使えるアウトディスプレイ

◾️好きじゃないところ

・防塵性能が低い

・カメラが月並み。暗所に弱い

外側画面でなんでもできる

外側画面は思った以上によく使いました。柔軟なプラスティックをベースとするpOLEDの画面は、1056×1066の解像度でHDR10+対応。YouTubeで夜の場面を見るのもこれで済んじゃうし、軽くゲームやったり、Slackの通知を見たり、メールチェックしたり、写真撮ったり、Gemini AIの操作までできちゃうんだもん。およそスマホでやることすべてが、外側画面で間に合っちゃうと言っても過言ではありません。

Gemini AIに書棚の本の特定をリクエストしたところ。村上春樹の『海辺のカフカ』はちゃんと回答できてる
Screenshot: Dua Rashid - Gizmodo US

4インチだとアプリの収まりが悪くて、一部使えないところも出てくるのが悩みの種ですよね。従来は、YouTubeの広告スキップ用ボタンがレンズで隠れたり、Slackのアイコンが一部隠れたりしていました。でも、今年のモデルはフル画面で表示できなくなっていて、標準モードでフルに開くと、少し上側にずれてレンズで隠れなくなっている辺りに工夫が感じられます。

Slack。全画面モード(左)だとレンズに重なってしまうけど、標準モード(右)はその心配がない
Screenshot: Dua Rashid - Gizmodo US

YouTubeも標準モードで視聴して違和感なしでした。動画はちっちゃくなっちゃうけど、ボタンが表示されないよりはマシですし、僕はあまり気になりません。SlackやGmailも必要に応じて標準モードに切り替えて使っていました。インスタは全画面モードにすると、重要な機能が全部隠れてしまってまったく使えません。 標準モードでも1つの投稿を3回スクロールしないと下まで見れないので、ちょっと体力が要る感じですかね。

ちっちゃな画面でもゲームは全然遊べます。『Scooter Xtreme』や『Retro Drift』は問題なくプレイできました。『Perfect Piano』は、さすがに6.9インチの画面に切り替えた方がやりやすかったです。以上の3つは、どれもRazrに標準装備されているタイトルです。フレームレートは90Hz。楽しくてつい何時間も遊んでしまった…。

去年のRazrでは「メイン画面に外側画面の操作が読み込まれない」という批判もありました。The VergeのAllison Johnson記者も、「外側画面にタイマーを設定してメインの画面を開いたら、どこにも表示されていなかった」と書いてましたが、今年のRazrで試してみたらアプリや操作はきちんと全部ひきつがれていました。

タイマーもYouTubeもゲームも全部OK。外側画面で中断したところから、ちゃんとメイン画面で再開できます。

なお、メイン画面のスペックは7インチ弱、 解像度2640×1080のFHD+、HDR10+対応、輝度最大3,000ニト。リフレッシュレ―トは120Hzなんですけど、『Perfect Piano』を途中で外側からメインに切り替えても、外側画面との30Hzの差まではわかりませんでした。

ヒンジの質は向上したけど防塵性能はダウン

昨年のRazr+はヒンジがきついのが不満でした。バネも×で、急に開いて音が出るし。でも、今年の新作ではどちらも改善しています。使って真っ先に気づいたのがヒンジの進化で、ゆるすぎず、キツすぎず、ちょうどいい感じ。

開閉も急じゃなくて、自分でもっとコントロールできるし、カチッと閉じる手応えも◎です。ヒンジがどこまで持ちこたえるかは、1年使ってみないと何とも言えませんけどね。今は最高でも、1万回開け閉めてもなおこのクオリティを保っているかは、そのときになってみないとわかりません。

折りジワ隠しは完璧です。6.9インチのメイン画面を使用中、シワはほぼ見えなくて、日が差す角度によって真ん中の窪みがわかる程度でした。折りたたみであることを忘れると言ってもいいほどです。

Razrの背面。「ヴィーガンレザ―」採用
Photo: Dua Rashid - Gizmodo US

カバーの素材は、フロントがコーニングのゴリラガラスで、背面が動物の本革じゃない「ヴィーガンレザー」、サイドは高強度のアルミ二ウム。重量は昨年とほぼ同じ188gです。受け取ったレビュー機はきれいな「ビーチサンド」カラーでしたが、ほかにも「コアラグレイ」「スプリッツオレンジ」のバリエーションがあります(僕はピンとこないけど、同僚は気に入ってた)。

防水性能は昨年のIP52からIPX8に大躍進です。ただ防塵については大後退で、これはヒンジやクレバスにホコリがたまりやすい折りたたみとしては痛いかな。折りたたみは耐久性が命ですので、何カ月か使ってどうかが気になります。

MediaTek製プロセッサでマルチタスク対応

標準モデルと上位モデルで一番違いが出るのがプロセッサです。標準モデルはMediaTek Dimensity 7300Xで、上位モデルはSnapdragon 8s Gen 3。上位モデルにはまだ触れていないのですが、昨年モデルでSnapdragon 8+ Gen 1を触った経験からいうと、標準モデルを買ってもそんなに処理性能が見劣りすることはないのではないかと思います。

今年は標準モデルを1週間使ってみたのですが、動作が滞るようなことは一度もありませんでした。Snapdragonとまったく同様に使えます。Gmail、Slack、Chromeを同時に開いて使う曜日もあれば、ゲームとYouTubeを行ったりきたりする曜日もあったけど、過熱することもなく、アプリの移行はあくまでもスムーズ&スピーディー。マルチタスキングが快適にできます。

Geekbench 6のベンチマーク結果は、シングルコアで1,051、マルチコアで2,997。スペック的には800ドルのOnePlus 12並みの処理性能です。

OSは最新のAndroid 14が入っています。モトローラはアプデが遅くて、昨年の上位モデルは少し前のAndroid 13だったので、これにはホッ。Androidは4回のアップグレードが保証されていて、セキュリティアップデートは4年保証。SamsungのOS 4年保証、セキュリティアップデート5年保証に比べたら短いけど十分でしょう。

メモリは8GB LPDDR4X、ストレージ256GB。上位の新型(12GB LPDDR5X)よりメモリは少なめです。

新しいジェスチャー操作も加わった

昨年のRazrはカバー画面がまるで「ウィジェット表示窓」みたいな扱いでしたが、今年はフルディスプレイの仕様になっており、メイン画面と変わりなく使えます。右上のペンアイコンを押せばアプリを追加できるし、Galaxy Z Flip 5みたいなランチャー用ウィジェットはなくて、単にアプリをタップすればカバー画面に導入されます。

カバー画面をピンチすると、こんな感じに全ページを一括表示できる
Image: Dua Rashid - Gizmodo US

ページのスクロールもピンチも自在にできて、開きたいところにスッと入れるし、Google株価情報、ストップウォッチ、Spotifyなどのサービスを、カバー画面にウィジェットとして追加することもできます。画面をスワイプダウンすると設定メニューに入れるんですが、これが結構な数。正直、必要なさそうなのまで混じってます。

ディスプレイは自由にカスタマイズが可能です。カバー画面のテーマ、フォント、カラーをすごく簡単に変更できます。やってみたら数秒でできました。ロック画面もホーム画面もかわいくなって、見るたびにありがたみが湧きます。

サイドバーを表示させてるところ
Image: Dua Rashid - Gizmodo US

新設の「クイックローンチ」を使えば、背面ダブルタップの操作で設定で選んだアプリが起動しますし、タップ強度も選べます。さらに電源キーをスライドアップ、スライドダウンすれば、「1回スワイプで通知、2回スワイプでクイック設定を表示させる」か「カメラ、地図、写真、互換アプリ内でのズームイン、ズームアウトにスライドアップ&ダウンの操作を割り当てる」かも選べます。スライド認識強度も選べるので、うっかり触ってスワイプと誤って認識されることも回避できます。

こういったジェスチャー認識は利用価値が高そうだと思っていたんですが、それほどでもなかったです。電源キーが敏感で、スライドのジェスチャーのつもりが、うっかり押してしまうことも多々ありますし、ズームもあまりスムーズにいきません。電源キー長押しでGemini AIが起動するんですが、これについては、テスト中にうっかり起動しちゃうことが何度かありました。

テスト中は通話を試す機会がなかったけど、画面に手を近づけると着信コールの通知をミュートにできますし、端末をフリップすれば着信拒否が有効になるみたいです。

夜間撮影が苦手なカメラ

今年のRazrもカメラが弱点です。背面のメインが50MP、超広角が13MP、フロントカメラは32MP。どのカメラも30fpsで4K UHD、60fpsでFHDの撮影が可能です。自宅と通勤ルートで少し遊んでみましたが、夜の撮影は本当にダメ。なら日中の写真がすごいかというと、そういうこともなくて、ズームインするとボケてノイズが入っちゃうんですね。

同じ木。左が昼、右が夜
Image: Dua Rashid - Gizmodo US

ごらんのように、夜の写真はモヤッとしていて、ディテールが霞んでしまってます。カメラがダメなので、それを補正機能で補ってくれるのはいいのですが、効きすぎて変にシャープになり過ぎるところもあったりして余計に最悪です。

同じ街路。左が昼、右が夜
Image: Dua Rashid - Gizmodo US

今年のカメラ唯一の長所は、レンズの厚みが増して、去年のカメラより突き出ていることです。これなら手でレンズとわかるので、カバー画面を操作中うっかりタップすることもなし。キズや手垢の予防になりますもんね。

レンズ。左)昨年の上位モデル、右)今年の標準モデル
Image: Dua Rashid - Gizmodo US

バッテリーは丸1日もつ。サウンドの広がりは◯

Razrのバッテリーは4,200mAh。普通に使って2日、ヘビーユースで1日半持ちます。仕事・娯楽・ゲームをたまにやりながら、16時間後に残量をチェックしたらまだ40%も残っていました。充電場所に縛られないし、バッテリーでイラっとくることもありません。

1時間以内に100%充電できて、それで最低でも11時間は持つペースですね。ちなみにテスト時の設定は、画面の明るさ50%、省電モードOFF。

充電器は30Wで別売です(アップルの影響)。あと15Wのワイヤレス充電にも対応しています(前モデルは5Wで無茶苦茶遅かったので、これは大歓迎)。

スピーカーはDolby Atmost対応ステレオスピーカー2基を装備。空間オーディオも楽しめます。テスト期間中、ボリュームを最大に上げることは一度もなかったです。なにせスマホなので音はやや軽めではありますが、70〜80%くらいまでボリュームを上げれば部屋が音で満たされます。

評価は3.5/5点

カメラ・防塵性能はともかく、今年のMoto Razrは700ドルとは思えない仕上がりです。アウトディスプレイがただのギミックから脱皮して、ちゃんと実用に耐えるレベルになっていますし、アプリの追加もシンプルな操作でできます。新しく加わった「標準モード」を使えば、3.6インチ用じゃないアプリもカバー画面でちゃんと動きますし。デザインの面でも、ヒンジが良くなりました。折りジワはほぼほぼ分かりません。気になるのは防塵性能ぐらいかな。

MediaTek CPUの処理パワーで、複数のアプリを開いて効率よく切り替えられるのもありがたいけど、何よりもバッテリーが1日半から2日持つのは安心感が違います。

惜しむらくはカメラですね。日中の撮影は問題ないけど、夜の撮影が多い人やカメラで選びたい人はほかを当たった方がいいでしょう。

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