実は多い「話し合いができない夫婦」あるある3選 夫婦カウンセラーが示す“4つの処方箋”も
夫婦の円滑なコミュニケーションは、関係を深めるための大切な要素です。しかし、その肝である「話し合い」ができないという問題に直面しているご夫婦も多いのが実情です。今回は、「恋人・夫婦仲相談所」所長を務める筆者が、「話し合いができない夫婦」の特徴を“あるある”なシチュエーションとともに紹介し、その対処法を探ります。
意見の食い違いで「マイナスの感情」に着火
まず、「話し合いができない夫婦」の特徴と、そのケース例を挙げます。
【感情が半分以上入ってしまう】
夫婦で、夕飯をどうするか話していたときに、夫は「今日はカレーが食べたい」と言ったが、妻は「ランチでカレーを食べたから別の料理がいい」と反論。夫は「いつも俺の意見は無視される」と不満まじりで感情的になり、妻は「あなたは何も分かってない」と言い返す。売り言葉に買い言葉でヒートアップし、夕飯の話題から別のストレス問題へと展開してしまう――。これは、お互いの意見が食い違うと、すぐにマイナスの感情に着火する習慣がついてしまったカップルのあるあるです。
【話をするタイミングが悪い】
妻が休日の午前中に、子どもの習い事の話をしようとすると、夫が「今は野球を見ているから後にして」と言う。結局その日はバタバタして話ができず、そのまま数日間忘れ去られ、会話を再開しようとしない。すると、問題が勃発したときに「あなたが相談に乗ってくれなかった」「私だけに押し付けている」となる――。
相手の状況をあまり考えずに、適切なタイミングで話さないケースでは、問題を先送りして、「結局、悪いのはどっちなのか分からない」という後味の悪い展開になります。
【一方的な主張をする】
夫が「家計の管理は自分がやる」と一方的に決めて、妻の意見を全く聞こうとしない。妻は、家計の使い道について自分も考えたいと話し合おうとするが、「それは収入を担っている俺の仕事だ」と言って、夫は全く聞く耳をもたない――。年収の差があることで、一方の意見が押し通され、もう一方の意見が封じ込まれる不平等カップルの状況です。
「感情が高ぶらない」工夫を
では、どうすればいいのか。夫婦が、ベストなコミュニケーションを取るために必要なこととして、まず次の3つが挙げられます。
【(1)“ながら会話”を避ける】
「話し合いの際は感情を出さない」「トランプ大統領みたいに、相手の意見を遮らない」などのルールを決めましょう。さらに、話し合いの時間を「◯曜日の△時から」としっかり設定し、食事をしながら、掃除をしながらといった“ながら会話”にしないことです。会議のように時間を決めることにより、意識がそちらに向きます。そして聞く耳を持ち、落ち着いて話すことができます。
一番大切なのは、冷静に話し合うことです。感情が高ぶらないように、話し合いのタイミングや場所を夫婦で工夫しましょう。
【(2)アクティブリスニングを実践する】
話し合いの際に「今、何を考えているの?」と踏み込んで、深層に問いかけ、相手の本意をしっかりと聞くよう心がけてみてください。質問を通して、相手の立場や気持ちを理解しようと努力することで、よりよいコミュニケーションが取れるようになります。相手の話をよく聞き、理解しようとする姿勢を持てば、建設的な対話ができるはずです。
【(3)フェアなルールを設ける】
話し合いをする際に、「まずはお互いの意見を最後まで聞く」「意見が一致しない場合は再度話し合う」といったルールを決めておきましょう。こういったルールを夫婦で設けることで、話し合いが一方的なものになることを防げます。平等に意見を交わせる状況をつくらなければ、“話し合い”とはいえません。フェアな関係を保ちながら、お互いを尊重する会話のルールであると理解できれば、声を荒げることは少なくなります。
そして、夫婦だけで問題が解決しなかったら……4つ目は「第三者の助けを借りる」です。
「相手のモラハラ発言に気付いているが、言っても無視されるので放置している」「意見を封じ込められるのは仕方ないと諦めている」など、問題を先送りにしているなと感じたら、まず身近な親や友人に具体的なことを話し、客観的にどう思うか聞いてみてください。一方の脳が、「らちが明かない」ことにまひしている可能性があるからです。
ルールをつくるのに相手が賛同しなければ、カウンセラーに協力してもらうのもアリです。相手を尊敬できなくなったり、メンタルがやられていたりするなど、こじれている場合は弁護士に相談することをためらってはいけません。役所で無料相談を開放しているところもありますし、初回相談は安い料金設定の弁護士さんもいます。
また、日本ではカウンセラー文化は根付いていませんが、夫婦専門カウンセラーはカップル問題を中立的に捉え、解決策を提供するのが役割です。私も「恋人・夫婦仲相談所」で多数のカップルのほころびを直すお手伝いをしています。
話し合いができず離婚した夫婦
友香さん(38歳、仮名)と幸喜さん(38歳、どう)は、話し合いができなくて離婚した夫婦です。
フリーライターの友香さんとエンジニアの幸喜さんは、生活時間がすれ違う毎日でした。早朝出社で夕方には仕事が終わる幸喜さんに対し、友香さんは昼ごろからスタートして夜中まで仕事をするスタイルです。
夕方に帰宅した夫が、妻の作った夕食を食べているときに、妻は打ち合わせの真っ最中……という状況。たまに食事を一緒にできても、その後まだ仕事が残っている友香さんはリラックスできません。
夕方ごろに手早く夕食を済ませて寝る前に一杯飲みたい友香さんと、仕事が終わってからゆっくりお酒を楽しみたい幸喜さんは晩酌の時間も合わず、やがて食事を共にすることも少なくなりました。二人の会話は休日のみになります。
子どもが欲しい友香さんは、例えば休日に夫がテレビを見ているときに話を持ち出して、「今、いいとこ」と怒られることも。思いの違いから言い合いになったり、「その話は今はしたくない」と夫が遮ったりと、スムーズに話し合いができませんでした。
友香さんは40歳目前。このままでは子どもを持つことができないと、離婚を決意します。生活スタイルが違う夫とは、子どもができてもうまくいかない……そう思ったのも一因でした。
「夫婦なんだから、話し合いができることがデフォルト」と思う人もいるかもしれませんが、実は事務的な会話しかしていないカップルがいることを知っておいてください。