【疑問】海で“波”が発生するのはなぜ? どうやって予測する? 気象予報士に聞いてみた
漁師のように海で仕事をする人のほか、海でのレジャーを楽しむ人にとって気になるのが、「波」です。天気予報では天気のほかに、波の高さに関する予測も報じられており、海に行く日の前日にチェックする人は多いと思います。
ところで、波はどのような仕組みで生じるのでしょうか。気象予報士は、どのような方法で波の変化を予測しているのでしょうか。気象予報士のきりたんさんに聞きました。
風によって波が発生
Q.海で波が発生する仕組みについて、教えてください。
きりたんさん「海上で波が現れる際は、『風』が大きく関わっています。風によって波が生まれ、風が強くなるにつれて波も高く大きくなっていくことから、波の予測をするには風の情報が非常に重要になります。
波は、主に『風浪』と『うねり』の2種類があります。風浪は直接、風を受けて短く不規則に尖った波で、うねりは遠い海域からの風の影響を受けて丸く規則的な形の波のことを指します。
うねりの方が一見穏やかな波のように見えるかもしれませんが、沿岸部まで到達すると急に高波になる恐れがあるため、注意が必要になる場合もあります」
Q.気象予報士は、どのような方法で波の変化を予測しているのでしょうか。
きりたんさん「波の変化を予測するには、『数値波浪モデル』というコンピュータープログラムを用いてデータを収集・分析しながら予測を行います。
例えば、気象庁では地球のほぼ全域をカバーする『全球波浪モデル』と日本近海の詳細データを算出する『沿岸波浪モデル』の2種類の異なるモデルを運用しています。
『全球波浪モデル』で日本から遠く離れた場所からから発生した波浪の情報収集を行い、『沿岸波浪モデル』でより細かい解像度で予測計算を実施するという仕組みになっていますね。
予測モデルでは、風によって風浪が発生し、うねりとなって消滅するまでの流れを計算して結果を導き出しています。波や海面は非常に複雑な構造をしていて変化が起こりやすいため、気象庁では1日に4回もの計測を行っています」
Q.波の構造は複雑ということですが、「風浪」や「うねり」のほかにもいくつか種類があるのでしょうか。
きりたんさん「風浪やうねりのほかにも、特殊な条件下で発生するものや特定の地域で見られる波の現象などには名前が付けられていますね。また、専門的な用語ではありませんが、地元の漁師やサーファーの人たちなどから呼ばれる通称のようなものもあります。
夏から秋にかけて台風が近づいてくる前兆として、太平洋側の沿岸に現れるうねりのことを土用の期間に合わせて『土用波』と呼んでいます。土用波は晴天で風のない穏やかな日でも、高い波が打ち寄せてくるのが特徴ですね」
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なお、気象会社の中には、海で働く人やサーファーを対象に波の予測を専門としたサービスを展開しているところもあります。海との関わりが強い人たちにとっては、波の予測は非常に重要な情報源であることが分かりますね。