飲食店で導入されているシステムとは?

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 【外食業界のリアル・11】 コロナ明けから外食業界は活気を取り戻し、インバウンドが盛り上がっていることも後押しとなって、繁盛店も増えてきた。一方、外食業界ではDXが加速し、予約システムや順番待ちシステムなどの導入が進んでいるにも関わらず、お店の行列がなくなる気配はない。今回は飲食店で導入されているシステム、そして行列について解説したい。

●予約台帳と順番待ちシステム



 まず飲食店に導入されている「予約台帳」と「順番待ちシステム」について、簡単に解説したい。予約台帳とは、席ごとに何時から誰がどんな予約が入っているものかを管理するものとなる。予約者名や人数、コース内容、連絡先などの必要事項がまとまっており、受付時のオペレーションの肝となるものとなる。

 また、グルメ媒体やオウンドメディア、Google、LINEなどの在庫とも連携され、席の空き具合に応じて自動調整をする機能が付いていることが多い。そのため、予約が主体となる居酒屋やレストランなどの多くで利用されている。

 順番待ちシステムは、当日に来店される顧客を効率的に案内することがメインとなる。席の希望や人数などの条件を登録してもらい、順番に案内をしていく。順番が近くなると、SMSやLINEメッセージで教えてくれる。店の外からもエントリーすることができるが、一般的には来店時にチェックインが必要となる。

 そのため、事前予約なしで利用されることが多い回転寿司やファミレス、焼肉屋などで利用されることが多い。もちろん、これらはあくまで傾向であって、グルメ媒体からの予約を積極的に取る焼肉屋などは予約台帳と併用することもある。

●飲食店の行列とは



 飲食店は満席であれば並んで待つというのがごく普通の流れとなっており、昔から今も変わらずに続いている。行列ができること自体が人気店の証であり、行列自体が名物化している店舗もある。

 だが、店の立地条件などによって行列になると近隣の迷惑になってしまうこともあり、その場合は受付時間だけ並んで台帳に記帳し、決められた時間に再来訪してもらうスタイルを取ることもある。また、飲食店側も単に並ばせるだけではなく、待ち時間にメニューを選んでもらい、先にオーダーを聞いておき、座ったらすぐに料理が運ばれるようなオペレーションを取り入れているケースもある。

 日本では並ぶということ自体が習慣となっている。学校や飲食店、スーパーなど、さまざまな場所で当たり前のように並んで順番を待つ。そんなこともあり、飲食店で並んで待つこと自体は単なる苦痛ではなく、一緒にいる仲間とのコミュニケーションの場であったり、スマホでの自由時間であったり、料理を食べる前のルーティン的な感覚を少なからず感じている人もいるかもしれない。

 行列に並び順番が近づいてくるに連れて高まる期待感と席に座れた時の安堵、そして料理が運ばれてくるときの感覚はなんとも代えがたいものである。もちろん小さい子供がいると長時間待つことが難しいし、少しの時間でも待つことが嫌いな人もいるので、決して全ての人がというわけではない。

●行列と順番待ちシステム



 順番待ちシステムを導入すると、待つことがなくなるのかというと決してそんなことはない。端末で登録をした後に呼ばれるまで待機することは変わりなく、結局は並んでいないだけで待っていることには変わりない。

 また、店の外からエントリーをしただけでは受付完了とならず、来店してチェックインをすることが必要となる。理由はエントリーしただけで実際に来店しなかったり、エントリーだけしてそのまま他店に行ってしまったり、またはいたずら目的のエントリーもあったりするので、チェックインが外せないステップとなっているのである。

 「目安の待ち時間」通りに呼ばれずクレームになるケースも少なくない。30分待ちなのでエントリーしたものの、待ち時間がいつまでたっても減らずに想定以上の時間を待たされたという経験があるケースも多いだろう。

 「待ち時間」というのは希望の席や人数、待機時間、待ち組数などをもとに算出されたあくまで目安に過ぎない。顧客の食べている時間が想定以上に長かったり、エントリーしたけれど結局はチェックインしない人がいたり、などの事象があると時間が変動していくのがシステムの常となる。

●入店前の体験に付加価値を



 今後も飲食店から行列がなくなることはないといえるが、行列をより効率的にしていく動きは進んでいくはずだ。事前決済を導入することで来店がほぼ確実なものとなり、チェックインをなくすことも可能かもしれない。テイクアウトを併用している店舗であれば、受取用のロッカーを設置することで行列の対象者を減らすことができる。

 また、回転寿司の待機エリアでは映像を流すことで、待ち時間の苦痛を和らげようとしている。飲食店での食体験というのは、実は店に入る前から始まっている。これからは店に入る前の体験にどれだけ付加価値があるのかも差別化ポイントになってくるに違いない。(イデア・レコード・左川裕規)