第39回ATP賞ドラマ部門の奨励賞受賞と高評価を得た「À Table!〜歴史のレシピを作ってたべる〜」の続編となる、「À Table!〜ノスタルジックな休日〜」が現在BS松竹東急にて放送中。主演の市川実日子さんの夫役として前作に続き出演する中島 歩さん。今年すでに10作品以上に出演する今最も忙しい俳優・中島さんに、続編への感想や、最近の環境の変化についてお話を聞きました。また、多趣味な中島さんに最近にハマっているモノについてもたっぷり伺いました。

 

※こちらは「GetNavi」2024年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

中島 歩●なかじま・あゆむ…1988年10月7日生まれ。宮城県出身。モデル活動後、2013年に舞台「黒蜥蜴」で俳優デビュー。2023年は映画11作、ドラマ10作、2024年も映画8作品、ドラマ4作品に出演。主な近年の出演作に「不適切にもほどがある!」「柚木さんちの四兄弟。」、映画「四月になれば彼女は」「劇場版 アナウンサーたちの戦争」「ナミビアの砂漠」(9月公開)がある。公式HP

【中島 歩さん撮り下ろし写真】

 

宮藤さんも一部の単館映画好きおじさんだったんです(笑)

──長澤まさみさんとのやりとりが楽しいKINCHO「虫コナーズ」のCMをはじめ、最近は映画・ドラマ・CMとさまざまなジャンルで活躍されていますが、周囲の反応や変化はありましたか?

 

中島 今までは一部の単館映画好きのおじさんたちに熱烈に支持してもらっていたんですが、地上波のテレビに出たことによって、日本映画を見ない友だちから連絡が来るようになりました。やっぱりテレビはスイッチを入れれば見られるし、あとCMも自然と目に入ってくるので、見てもらう機会は増えてるなぁと実感しています。

 

──街で声をかけられることも増えたのでは?

 

中島 それもありますね。以前は街で声かけられるとしても、一部の単館映画好きのおじさんだったんですけれど、この間も電車でおそらくテレビドラマが好きなおじさんだと思うんですが、ジロジロ見られました。きっと「不適切にもほどがある!」の影響でしょうね。

 

──「不適切〜」では吉田 羊さん演じるサカエに告白する、頼りない中学教諭・安森を演じて話題になりました。

 

中島 スタッフさんは憧れていた「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」の方たちで、共演者もすごい方ばかりだったので、最初はビビっていましたが、脚本の宮藤(官九郎)さんがインパクトあるブッ飛んだ役として面白くしてくださったので、とても感謝しています。そのことを打ち上げで、宮藤さんに話したら、「ちょこちょこ映画館で拝見していました」と言われて……。宮藤さんも一部の単館映画好きおじさんだったんです(笑)。

 

──大学時代には落語研究会に在籍していた中島さんですが、今も立川談志師匠の「落語は人間の業の肯定」という言葉を胸に俳優業をされているそうですね。

 

中島 談志師匠のその言葉にはとても影響を受けています。僕、ひどくて下衆な役を演じることが多いので、実際その言葉を救いにして、これまでやってきたところもあるんですよね。落語といえば、この間NHKで再放送された古今亭志ん朝師匠の「火焔太鼓」を見たんです。落研時代に学祭で「火焔太鼓」をやったぐらい志ん朝師匠が好きで、当時は映像が手に入らなくて、音源を参考に学んだので、初めて映像を見ることができて、感動しちゃいましたね。

 

普遍的で親しみやすい味なので、きっと作りたくなると思います

──そんな中島さんの最新ドラマ「À Table!〜ノスタルジックな休日〜」が放送中です。これは市川実日子さん演じるジュンと夫婦役を演じた新感覚グルメドラマの第2シーズンですね。

 

中島 ここまでメインの役での続編は今までになかったので、好評を博して、再びヨシヲを演じられることはうれしかったです。「ノスタルジックな休日」の副題どおり、ロケ撮影が増えたのですが、天候にも恵まれ、そのときの楽しさみたいなものがジュンとヨシヲのリアクションにも出ていると思います。

 

──“あるレシピ”を参考に2人が調理する料理も、前シリーズ「〜歴史のレシピを作ってたべる〜」とは大きく異なります。

 

中島 前のシーズンは偉人が食べていた料理を再現していたので、「何これ!?」っていう面白さで、視聴者の方も「どんな味なんだろう?」という感じだったと思うんです。でも、今回は「暮しの手帖」のレシピに基づいた料理なので、もう純粋においしいんです。究極の家庭料理というか、普遍的で親しみやすい味なので、きっと作りたくなると思いますよ!

 

「自分たちは限られたことしかやってない」って気づいた

──アドリブも飛び交う舞台劇のような空気感での現場はいかがでしたか?

 

中島 今回も大変でした。ただ僕自身、普通に企画書や原作、ト書きやセリフがきちんと書いてある台本があり、文字や言葉から映像作品を作ることに、最近ちょっと疑問を持っていたんです。例えば、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の映画を観ていると、映画館の空間の使い方や時間の使い方がほかの映画と違いすぎて、「自分たちは限られたことしかやってない」って気づかされていたんです。それで、音と映像で作り上げる表現方法として、なんか変なところから作りたいなって思っていたところ、この作品に出会ったんです。台本はありますが、ファジーな部分がいっぱいある。アドリブのように俳優部に委ねられている部分が多いですし、カメラ位置や、監督が感覚的にやりたいことを立体的に作っていく現場でした。これを連続ドラマでやれたことは、いい経験になりました。

 

──ヨシヲは漬物メーカー勤務の設定ですが、「お耳に合いましたら。」でも漬物メーカーの社員役でした。

 

中島 何でしょう? 昭和感ですかね? 自分から意識しているわけでもないですし、かといってモダンな人間でもない気もするし。「ノスタルジックな休日」という副題ですが、自分が回顧主義になっていたら、ちょっと嫌だなとは思っていたんですよね。見る映画や聴く音楽、服や家具にしても、そういう人間でいたくないけど、実際そういうものも好きだから、否定はできない。だから、現場にいるときは、時間を飛び越えるっていうか、今のレシピとレトロなレシピも、全部均等に体験できると思うようにしたんです。ちょっと観念的な話ですけど、そういう哲学っぽい気持ちになりました。この作品も今を生きている僕らが作っているのだから、単なる回顧主義にならないといいなって思っています。

 

最近はジュリア・ロバーツの作品ばかり

──ちなみに、いま気になる俳優はいますか?

 

中島 以前はアダム・ドライバーだったのですが、最近はジュリア・ロバーツの作品ばかり観ていますね。アマプラ(Amazonプライム・ビデオ)で「ホームカミング」というドラマ見て、Netflixで「終わらない週末」っていう映画を観ているうちに、どんどん気になってしまって……。どちらもサム・エスメイルという監督が撮っているんですが、ジュリア・ロバーツが自虐ギャグみたいなこともやっていて、その演出もかなり面白いんですよ。

 

──それでは、中島さんのこだわりのものありますか?

 

中島 家電というかオーディオですね。(GetNavi7月号を見ながら指を指して)スピーカーはJBLの「4312B」を使っています。音楽はあらゆるジャンル聴きますし、レコードもCDもとても集めるし、サブスクでも聴きますね。「4312B」はジャズドラムの生音が聴きたいと思って買ったんですが、音響的な面白さというか、こっちから高周波の音が飛んできたりとかっていうことが楽しいですね。最近は大学のときにハマっていたダブに戻ってきた感じです。

 

 

À Table!〜ノスタルジックな休日〜

毎週水曜夜11時より、BS松竹東急(全国無料放送)にて放送中(全13話/各話30分)

(STAFF&CAST)
企画・シリーズ構成:清水啓太郎
監督:吉見拓真、倉光哲司
原案:『おそうざい十二カ月』『おそうざいふう外国料理』(暮しの手帖社 刊)
脚本:横幕智裕
出演:市川実日子、中島 歩、芋生 悠、神野三鈴、安奈 淳、矢代朝子

ドラマ公式 X: @BS260_drama
ドラマ公式Instagram:@bs260_a_table

 

撮影/干川 修 取材・文/くれい響 ヘアメイク/小林雄美 スタイリスト/上野健太郎