アロマの情報発信施設「AEAJ Green Terrace」

閑静な住宅街にたたずむ「AEAJ Green Terrace」

JR原宿駅東口から徒歩7分。2023年に開館した「AEAJ Green Terrace」は、アロマテラピーの普及・調査・研究などの活動を行う日本アロマ環境協会(AEAJ)が運営する、アロマの情報発信拠点です。1階は自由に過ごせる「アロマラウンジ」や、世界中の精油の香りを試せる「アロマラボラトリー」、アロマや植物に関する書籍を集めた「アロマライブラリー」があり、2階は日本アロマ環境協会(AEAJ)のオフィス、3階は眺望がいい「アロマテラス」。さまざまなコンテンツを通して、アロマの魅力を体験できる施設となっています。
入館は公式サイトから予約が必要です。13時から18時まで、1時間単位で予約可能(1日5枠、イベントで予約できない時間もあり)。利用時間は1時間、入館料は1人500円です。

ガラスウォールで覆われた木組みのファサード

木組の構造が印象的な建物は、建築家の隈研吾氏が設計。“神宮前の小さな森”をコンセプトに、鉄骨や釘などの金属を極力使わず、伝統的な「木組み」の建築技法を取り入れ、国産ヒノキを使用しています。木材は二酸化炭素を固定させる性質があること、また、都内近郊のヒノキを使うことで運搬時の二酸化炭素排出量を軽減させることなどから、地球環境にも配慮したサステナブル建築と言えます。

ソロおすすめPoint

完全予約制、さらにひと枠20名までと利用人数を制限しているため、混雑することはありません。予約時間内であれば、「アロマラボラトリー」、「アロマラウンジ」、「アロマライブラリー」など館内のコンテンツを自由に利用でき、アロマと向き合うひとり時間を楽しめます。


多彩な植物が出迎える「アロマコリドー」を通り館内へ

「アロマコリドー」の道には廃棄瓦を含むリサイクル材を使用している

エントランスまでのアプローチは、精油の原料や日本の植物計43種類、1598本を植栽した、「アロマコリドー」とよばれる香りの回廊となっています。春はミモザやレモンタイム、夏はラベンダー、ローズ、ユズ、秋はキンモクセイ、冬はウメなど季節の花が咲き、回廊に彩りを添えます。

植物にはネームプレートもある

ゼラニウムは葉や茎に香り成分が含まれているため、擦るとさわやかな香りが広がります。そのほか、ティートリーなど、精油の定番ですが、実際に見る機会が少ない貴重な植物にも出合えます。

香りをテイスティングできる「アロマラボラトリー」

インフォメーションで予約確認を済ませると、施設ガイドとAEAJオリジナルボタニカルティー1包がもらえる

館内へ入ると、ヒノキの心地いい香りに包まれ、まるで森の中へ来たような清々しい気分になります。インフォメーションの先には「アロマラウンジ」があり、自由に座れるテーブルが設置されています。

「木組み」の組積構造を間近で見ることができる

天井を覆うヒノキの木組みのほか、床は水湿に強い岩手県産のクリの木、壁や階段は長野県産のカラマツのLVL(耐震・耐久性のある建材)と、国産木材を全方位で活用した、都会の中心で森を感じられる空間デザイン。

静岡や岐阜、愛知県産のヒノキを使用

ヒノキの木組みが天井を覆う様子は、木漏れ日をイメージしていて、大木の下で休憩しているような感覚。

「アロマラウンジ」の右奥にある「アロマラボラトリー」

まずは「アロマラウンジ」の右奥、世界中から集めた精油の香りを試すことができる「アロマラボラトリー」へ。精油は植物の花や葉、根、樹脂などから抽出した天然素材で、エッセンシャルオイルともよばれます。精油にはそれぞれ特有の香りと作用があり、リラックス効果から殺菌、虫除けまでさまざま。

ハーブ、フルーツ、樹木の約125種類の精油の香りが並ぶ展示棚、引き出しの中には花の香り、スパイスの香り、和精油が約110種類も揃っています。これだけの数が集まり、さらに市販ではあまり見かけない香りもあるので、とても貴重です。精油の種類や数は定期的に入れ替わるので、訪れた際には最新のラインアップを楽しめます。

展示棚にはガラス容器のなかに木のディフューザーがある

棚に並ぶハーブの香りを見ていると、ガラス容器に入ったタバコの精油を発見。蓋を取って香りを試してみると、タバコそのものというよりも、植物の葉の香りも感じられます。さらに、芳醇なチョコレートの香りがするカカオ、スパイシーで清涼感があるローズマリーカンファーなど、それぞれ特有の魅力を改めて知ることができます。

ガラス容器の蓋に精油の名前と番号が記載されている

引き出しの中には花やスパイスの香りのほかに、シソやハマナスなど、日本古来の植物から抽出した和精油が約50種類もあります。和精油のなかで「トサポンカン」が気になったので、ガラス容器に入ったムエット(試香紙)を取って香りを試してみます。ミカン科の柑橘類ということもあり、さわやかでほんのり甘い香り。

精油の名前をつい忘れてしまいそうな人には、ムエットにボールペンで名前を書くこともできるので、記載して持ち帰ることもできますよ。

気に入った精油について深く知りたい人は、「アロマボラトリー」内にあるiPadを使って調べることができます。おもな産地や抽出部位、抽出法などの情報がデータベース化されているので、精油の香りが入ったガラス容器に記載された番号を入力するだけで、簡単に検索できます。また、館内ではスマートフォンからも同様の情報を調べることができます。

ソロおすすめPoint

今まで出合うことがなかった香りを試すことができる貴重なコーナーでした。香りに没頭するひとり時間は、なんともぜいたくです。精油を試しすぎてリセットしたいときは、備え付けのコーヒー豆を嗅いでみるとすっきりしますよ。

「アロマラウンジ」で読書&ティータイム

「アロマラウンジ」に飾られたアートワーク「Reafs」

「アロマラウンジ」は自由にくつろげる空間ですが、アートワークや体験コーナーもあります。まず、「アロマラウンジ」の手前に飾られた涼しげなガラスのオブジェは、回収した精油瓶を高温で溶かして形成した創作アート「Reafs」。葉のような形が特徴で、アロマディフューザーとして飾られています。

精油瓶回収ボックス「AEAJ Recycling Box」。回収前に無水エタノールで洗ってから回収ボックスへ

「AEAJ Green Terrace」では常時、使い終わった精油瓶の回収やリサイクル、アップサイクルを行っているので、自宅に保管している人は洗浄してから持参しましょう。

アートワークの近くにある「アロマテイスティング」のコーナー。テーマや展示内容は定期的に変わる

「アロマテイスティング」コーナーでは、小説や物語をイメージしたアロマブレンドの香りを体験できます。

『不思議の国のアリス』のアロマレシピは調香師・エバリュエーターの津田啓一郎氏が監修

訪れた日は、物語をイメージした香りが並んでいて、イギリス文学の『不思議の国のアリス』やフランスワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』など5冊。ガラス容器を持ち上げたら、鼻を近づけて香りを楽しみます。

「アロマライブラリー」

インフォメーションの手前にある本棚「アロマライブラリー」にも注目です。アロマや植物、環境に関連する書籍が約1400冊も揃い、なかには専門書や絶版になった貴重な本もあります。

本棚の下にも関連本がずらり

これらはすべて自由に閲覧できるので、気になる本があれば「アロマラウンジ」でゆっくり読書も楽しめます。

ハイビスカスやローズヒップ、レモングラスなど9種類のハーブをブレンドした「AEAJ オリジナルボタニカルティー」。環境保全のためマイボトル持参を推奨している

マイボトルを持参すれば、インフォメーションでもらった「AEAJオリジナルボタニカルティー」を飲みながらくつろぐことも可能。「アロマラウンジ」のキッチンカウンターにウォーターサーバーがあるので自由に給湯できます。マイボトルを持っていない、忘れた人には、「AEAJオリジナルボトル」1650円を販売しています。自宅に持ち帰ってティータイムを楽しむのもOK。

AEAJオリジナルボタニカルティーは、甘酸っぱくてさわやかな味わい。暑い日はアイスティーにするのもおすすめです。ヒノキの豊かな香りと静寂に包まれた「アロマラウンジ」で本を読みながらボタニカルティーでリフレッシュ。なんて心地いいソロ時間なのでしょう。

ソロおすすめPoint

人数が制限されているため、静かな空間の中で自由にくつろげます。「アロマライブラリー」にある書籍は、アロマを中心に、植物やハーブ、環境、伝統医療・代替医療など多彩で、普段出合わない本が多く、新しい知識を得られそう。備え付けのiPadまたはスマホで書籍を検索することもできます。


開放的なパノラマビューの「アロマテラス」

天候などにより中止する場合もある

3階の「アロマテラス」は、毎時50分ころからスタッフが案内するシステム(不定期開催のため、実施されない日もある)。エレベーターもありますが、カラマツの階段を上りながら向かいます。目の前には山手線を挟んで、「国立代々木競技場」がそびえ立ちます。この建物は隈研吾氏が尊敬し、影響を受けた建築界の巨匠・丹下健三氏が設計。また、緑あふれる神宮前の森も一望できます。刎木(はねぎ)を重ねた“ヤジロベエ構造”のテラス屋根を眺めながら、パノラマビューを満喫。木材が生きる建築と都市の自然が調和する開放的な空間でした。

通年開催する、香りのワークショップにも参加したい

フレグランスボトルは4種類、季節によって変わる(写真はイメージ)

「AEAJ Green Terrace」ではワークショップも開催しています。そのひとつ、「絵画」をテーマとしたアロマブレンドワークショップ「Aroma Bar〜名画から広がる香りの世界〜」では、有名な絵画をイメージした香りに、絵画に対する自身の解釈に紐づく精油を選んでブレンドし、自分だけのフレグランスを作ることができます。名画は季節ごとに変わり、7月のテーマは、クロード・モネの『睡蓮』(写真左)。モネは睡蓮や水面に映る緑、空など、移りゆく時間や季節を描いています。
7月の開催日は毎週金・土曜で、予約は公式サイトから。所要時間は15分程度で、料金はひとり4460円(入館料も含む)。ワークショップ終了後には、「アロマラボラトリー」など施設内の各コンテンツも利用することができます。

まずはベースとなる香りを試します。モネの絵画『睡蓮』をイメージした、水彩画家の佐原和人さん監修のフレグランスは、水面にきらめく花や葉、光、そこに映り込む周囲の空気を表現しているそう。精油はホーリーフ(クスノキ)、ラベンダー、イランイランが使用されていて、さわやかで心が和らぐ香りです。

次は感情に紐づく香りを配合していきます。『睡蓮』を見ながら、カウンセリングシートに記載されている“喜び”“憂い”など6つのキーワードから絵画のイメージに合う言葉を選びます。数年前に『睡蓮』の連作を鑑賞したことがあるので“追憶”をチョイス。スタッフがムエットに精油を滴下してくれるので、深く息を吸い込むようにして香りを確かめます。リンゴのような甘さが広がり、癒やしに満ちた印象です。

感情に紐づく香り、ブラインド・テイスティングで選んだ精油は、それぞれベースのアロマブレンドに1滴ずつ落としていく。選んだ精油によっては色が変わる

ベースの香りに、感情に紐づく精油を1滴加えます。最後にブラインド・テイスティングという、名前を伏せた4種類の香りをムエットで試して、自分が一番好きな香りを選びます。どんな香りか分からない状態でのテイスティングは、少しドキドキ感もあります。懐かしさ、幸福感のある甘さなど、さまざまな香りのなかから、なじみのあるフローラル系の香りを選びました。

ブラインド・テイスティングで選んだ精油を1滴加えて混ぜると、名画『睡蓮』から広がる香りを閉じ込めたアロマスプレーのフレグランスが完成です。華やかで明るく、暑い夏にもぴったりなさわやかさも感じられます。それにしてもたった1滴の精油だけで香りの印象が変わるなんて……。植物の力を改めて感じることもできました。
アロマスプレーは、就寝前に枕カバーなどのリネンにスプレーすれば、リラックス効果が期待できます。空間に吹きかければ部屋中が心地いい香りで満たされます。防腐剤は入っていないので1カ月以内に使うことをおすすめします。

ソロおすすめPoint

自分の解釈に紐づく香りを選ぶ工程は、ひとりでじっくり香りと向き合い、香りを試す、ソロ活動向けの制作です。ワークショップに参加すれば、館内にあるコンテンツを自由に利用できるので、アロマスプレーに使用する精油について「アロマラボラトリー」で調べてみたり、さらなる充実のソロ時間を過ごせます。


原宿の閑静な住宅街にたたずむ「AEAJ Green Terrace」。隈研吾氏による木材を多用したヒノキ香る建物に、四季折々の植物が出迎えるコリドー、そして膨大な精油の香りを集めたラボラトリーなど、まさに五感でアロマを体験できる施設そのものでした。ぜひ、自分にぴったりな香りを探しに出かけてみませんか。

■AEAJ Green Terrace(えーいーえーじぇー ぐりーん てらす)
住所:東京都渋谷区神宮前6-34-24
TEL:なし
営業時間:13〜18時
定休日:日・月曜、祝日
料金:入館500円(ワークショップの料金は内容によって異なる、施設利用料も含む)
予約 :www.aromakankyo.or.jp/greenterrace(AEAJ Green Terrace特設サイト)

ソロおすすめMemo

▪️ソロ率:60%(店舗への取材に基づく)
▪️おすすめの利用シーン:アロマの香りでリフレッシュ、癒やされたいとき、精油や植物について学びたいとき


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Text:木村秋子(editorial team Flone)
Photo:yoko


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