日本などの高所得国では民主主義に対する満足度が近年低下している
人々の意識や傾向などの調査を実施するシンクタンクのピュー・リサーチ・センターが実施した2024年の調査により、世界中で多くの人々が自分の国の間接民主主義に不満を抱いていることがわかりました。さらに同じ調査では、高所得の国ほど、民主主義に不満があることが明らかになっています。
Rising dissatisfaction with democracy in high-income nations | Pew Research Center
ピュー・リサーチ・センターは2017年ごろから、カナダ、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、日本、オランダ、韓国、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカの12か国を「経済的に先進的な民主主義国」と指定し、それぞれの国民に対し「自国の民主主義の現状にどれくらい満足しているか」という質問をしていました。以下が2017年から2024年に回答された「民主主義への満足度」を表したグラフで、青いグラフが不満、緑のグラフが満足と回答した割合です。グラフでは2017年から2019年にかけて満足度が低下していますが、2021年に新型コロナウイルスの流行があり満足度が回復したとピュー・リサーチ・センターは指摘しています。
しかし、2021年以降は再び民主主義への不満が増加しています。2021年に「自国の民主主義に満足している」と答えた割合は半数近い49%でしたが、2024年6月の調査ではわずか36%まで減少しました。
以下は、ピュー・リサーチ・センターが調査を実施している12の民主主義国のうち、継続的に質問を行う9か国を国別にグラフにしたもの。グラフによると、2021年から2024年の間に、カナダ、ドイツ、ギリシャ、韓国、イギリス、アメリカの6か国で満足度が10ポイント以上減少しています。日本は2021年から2024年で満足度の低下が7ポイントと、9か国のうちもっとも少ない変化率となっています。
また、2024年春に実施された調査では、継続している12か国に加えて、19か国を追加した合計31か国に聞き取り調査をしました。結果として、中央値で54%が「自国の民主主義に不満がある」と答え、45%が「民主主義に満足している」と回答しています。
アジア圏のデータを見ると、シンガポールが最も満足度の高い80%で、これは31か国のうち最大の数値となりました。一方で、日本はアジアでは最も満足度の低い31%でした。
ピュー・リサーチ・センターによると、民主主義の仕組みに対する人々の感情は、経済の仕組みに対する人々の考えと深く関係しているそうです。調査対象となった31か国すべてにおいて、国の経済を否定的に評価する人々は、肯定的に評価する人々よりも、自国の民主主義に不満を抱いている可能性が高いことが判明しています。
また、アルゼンチン、チリ、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド、スペイン、アメリカの8か国では、教育水準の低い人ほど、自国の民主主義に満足していないことがわかりました。そのほか、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ドイツ、ペルー、シンガポール、韓国では、35歳未満の成人は、50歳以上の人よりも民主主義に満足している傾向がありました。上記の国以外では、教育水準や年齢による違いはほとんど見られませんでした。