大後寿々花、“天才子役”として注目され…13歳で連ドラ初ヒロイン。学校生活は試験が大変「いつも友だちにノートを借りてました」

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2005年、11歳のときにハリウッド映画『SAYURI』(ロブ・マーシャル監督)に出演し、ハリウッドデビューを飾った大後寿々花さん。

可憐なルックスとたしかな表現力で天才子役として注目を集め、多くのドラマ、映画に出演。2007年、ドラマ『セクシーボイスアンドロボ』(日本テレビ系)では七色の声を操るヒロインの少女・ニコ役。同年に公開された映画『遠くの空に消えた』(行定勲監督)では、父親がUFOに連れ去られたと信じる少女・ヒハル役など難役にチャレンジすることに。

 

◆連ドラで初めてヒロインに

7歳で子役として活動を始めたときは、まだ仕事という意識はなかったが、映画『SAYURI』に出演したことで芝居に対する考え方が大きく変わったという。

2007年、大後さんは、『セクシーボイスアンドロボ』で連続ドラマ初ヒロインに。七色の声を操る14歳の少女・ニコを演じた。ニコは、ある誘拐事件を解決に導いたことから観察眼を見込まれて、“セクシーボイス”を名乗り、相棒の青年・ロボ(松山ケンイチ)とともにさまざまな依頼を解決していく…という内容。

「あのときは中学1年生になるので、セーラー服がすごく印象に残っています」

――とても似合っていましたね。初めて松山ケンイチさんと共演されていかがでした?

「松山さんは完全にロボだったので、休憩中もロボットのアニメをずっと見ていらして。いつでも“ニコ”と“ロボ”で、気さくに話しかけてくださっていました」

――連ドラのヒロインは初めてでしたね。

「はい。連ドラは放送日が決まっているので、時間が足りなくても撮り切らないといけない。撮影終盤に近づくにつれて放送日に追われる形で撮影をしていました。連ドラの大変さを実感しました」

――学校生活は普通に送ることができていたのですか。

「そうですね。中学生だったので、学校の試験が結構大変で、いつも友だちにノートを借りてコピーさせてもらってということをずっと繰り返していました」

同年、神木隆之介さん主演映画『遠くの空に消えた』も公開。同じ1993年生まれで、子役時代から共演機会も多い神木さんは、芸能界での幼なじみのような存在だという。

神木さん演じる主人公は、空港建設計画に揺れる田舎町に引っ越して来た空港公団団長(三浦友和)の息子・亮介。やがて空港建設を巡る大人たちの争いに、亮介も地元の子どもたちも巻き込まれることに…という展開。大後さんは、父親がUFOに連れ去られたと信じている少女・ミハルを演じた。

――登場の仕方からちょっと不思議な感じでしたが、撮影はいかがでした?

「当時は『北の零年』(行定勲監督)の記憶がすごくあったので、『撮影はどのぐらいの期間かかるんだろう?』って考えていたのですが、『遠くの空に消えた』はそんなに撮影期間はなかったんです。

この作品も北海道で撮影でしたけど、『北の零年』のときとは違って雪がなかったので、全然違う景色でした」

――神木隆之介さんと初めて共演されたのは?

「『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)というドラマで一度お会いしていて、その後『あいくるしい』(TBS系)というドラマで共演しました。

この映画のお話は行定監督から直接いただいたのですが、神木さんとの共演もうれしかったですし、当時の私たち等身大の子たちの話だったので、絶対にやりたいと思った作品でした」

 

◆女の子同士の取っ組み合い

2009年には、西原理恵子さんの自伝的映画『女の子ものがたり』(森岡利行監督)に出演。深津絵里さん演じる主人公の高校生時代を演じた。

スランプから抜け出せない漫画家の菜都美(深津絵里)は、高校を卒業して以来帰省していなかった故郷の愛媛に。故郷を出て以降、絶縁状態になっているかつての友だちとのかけがえのない少女時代の記憶が蘇り、人生を見つめ直すことに…。

――かつて大げんかをして決別した親友・きみこ(波瑠)とみさ(高山侑子)が、実はこのまま故郷にいたら菜都美もダメになると思い、自分を故郷から送り出していたことがわかるという切ない設定でした。

「そうですね。やっぱり最後の波瑠さんとの取っ組み合いのシーンが印象的でした。撮影の前日の夜に1回リハーサルはしているのですが、女の子ってそんなに取っ組み合いのケンカになることってあまりないじゃないですか(笑)。

だから、どうしたら大袈裟になりすぎず、ぶつかり合えるかというのが想像つかなくて。

でも、私が演じた菜都美は、突き飛ばされるまで取っ組み合いのケンカになるとは思っていなかったんじゃないかなって。だから、あまり考えすぎないで感じたままに動いたほうが自然に映るんじゃないかって思った記憶があります」

――取っ組み合いのシーンの撮影はスムーズにいきました?

「リハーサルはしましたけど、撮影になるとまた違うので。あそこまでドロドロになるとは思っていなかったです(笑)」

――かなり荒っぽい方法ではありますが、自分を送り出してくれたということが後にわかります。グッときますよね。

「そうですね。私は送り出される側でしたけど、波瑠さん演じるきみこが、『もう出て行け!』っていうのが『大好きだよ』という意味だよ、って監督さんがずっとおっしゃっていたので、それはやっぱり胸に来ました。撮影のときは無我夢中で、気がついたらいつの間にか涙を流していましたね」

――スランプに陥って、10何年ぶりに帰郷してすべてがわかったときには、きみこはもうこの世にはいないわけじゃないですか。切ないですね。

「女の子の友情が切ないなって思いました。でも大好きな友だちを送り出すときには、これが精いっぱいだったんだなあって。

でも、銭湯の中に飛び込んだり、トラックの後ろに乗ったりという、普通は経験できないシーンもあったので楽しかったです。それと主人公を小学生時代(森迫永依)、高校生時代(大後寿々花)、現在(深津絵里)という3世代で描く映画というのはあまりなかったので、良い経験でした。おもしろかったです」

 

◆松山ケンイチと再共演!

『女の子ものがたり』が公開された2009年には、映画『カムイ外伝』(崔洋一監督)も公開された。

掟に縛られた忍の世界から自由を求めて抜け出した忍者カムイ(松山ケンイチ)は、漁師・半兵衛(小林薫)の命を助けたことで、彼の家に迎え入れられる。カムイは、半兵衛の妻でカムイと同じ抜忍のスガル(小雪)らとともに一時の平穏を得るが、村人の密告によって再び追われる身となってしまう。大後さんは、半兵衛の娘でカムイに恋心を抱くサヤカ役を演じた。

――『セクシーボイスアンドロボ』で共演された松山ケンイチさんと、今度はお互いに惹かれ合うという設定でした。

「松山さんは、『セクロボ』のときとは全然違って、『カット』がかかるとどこかに行くんですよ。スーッて消えるんです。それで、撮影が始まる頃にまた戻ってきて…初めて見る姿ですごく新鮮でした。

松山さんは演じる役によって全然違うんです。『セクロボ』のときはコンビの役だったので、いつも一緒にいて、学校とかロボットの話をしたり、アニメを見てニコニコしていたんですけど、それが『カムイ外伝』のときにはひとりでどこかにいらっしゃって…。本当にカムイになっていました」

――お互いに惹かれ合っているのに命を落とすことに。

「そうですね。結局実らないわけじゃないですか。どちらかというと、多分、サヤカがすごくカムイに気持ちがあって。カムイは戸惑っている思いのほうが強かったと思うんですけど」

――でも、かけがえのない存在になるわけですが、不動(伊藤英明)に村人全員毒殺されてしまいます。撮影はいかがでした?

「結構大変でした。最初は冬に沖縄で撮影していたのですが、1回中断して夏にまた撮影することになって。もともと冬だったので衣装の着物に裏地がついていたんですよ。

それがまた真夏の撮影になって、熱中症気味になって苦しんでいる方が結構いらっしゃって。沖縄の地元の方に『普通に真夏の砂浜の温度が60度ぐらいになるよ』って言われたのですが、ほとんどみんな裸足に草履で。でも全身が熱いから感覚があまりわからないという感じでした。

みんな毒で倒れて死んでいるところは、もう本当に暑くて。そのなかで、私はアクションシーンはなかったんですけど、他の役者さんは結構アクションシーンがあったので大変そうでした」

――子役時代から結構過酷な撮影が多いですね。

「自分ではあまりわからなかったのですが、今考えてみるとそうかもしれないですね。当時は結構長期で撮影というのがありましたけど、今は昔みたいに長い地方ロケとか、みっちり時間をかけて…というのは少ないので、懐かしいです」

2012年、大学に進学し、学校生活と仕事を両立させ、大学進学後も『二十四の瞳』(テレビ朝日系)、大河ドラマ『八重の桜』(NHK)などに出演。2016年に卒業後、女優業を本格化。2024年5月に映画『湖の女たち』(大森立嗣監督)が公開され、6月29日(土)には、映画『幽霊はわがままな夢を見る』の公開が控えている。

次回は、映画『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八監督)の撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:木戸かほり