春のGIシリーズを締めくくるのは、中央競馬上半期の総決算となる「春のグランプリ」GI宝塚記念(6月23日/京都・芝2200m)だ。

 過去10年の結果を振り返ってみると、3連単の配当はすべて万馬券。10万円超えの高額配当が4回もあって、オイシイ配当が期待できる一戦と言っていい。

 今年は阪神競馬場の改修工事のため、18年ぶりの京都競馬場での開催となるが、その18年前も波乱の決着だった。単勝1.1倍という断然人気のディープインパクトが後続に4馬身差をつける完勝劇を披露したが、2着に10番人気、3着に9番人気の馬が突っ込んできて、3連単は4万円台の好配当となった。

 梅雨の時期の開催で馬場状態がつかみづらい点が、このレースを難解にしているポイントのひとつだが、今年はどうか。デイリー馬三郎の吉田順一記者はこんな見解を示す。

「先週から芝は一番外側のDコースを使用。乾燥度の高まった土曜日はクッション値が10.6で、芝の各レースではかなり速い時計が計測されました。前日の夜に雨が降った日曜日も、午前中の馬場はやや重発表でクッション値は9.6と下がりましたが、好天によって午後には馬場も回復。メインのGIIIマーメイドS(京都・芝2000m)は前半5ハロン58秒3、後半5ハロン58秒9の平均ラップで、1分57秒2という好時計での決着となりました。

 とにかく乾燥度が高まれば、前と内に強いトラックバイアスが生じますが、今週末は土曜、日曜ともに雨予報。雨中での競馬が続けば、さすがに芝の塊が飛ぶような馬場になるかもしれません。

 そうなると、宝塚記念の頃にはジョッキーが内を避ける可能性も十分にあり、後ろからでは差し込みづらい設定となり、前でしぶとさを発揮できる馬が優勢になるでしょう。また、そうした状況では、ジョッキーの進路取りなどによって、着順に影響が出そう。出走メンバーの力関係からして、時計の速い良馬場なら順当な結果が濃厚と見ていましたが、天気が崩れることで波乱含みとなった印象です」

 ということは、1番人気が予想されるドウデュース(牡5歳)も盤石とは言えないかもしれない。吉田記者がその点についても触れる。

「海外帰りのドウデュースは追い切りがポイントと思っていましたが、今までにないぐらい順調な調整過程。前走のGIドバイターフ(3月30日/メイダン・芝1800m)は直線で前が詰まって終えず、消化不良のまま終わってしまいました。しかし、おかげで目いっぱい走らずに済んで、疲れは皆無。(追い切りでは)この馬らしい掻き込みの利いたフットワークながら回転が速く、過去イチのパフォーマンスを示したと言っても過言ではありません。

 現役のトップホースが、申し分のない状態。(不安要素を探して)重箱の隅をつつくなら、出来がよすぎることで折り合い面がどうか、というくらい。良馬場であれば、一瞬のキレ味と底力であっさり、というシーンが想像できました。

 ただし、馬場が悪化すると心配。フットワークや脚元から渋化馬場も問題はないと思うのですが、差し込みづらい馬場になると、ポジショニングや仕掛けるポイント、戦法などの修正が求められるかもしれません。その場合、同馬への信頼は揺らぎます。(馬券的には)他の馬から入る発想も出てきそうです」

 そうして、吉田記者は2つのパターンを想定し、ドウデュースの逆転も狙える激走候補を2頭ピックアップした。1頭目は「ある程度前で運んで主導権が握れ、渋化馬場でも粘っこい走りができる馬」として、プラダリア(牡5歳)の名前を挙げた。

「ディープインパクト産駒は良馬場でキレ味を生かすイメージだと思いますが、例外なのがこの馬。腹袋が大きめのシルエットで、つなぎも少し寝気味でクッションに優れたタイプ。昨秋には、重馬場で行なわれたGII京都大賞典(京都・芝2400m)を快勝しました。3歳時にも重馬場の未勝利戦(阪神・芝2400m)で、後続に7馬身差をつける圧勝劇を演じています。


宝塚記念での大駆けが期待されるプラダリア photo by Eiichi Yamane/AFLO

 また、2走前には良馬場ながら芝の状態がよくなかったGII京都記念(2月11日/京都・芝2200m)を勝利。京都巧者でもあり、メンバー的に好位で運べそうなのもプラス材料です。

 1週前追い切りでは、本番で騎乗しない松山弘平騎手が厩舎とのつながりで騎乗(レースの鞍上は池添謙一騎手)。今までにないシャープな走りを披露しました。馬体もあばらをしっかりと見せて、光沢を帯びた好馬体を誇示。条件が整ったここは、絶好の狙い目です」

 吉田記者が推奨するもう1頭は、昨年の皐月賞馬ソールオリエンス(牡4歳)だ。「各ジョッキーが差し込みにくい馬場を意識して、有力馬のドウデュースやジャスティンパレス(牡5歳)などが早めに動く展開になった場合、台頭しそう」と言う。

「昨年のクラシックを沸かせた現4歳世代は、その後の結果が今ひとつ。そのレベル自体が疑われていますが、重馬場での消耗戦になれば、ソールオリエンスの場合、皐月賞で見せた脚力が生かされるはず。以前に比べれば、気性が成長し、折り合いもスムーズ。馬込みで我慢が利くようになったのは収穫です。

 ここ最近は、のびのびと走れているわけではないので、以前のような爆発力は影を潜めていますが、1週前の追い切りの雰囲気は久々によかったです。フルゲートにならず、広いコース設定となれば、スペースを見つけてストレスなく走れる可能性も高まります。

 直近のレースで振るわず、人気は急降下中。しかしその分、思いきった競馬ができます。一発狙いに徹することができる気楽さは不気味ですし、それこそが低迷打破への一因になるかもしれません」

 馬場悪化で今年も波乱含みの宝塚記念。ここに名前が挙がった2頭が、夏のビッグボーナスをもたらしても不思議ではない。