コパ・アメリカ2024はどこが優勝する? メッシのアルゼンチンか、ヴィニシウスのブラジルか
6月21日(日本時間)から「コパ・アメリカ2024」がアメリカで行なわれる。優勝候補筆頭と目されるアルゼンチンや、ライバルのブラジル。そして2強につづく注目チームや注目選手を紹介する。
コパ・アメリカ2024優勝候補筆頭のアルゼンチン。充実したメンバーを揃えている photo by Getty Images
ユーロ2024が始まったと思ったら、1週間と時を置かずに、今度はコパ・アメリカ2024が開幕する。しかも今大会は特別バージョンで、通常の南米10カ国だけでなく、北中米からもアメリカやメキシコなど6つの代表チームが参戦する。
要するに今年の初夏は、欧州だけでなく北中南米の優勝国も決定する、フットボールファンにとっては贅沢なひと時となる。
開催地はアメリカの14都市だ。2026年にカナダ、メキシコとW杯を共催する同国で、プレ国際大会を行なう意義もあるという。日本での放映権は、Amazon Prime Videoが取得している。
優勝候補の筆頭は、問答無用でアルゼンチンだ。日本時間6月21日(金)にアトランタで行なわれる開幕戦で、カナダと対戦するアルビセレステ(同代表の愛称)は現在、世界と南米のタイトルホルダーである。
つまり2021年に行なわれた前回大会と、その翌年に開催されたカタールW杯を制して"ダブル"を達成し、FIFAランキングでも首位に立つ世界最強チームなのだ。大手ブックメーカーも軒並みアルゼンチンの優勝予想倍率を最低としている。
むろん、その最大の要因はリオネル・メッシの存在にある。昨夏からMLSのインテル・マイアミ(会長はデビッド・ベッカム)でプレーするスーパースターは、開幕戦後の6月24日に37歳になるとはいえ、まだまだトップレベルを維持。ピッチでも、彼にしかできない技巧で違いを生み出すはずだ。
脇を固めるメンバーも一線級のタレントばかりだ。一昨年のW杯でメッシの相棒となったFWフリアン・アルバレスはその後、マンチェスター・シティで3冠を達成。今季はチームのプレミアリーグ4連覇に貢献している。中盤で主力を張るリバプールのアレクシス・マック・アリスターとチェルシーのエンソ・フェルナンデスも、サイドで異彩を放つ19歳のアレハンドロ・ガルナチョ(マンチェスター・ユナイテッド)もプレミアリーグのビッグクラブで活躍している。
同じくMFのロドリゴ・デ・パウル(アトレティコ・マドリード)とレアンドロ・パレデス(ローマ)は、チーム内でもメッシとは特に親密で、献身的な働きでエースをサポートする。最終ラインは36歳のファイター、ニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)が統率し、ゴールマウスにはカタールW杯の最優秀GKエミリアーノ・マルティネス(アストン・ビラ)が立ちはだかる。メッシの長年の盟友FWアンヘル・ディ・マリア(ベンフィカ)や、19歳の新鋭FWバレンティン・カルボーニ(モンツァ)らもジョーカーとして控えている。
この充実のメンバーを率いるのは、メッシと出身クラブ(ニューウェルズ・オールドボーイズ)とファーストネームをともにするリオネル・スカローニ監督だ。現在46歳の元代表サイドバックは、セビージャとアルゼンチン代表でホルへ・サンパオリ監督のアシスタントとしての指導経験しか持っていなかったが、2018年のロシアW杯後に代表監督に昇格すると、経験不足の批判をものともせずに、メッシを最大限に生かすチームを築き上げてきた。そして長年、世界最高のフットボーラーがいてもタイトルに届かなかったチームを、南米と世界の頂点に導いたのだ。
クオリティ、組織力、団結力、勝者のメンタリティ──そのすべてを備える現在のアルゼンチンは、進行中の2026年W杯南米予選でも首位に立っている。近年は接戦やPK戦も得意としており、トーナメント戦を勝ち上がるうえで必須の勝負強さも身につけている印象だ。
コパ・アメリカの優勝回数も、ウルグアイと並ぶ最多の15度と、伝統的にもこの大会に強い。直近の試合を5連勝して大会に臨む彼らなら、史上初のコパ、W杯、コパの3タテの可能性も十分に考えられる。
【ブラジルは監督選びに紆余曲折】その対抗馬と目されるブラジルは、FWのヴィニシウス・ジュニオールやロドリゴ(ともにレアル・マドリード)、MFブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル)、DFマルキーニョス(パリ・サンジェルマン)、GKアリソン(リバプール)、そして17歳の超新星FWエンドリッキ(パルメイラス)ら、個々だけを見れば世界トップレベルにあるが、チームは近年、迷走を続けている。
2019年に開催された前々回大会で優勝したまではよかったが、2021の前回大会ではブラジルの聖地マラカナンスタジアムで行なわれた決勝で永遠の宿敵アルゼンチンに敗れ、カタールW杯では準々決勝でクロアチアにPK戦の末に敗退。ここで6年以上指揮を執ったチッチ監督に別れを告げたものの、後任選びに苦しんだ。
ブラジルは長らく国際的に成功したシニアレベルの指導者を輩出していない。そのため、ブラジル協会は史上初となる外国籍の代表監督の招聘を検討し、レアル・マドリードのイタリア人監督カルロ・アンチェロッティやパルメイラスのポルトガル人監督アベル・フェレイラに白羽の矢を立てた。
しかしどちらも欧州と南米のトップに君臨するクラブでの仕事を続ける意向を示し、交渉は難航した。今年1月までふたりのブラジル人指導者が暫定的に指揮を執り、その間9試合の成績は3勝1分5敗。モロッコとセネガルに親善試合で敗れ、2026年W杯南米予選ではウルグアイとコロンビアに敵地で屈し、昨年11月には再び本拠地マラカナンでアルゼンチンに跪いている。目下、南米予選ではベネズエラやエクアドルらの後塵を拝す6位だ。
その後、フラメンゴを率いて2022年のコパ・リベルタドーレスを制したドリバウ・ジュニオール監督が、サンパウロの監督を辞めてセレソン(ブラジル代表の愛称)を指揮することに。今年に入って4度のフレンドリーマッチでは、エンドリッキらの活躍もあり、イングランドとメキシコに勝ち、スペインとアメリカに引き分けている。
かつてサントスを率いていた頃にネイマールをベンチに留めておいたことで、解任に追い込まれた経験を持つ現代表指揮官は、就任に際し「負傷中のネイマール抜きで歩みを進めていかなければならない」と殊勝なことを言った。
結局、昨年10月に左ヒザに重傷を負った現在32歳のアタッカーは、本大会に間に合わなかったが、これ自体はもはや大きな問題ではないだろう。前線にはヴィニシウスやロドリゴ、ラフィーニャ(バルセロナ)、エンドリッキら、32歳のネイマールより質の高い攻撃手がいるのだ。懸念すべきはむしろ、中央で構える本格派ストライカーの不在ではないだろうか。
【ウルグアイ、コロンビアも好調】この2強に続くのは、昨年5月にマルセロ・ビエルサ監督が就任してから絶好調のウルグアイ(現行のW杯南米予選で唯一アルゼンチンに土をつけて──しかも敵地で!──2位)に、W杯南米予選で唯一負けなしの3位につけるコロンビアあたりか。
前者ではMFフェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)やFWダルウィン・ヌニェス(リバプール)、DFロナルド・アラウホ(バルセロナ)といった欧州トップクラブで主力を張る選手たちが、ビエルサ監督の掲げるとびきりダイナミックなスタイルを実践している。
ネストル・ロレンソ監督が指揮を執る後者では、ベテランのMFハメス・ロドリゲス(サンパウロ)が攻撃のタクトを揮い、FWルイス・ディアス(リバプール)らが鋭いサイドアタックを仕掛ける。
しかしビエルサとロレンソもアルゼンチン人であることを考えれば、やはり南米のフットボールをリードしているのは、今大会の大本命アルビセレステと思える。
世界最古の大陸選手権の拡大版が、いよいよ開幕する。夜からユーロ2024を観て、朝になってコパ・アメリカ2024を観戦する──サッカー好きには、時間がいくらあっても足りない数週間が始まる。
※大会日程や結果は以下のとおり。