宮原知子×坂本花織 対談 前編(全2回)

『ファンタジー・オン・アイス2024』の千秋楽・静岡公演(6月22〜23日)を前に、出演スケーターである宮原知子さんと坂本花織さんの対談が実現! 前編では、ショーの舞台裏や思い出を楽しく語り合っていただきました。


『ファンタジー・オン・アイス2024』に出演している宮原知子さん(左)と坂本花織さん

【FaOIの楽しみは意外な名物】

ーーたくさんのアイスショーに出演してきたおふたりから見て、『ファンタジー・オン・アイス(以下、FaOI)』はどのようなアイスショーでしょうか?

宮原知子(以下、宮原) やっぱりライブ感があるところがFaOIの特徴かなと思っていています。とても豪華なアーティストさんたちとコラボレーションできるので、見ているお客さまもそうだと思うんですけど、滑っている側も「わぁ〜!」って感じになります。

坂本花織(以下、坂本) わかる、わかる! アーティストさんとのコラボもそうですし、最近のアイスショーは(出演者の層が)振りきっているショーが多いかなと思っていて。現役なら現役、またはほとんどがプロスケーター、とか。そのなかでFaOIはいつもちょうどいい感じに現役とプロがミックスしていて、自分たちが憧れていたスケーターさんとも共演できる。

宮原 たしかに!

坂本 年齢幅はどのアイスショーよりもある気がしますね。現役選手はFaOIに出ることですごくいい勉強になると以前から感じています。

ーーコラボレーションも大きな魅力のひとつですが、それ以外の楽しみはありますか?

坂本 (ポーズをとりながら)私はあれが好き!

宮原 エアリアル!

坂本 そう!(笑) エアリアルはリンクの上を飛翔しているところも好きなんですけど、(エアリアルの仕掛けをリンクサイドで)人力で引っ張っているのを見るのもすごく好きで(笑)。

宮原 「GO!」って言って。

坂本 グイッーてみんなで引っ張ったりね。そういう裏側を見るのも好きです。

宮原 それもFaOIの名物みたいになってきているよね(笑)。

坂本 そうそう。

宮原 ぜひ注目してほしいです。私はやっぱりライブ音楽で滑れることと、メンバーもすごく好きな方々がたくさん出ているので、一緒に滑れるだけでもうれしいです。あと、ちょっと裏側の話になるんですけど、毎年オープニングの曲が同じで半分以上のスケーターはその音楽を知っているので、オープニング前の裏側では音楽がかかるとみんな思いつきで変な踊りをしているんです。そうやってみんなで踊っている瞬間がとても好きです(笑)。

坂本 毎回アドリブでね。

宮原 見たらびっくりすると思います。スケーターがぎゅうぎゅうになりながら踊っているので(笑)。千秋楽に向けてどんどんテンションが上がっていきますね。

【見飽きないバラエティとライブ感】

ーーFaOIは幕張、愛知公演のAツアーと神戸、静岡公演のBツアーがありますが、宮原さんはどちらにも出演されていますよね。各ツアーの間はどう過ごされていましたか?

宮原 私はいったん家に帰って事務的なことをやったり、時間があったので今回は浅田真央さんのアイスショーを見に行ったりしていました。あとはBツアーに向けて自分の身体を休めたり、Bツアーで滑るプログラムの復習をしたりしていました。


AツアーとBツアーともに出演している宮原さん

ーー坂本選手は各ツアーの雰囲気の違いを感じますか?

坂本 私は今年のAツアーを見ていないんですけど、みんながSNSにアップしている様子を見てAとBは雰囲気が全然違うなと感じましたし、それもFaOIの面白いところだと思います。だからもし自分がお客さまの立場だったら全然見飽きないと思いますし、Bツアーはどんな感じなんだろうという楽しみもあると思います。

ーー宮原さんはAツアーで歌手の安田レイさんとのコラボレーション『Not the End』を披露されました。いかがでしたか?

宮原 今まで滑ったことがないちょっとロックな感じが入った曲で、自然に音楽に乗って音との一体感を感じながら滑ることができました。すごく楽しかったですし、めちゃくちゃ燃えました(笑)。

ーーやっぱり生歌に合わせて滑るのは違いますか?

坂本 録音されたものとはやっぱり全然違いますね。音源をいただいてずっと練習していても、本番になるとアーティストさんも気持ちが上がってきてアレンジが入ったりすることもあるので、こっちも「おっ、アレンジきた!」と思いながら歌に合わせて変えてみたり。それもすごく楽しいです。


『ファンタジー・オン・アイス』はアーティストとのコラボも見どころ

宮原 歌とのコネクションがあるので、同じ曲でも日ごとに違うというライブを感じながら滑っています。

【これぞアート...衝撃を受けた演技とは】

ーーこれまでのFaOIで印象に残っていることやエピソードなどはありますか?

宮原 ステファン(・ランビエール)とギャビー&ギヨーム(ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン)が続けて滑ったことがあって。その滑走順の時に、世界観がガラッとそれぞれの色になって、「これぞアート」というのを心から感じました。思い出のひとつとして強く残っています。

坂本 私は去年、コラボがなかったので出番が1部で終わって、そのあとはみんなの滑りを見放題だったんです(笑)。そこで見たパパダキス&シゼロンの『roses』は衝撃を受けました! 全身ブルーのつなぎの衣装を着たプログラムなんですけど、もうなんか......「うまっ!」って。

宮原 言葉が出ない。

坂本 そう。息を呑んだというか。『roses』だけは欠かさず毎公演見に行っていました。まばたきを忘れる美しさで、本当にすばらしいと思いました。

ーーせっかくの対談なので、お互いについてのエピソードはありますか?

坂本 お互いのこと〜?(笑)

宮原 あ、チーズケーキ食べに行った!

坂本 食べに行った! 去年だよね?

宮原 そう、去年(笑)。

坂本 「モザイク(神戸ハーバーランドumie mosaic)」のところに「観音屋」というお店があるんですけど、そこのデンマークチーズケーキがすごくおいしいんです。だからさっとん(宮原)に「おいしいから食べに行こうよ!」って誘って。「おいしい、おいしい」と食べていたら秒でなくなるという。

宮原 「もうなくなった、やばい」とか言って。これなんの話?(笑)

坂本 氷上の話は少ないなあ(笑)。

宮原 ニースラ(ニースライド ※膝をついて滑る)が大変だっていう話はいつもするね。

坂本 そうそう。あと、スマホをポンと置いておいたら、勝手にインカメで連写して。

宮原 カメラロールを開けたら全然知らない写真がわーってあって。

坂本 それで次に自分のスマホを見たらさっとんの顔でカメラロールが埋まっているっていう。そんなことしかない(笑)。

【ショーの魅力は個性とつながり】

ーー海外のスケーターが多いアイスショーですが、交流エピソードはありますか?

坂本 それはけっこうあります!

宮原 私はステファンやギヨーム、ポール(・ポワリエ)がいる時は、一緒にごはんに行くことが多いです。Aツアーの時もほぼ毎日一緒にご飯を食べて、変な冗談を言いながら笑って過ごしていました。

坂本 私はエアリアルのメリー(・アゼベド)さんとアルフォンソ(・カンパ)さんが、理由は忘れたんですけど、一昨年くらいから私のことを「メレンゲ」って呼んでくれていて。今年、西宮でリハーサルをやった時に(坂本がモデルを務めている)海上保安庁のポスターが貼ってあるんですけど、会うたびに「メレンゲ!」と言いながらポスターの敬礼を真似してくれたり、先日オリックス・バファローズの帽子を被っていたら「B」と書いてあるのを見て、ずっと「B......バオリ......?」って言っていましたね(笑)。

宮原 あと、海外スケーターのみんなは耳がいいので、日本語の歌もすごくうまいんですよ。歌詞をちゃんと歌えているわけではないんですけど、ちゃんとそれっぽく歌っていて。

坂本 そう、すごくうまい! ステファンがすごかった! 石井(竜也)さんのビブラートのマネがすごかったです。

ーーあらためてFaOIの魅力をひと言で表現するなんでしょうか?

宮原 ファンタジー。

坂本 おぉ〜!

宮原 毎年思うんですけど、スケーターの個性がすごく濃いと思うんです。一人ひとりのキャラがすごく濃くて、ショー自体が個性の集まりみたいな感じ。

坂本 わかる!

宮原 だから、ファンタジーにあふれているなといつもすごく感じています。

ーーでは坂本選手、最後にファンタジーを超えるひと言をお願いします。

坂本 豪華なアーティストさんが出てきたりステージが動いたりはもちろんなんですけど、やっぱり「つながり」かな。いろいろなつながりがあると思うんです。アーティストさんとのつながり、スケーター同士のつながり、スタッフのみなさんとのつながり、お客さんとのつながりがある。それぞれが自分のプログラムを披露するだけではなくて、プロスケーターも現役選手もアンサンブルも全員で協力してひとつのアイスショーをつくり上げているという感じがするんです。みんなでいいものにしようというつながり、絆があるアイスショーだと思います。

後編<宮原知子と坂本花織が『ファンタジー・オン・アイス』の見どころを語る プログラムに「性格が出る」>を読む

【プロフィール】
宮原知子 みやはら・さとこ 
1998年、京都府生まれ。4歳からフィギュアスケートを始める。2014〜2017年に全日本選手権4連覇。2015年世界選手権2位。2018年平昌五輪に出場し、日本選手大会最高位の4位に輝いた。2022年に現役引退し、プロスケーターとして活躍中。

坂本花織 さかもと・かおり 
2000年、兵庫県生まれ。中学2年の時に全日本選手権で6位入賞し注目を集める。2018年平昌五輪で6位入賞、2022年北京五輪では銅メダルを獲得。全日本選手権は2018年、2021〜2022年の通算4度優勝。世界選手権は2022年から3連覇中。