貧乏生活から「テラハ」出演のシンデレラストーリー「うわ、私って小さい!」田辺莉咲子はコンプレックスを原動力に変えた
田辺莉咲子インタビュー 前編(全2回)
スポーツタレントやフィットネストレーナーとして活動する田辺莉咲子さんにインタビュー。人気リアリティー番組『テラスハウス』(Netflix)や格闘技エンターテイメント『BreakingDown(ブレイキングダウン)』などに出演し、健康的な美しさが注目された彼女は、ポジティブな雰囲気にあふれている。だがじつは、そんな田辺さんの原動力は"コンプレックス"だという。
スポーツの楽しさを発信している田辺莉咲子さん
田辺さんがスポーツタレントとして活動し始めたのは3年ほど前。棒術やパルクール、キックボクシングなどさまざまなスポーツに挑戦し、フィットネストレーナーもこなしている。
「とくに力を入れているのは棒術とパルクールです。他にもキックボクシング、クロスフィット、アクロバット、卓球、けん玉などいろんなスポーツをやっていました。
スポーツタレントと名乗り始めた当時はコロナ禍で世の中がどんよりしていました。私自身もテレビ出演の仕事が減って落ち込みましたが、SNSでフィットネスの活動をアップし続けました。
私の活動を見たいろんな方がスポーツに興味を持ったり、身体を動かして前向きになってくれたりするような反響があったので、なにかひとつを極めるんじゃなくて、私なりに身体を活かしたパフォーマンスで人を惹きつけたい、エネルギーを届けたいと強く思うようになりました。それが私のなかでのスポーツタレントのイメージですかね」
パルクールの軽快な動きを見せてくれた
そう語る田辺さんには、憧れの存在がいるという。
「いろんなスポーツをこなせるというと武井壮さんですが、とてつもない身体能力がある方なので、目指しているというのは恐れ多いです。女性では渡辺直美さんが大好きです。昨年、ファッションブランドの『BOSS』のショーでランウェイを歩く姿は、本当に素敵でした。
20キロ減量したそうですが、やせ型になるまでは絞らず、渡辺さんの持ち味を活かした身体をつくっていました。私は150センチもないんですが、背が高いほうがいい、すらっとしているほううがいいみたいな価値観を気にせず、自分なりの鍛え方をしたいですね」
【あの子は小さいから...負けん気に火をつけた言葉】今は笑顔で話す田辺さんだが、スポーツを始めた幼少期から身長が小さい自分へのコンプレックスをずっと抱えて生きてきたという。
子どもの頃から11年間。バトントワリングに打ち込んだ 写真/本人提供
「小学2年生の頃に空手とバトントワリングを始めたんです。空手では同い年の子に軽く突かれただけで倒れてしまって。何度やってもコロンと転がってしまう。子どもながらにどうしようもない体格のハンデを感じました。
バトントワリングは金属の棒をくるくる回したり、空中に放り投げて受けとったりする競技です。上手な子は飛び級で先輩と一緒のチームに入れるんですよ。でも私は、『莉咲子ちゃんは小さいから、年上のチームに入ったら全体のバランスが崩れる』みたいなことを言われて......。
それなら、背が低くても関係ないセンターを取ってやろうと頑張りました。勉強ができないことはなんとも思わなかったけど(笑)、自分の身体を使ってできないことは心底悔しかったですね」
持ち前の負けん気でバトントワリングを11年間続け、さまざまな大会で優勝する輝かしい成績を残してきた。
バトントワリングの経験を活かし現在は棒術に取り組む
しかし、そんな競技生活も高校卒業後に一転する。
「家はうどん屋をやったりいろんなことをしていたのですが、父親が奔放すぎてお金がなくなり、バトントワリングを続けるのは難しいかなと思ったんです。食事は天かすで済ませたり、食器用の洗剤で髪や体を洗ったり......。ティッシュも干して再利用したり、私自身が節約できることをやっていました。
このままじゃ何もできない。とにかくお金を貯めて上京しようと、バイトに明け暮れていました。家に帰るためのバス代200円が惜しくて、24時間営業のジムでサウナに入り、仮眠をとってまた働くみたいな生活で、最初の3カ月で60万円くらい貯めました。同時並行でツイッターやインスタグラムも積極的に使って、フォロワーを増やしていきました」]
地元から上京したばかりの頃の田辺さん 写真/本人提供
バイト生活が半年を過ぎた頃、インスタグラムに一通のDMが届いた。
「新規オープンするフィットネスジムからでした。ボディビルやフィジークで有名な方たちが所属していて、身体について学ぶ絶好のチャンスだと思いました。それで、着の身着のまま上京。
同郷の友だちの住むワンルームマンションに転がり込んでふたり暮らしを始めました。家賃は折半。かなり手狭で2年ほど過ぎたあたりで、そろそろ住まいをなんとかしないと......とネットでシェアハウスを探していたら、見つけてしまったんです。『テラスハウス』の募集を!」
『テラスハウス』は、ひとつ屋根の下で暮らす複数の男女が繰り広げるさまざまな人間模様が見どころの人気番組だ。
「オーディションに受かれば、家だけじゃなくて、車も用意してもらえる、私の知名度も上がる。いいことづくめだなとすぐに応募しました。面接が進む間、芸能事務所に所属もして、最終的に出演が決まったのは1年後の2019年4月でした」
【この身体で自然に楽しく生きていこう】番組出演によって、これまでにない視点で自分自身を見つめることができた。
「番組を観てみると『うわ、私って小さい!』ってめちゃくちゃ客観的にわかったんです。画面のなかの私は、自分という存在を大きく見せようと必死で。甘く見られちゃいけないとかそういう意識が知らず知らずのうちに態度に表われていたんだと思います。
でも、逆にそれをきっかけに開き直れたというか。どうあがいてみても背が低いのは変わらないんだから、この身体で自然に生きていこう、そのほうがずっと楽しく生きられるんじゃないかと思えるようになりました」
現在は『ブレイキングダウン』のインタビュアーとしての仕事もこなしている。1分間で最強を決める総合格闘技大会で、"喧嘩自慢のならず者"を相手にどのような気持ちで話を聞いているのか。
「出場選手が怖いと思う時も、そりゃありますよ(笑)。でも『ブレイキングダウン』に出場する人は、まだ何者でもないけど、これをきっかけに世に出てやろうみたいな野心を持っていますよね。世界はぜんぜん違いますが、私が『テラスハウス』に出た時のような気持ちじゃないでしょうか。
チャンスをつかもうと必死に頑張る姿にリスペクトを持っています。だから、試合後のインタビューでは、ケージのなかで見せられなかった魅力を引き出すことを心がけています。私は小さな身体で、精一杯、誰かにエネルギーを与えたい。上京した頃に抱いた夢を着実に進んでいるんじゃないかと思います」
後編<棒術&パルクールにハマる元「テラハ」タレント・田辺莉咲子「誹謗中傷で落ち込んでも笑顔でいられるのはスポーツのおかげ」>を読む
撮影協力/Monkeys Parkour Park YOKOHAMA
【プロフィール】
田辺莉咲子 たなべ・りさこ
1998年1月14日、愛知県生まれ。高い運動神経と豊富なスポーツ経験を活かし、フィットネストレーナー、スポーツタレントとして活動。人気リアリティ番組『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』でブレイク。格闘技イベント『BreakingDown』のインタビュアーも務める。特技は棒術、パルクール、バトントワリング。